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第4話(2)スカウト殺到

「ああ……」

「なんでだよ⁉」

「どうして⁉」

「り、理解出来ません!」

「まあ、ちょっと落ち着け……」

 俺は三人を落ち着かせようとする。

「お、落ち着いてなどいられません!」

「そこを落ち着け」

「しかし!」

「いいから座れ……」

 俺は疾風に対し、座るように促す。

「むう……」

 疾風は席に座る。

「二人も……」

「ああ……」

「う、うん……」

 紅蓮と雷電も席に座る。

「……状況を整理させてくれ」

 俺は机に両肘をつき、顔の前で手を組む。

「はあ……」

「まずは紅蓮龍虎……お前さんは『怪獣』に変貌するんだったな……」

「ああ、そうだ」

「疾風晴嵐、お前さんは『怪異』に変化すると……」

「そうです」

「雷電金剛、お前さんは『怪人』に変身すると……」

「そうか……」

「それがどうかしたのかよ?」

「どうかしたもなにも!」

「!」

 俺は両手で机をバンと叩く。三人はわずかにビクッとする。

「そんなわけの分からない事態に直面して、まともな神経を保っていられると思うのか⁉ はっきり言って大パニックだよ!」

「あ、ああ……」

「ふむ……」

「う、う~ん……」

 三人は戸惑いながら首を縦に振る。

「い、いや、すまん、大声を上げて騒いでしまって……」

 俺は頭を下げる。

「いえ、無理もないでしょう……」

「え?」

 疾風の呟きに俺は言葉を上げる。

「生徒が怪獣、怪異、怪人だったなど到底受け止めきれるものではありません」

「それもそうだね~」

 疾風の言葉に雷電が頷く。

「しかし……」

「しかし?」

「そこはあれですね……」

「あれ?」

「慣れていただくしかありません」

「慣れ⁉」

「ええ、そうです」

 疾風が眼鏡をクイっと上げる。

「そ、そんな……」

「もちろん、だんだんとで構いません」

「そ、そうは言ってもだな……」

 俺は困惑する。

「まあまあ、気楽に行こうよ~♪」

 雷電が呑気な声を上げる。

「全然、気楽とはほど遠いんだが……」

「顧問なんだから、しょうがねえだろうが……」

 紅蓮が顎をさすりながら呟く。

「しょ、しょうがねえって……な、なんだかなし崩し的に顧問になっているが、他に適任がいるんじゃないか⁉」

「いねえよ」

「いねえって……」

「覚悟を決めろって」

 紅蓮が笑みを浮かべる。

「え、ええ……」

「いくつかシミュレーションを行った結果……他の先生方だと、混乱が拡大しそうでしたので……村松先生が最も適性ありだと判断しました」

「そ、そうなのか……」

 シミュレーションってなんだろう……。

「失礼します!」

「‼」

 部室に短髪の女子を先頭に体格の良い女子たちが入ってくる。

「紅蓮龍虎! ともに甲子園を目指そう!」

「いや、国立を目指そう!」

「いいや、東京体育館を目指そう!」

「いやいや、武道館を目指そう!」

「またかよ……」

 紅蓮が額を抑える。

「な、なんだ……?」

「スカウトだよ~♪」

「ス、スカウト?」

 雷電の言葉に俺は首を傾げる。

「……運動能力“だけは”ずば抜けていますから、各運動部にとっては喉から手が出るほど欲しい人材なのでしょう……」

「おい、だけはとか、強調すんな……」

 紅蓮が疾風を睨みつける。

「紅蓮!」

「うるせえなあ、運動部なんてオレのガラじゃねえんだよ……」

「しかし、この部室棟に来たではないか!」

「ここがたまたま空いていたからだよ」

「まさか、ここでダラダラ放課後ティータイムをする気か⁉」

「ティータイムってガラじゃないだろう!」

「そうだそうだ!」

「うるせえ! オレにはやることがあんだよ!」

「やることとはなんだ?」

「それにしても、この同好会……妙な顔合わせだな……」

 女子たちが俺と疾風、雷電を確認する。

「ああ~別になんでも良いだろうが! 出てけ、出てけ!」

「うわあ!」

 紅蓮が女子たちを軽く押し返す。

「そ、そのパワー……やはり逸材だな……」

「いいから、各々勝手に青春していやがれ!」

「むう!」

「はあ……どうやら今日の夜も出そうだぜ……」

 生徒たちを部室から追い出した後、紅蓮は振り返って俺に告げる。

お読み頂いてありがとうございます。

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