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第3話(4)怪人

「ミャアアア……」

「な、なんだ? 猫?」

「ああ、そうだ」

 紅蓮が頷く。

「い、いや、そうだって……」

 俺は戸惑う。

「他に言い表しようがねえだろうが」

「……貴女は安易なカテゴライズをしますね……」

 疾風が呆れ気味に呟く。

「ああん? ステゴザウルス?」

「カテゴライズです。テゴしか合ってないとか凄いですね……」

「う、うるせえな……何が言いてえんだよ?」

「金剛さんのあの姿を見て、『猫』はないでしょう……」

「ミャア……」

 雷電は猫の顔をこちらに向け、悲しそうな声を上げる。

「ほら、悲しそうじゃないですか」

「そんなこと言われてもな……猫としか言い様が無えと思うんだが……」

「先生はどう思われますか?」

「え?」

 そこで俺に振るのか。

「忌憚のないご意見をお聞かせください」

「そ、そう言われてもな……」

 俺は後頭部をポリポリと搔きながら、雷電を見つめる。

「ミャア?」

「ね、猫女?」

「ミャア!」

「へっ、お気に召さねえみてえだぞ?」

 紅蓮が笑みを浮かべる。

「そ、そう言われてもな……猫の頭で人の体をしている……こ、この場合はやはり『怪人』としか言い様がないんじゃないか……」

「まあ、そうですね。面倒だから『妖怪』でも良いと思いますが……」

「ミャ、ミャア!」

「おめえも安易に決めているんじゃねえかよ……怒っているぞ」

「『怪異』、『怪獣』とお揃いにするなら、『怪人』がピッタリかと……」

「ミャア~♪」

「お、喜んでいる……?」

 紅蓮が首を捻る横で疾風が呟く。

「恐らくお揃いだというのが気に入ったのでしょう……」

「……ガキかよ」

「言い過ぎですよ。単純な思考回路なのです」

「てめえの方が言い過ぎだろう……」

「ミャア?」

 雷電が首を傾げる。

「いいからいちいちこっちを見んな、金剛。目の前の相手に集中しろ」

 紅蓮が注意する。

「ミャア!」

 雷電が右手を挙げる。

「ったく……」

「あの……」

「ん?」

「相手も……怪人なのか?」

「まあ、そうだな」

 紅蓮が俺の問いに頷く。

「怪人ってあれか?」

「あれって?」

「い、いや、ほら、悪の組織に改造手術されたとかなんとか……」

「! はははっ!」

「ふふふっ……」

 俺の発言に紅蓮は高らかに、疾風は口元を抑えて笑う。

「な、なにがおかしいんだよ……」

「い、いや、だって……なあ?」

「ええ、それはあまりにもステレオタイプな怪人観かと……」

「ち、違うのか?」

「……」

「………」

「な、なんでそこで黙るんだよ」

「詳しいことですが……」

「く、詳しいことは?」

「まったくもって分かりません!」

「右に同じだ!」

「揃って分からないのかよ! よく人のことを笑えたな⁉」

 俺は大声を上げる。

「この地域で悪さを企んでいるのはどうやら間違いがないようなので……金剛さんに退治に当たってもらっています」

「そ、そうなのか……」

「まあ、後は『怪人』同士に任せようぜ……」

「そんな、『後は若い人同士で……』みたいなことを……!」

「ガオアアアッ!」

「ミャアアアッ!」

「威嚇し合っているな」

「ガオアアアアッ!」

「ミャア⁉」

 雷電が猪頭の突撃によって吹き飛ばされる。

「なかなかのタックルだな」

「まさに猪突猛進……」

「いやいやいや!」

「おっ、どうした、村松っちゃん?」

「そんな呑気に構えていて良いのか⁉ 腕なんか組んで、後方彼氏面かよ!」

「後方と言いますか……『斜め後ろ解説者面』の方が適切かと」

 疾風が眼鏡をクイっと上げる。

「解説している場合か⁉ 雷電がピンチだぞ⁉」

「やれやれ、分かってねえなあ……」

 紅蓮が両手をわざとらしく大きく広げる。

「わ、分かってないって……?」

「いいか? 怪人同士の戦いは相手の攻撃を受けるのが肝なんだよ」

「な、なんでだよ⁉」

「……そうした方がより盛り上がるからです」

「も、盛り上がりは必要なのか⁉」

「……無いよりは有った方が」

「ピンチに陥っているが⁉」

「ミャアアアッ‼」

「ガオアアアッ⁉」

 雷電が相手に接近し、両手を薙ぐ。引っ搔かれた猪頭は倒れて爆散する。

「ば、爆散した⁉ なんで⁉」

 雷電が元の人間の姿に戻り、俺たちのところに歩み寄ってくる。そして、俺に微笑む。

「……お疲れ様~。今回の活動内容はこんな感じだよ♪」

「え、ええ……」

 俺はまたも只々ひたすら困惑するしかなかった。


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