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恋と魔法はTS(トップシークレット)

作者: 花咲ひめいちご

「魔法使い」とはありとあらゆる魔法を使う者。例えば人を幸福にするもの、人を不幸にするものなどだ。

しかし、それはアニメやフィクションの世界のものであって現実には存在する事がないと世間一般では言われている。

でもそれがもし本当にあるとしたらどうだろうか。もし自分の近くに魔法使いがいるとしたら・・・。

もし近くに魔法使いがいたならそれは内緒にしてあげて欲しい。彼らはひっそりと私達の身の回りで生きているのだ。

これは魔法使いと少女の物語。


第1魔法 「はじまりの詩」


いつの頃からだろうか。魔法が忘れ去られたのは。今や魔法など二次元のものとして考えられる。

俺の名は楠木陽介。現代の魔法使いだ。

俺は小さい頃から魔法に興味があった。字の読み書きができるようになった時から勉強した。魔法を一生懸命に覚えた。魔方陣や呪文、術式、それに使い方を。密かに。

学校に行ってる間はそんな事をしていたら、からかわれたりするので帰宅してから深夜にかけて勉強HPをした。友達と呼べる者はいなかったのでその分やりたい事に集中できた。

俺が一番魔法に熱中していた小学6年生頃、家の隣に引っ越して来た人が良く来客するようになった。その理由なのだがまだ幼い女の子を俺の家に預けに来ていたのだ。その子の名は夏本愛莉ちゃん。そこの家は両親共働きでどうしても面倒が見れないという理由が大半だったらしい。

俺の母親は満更でもなかったようで「もう一人子供ができたようだ」となぜだか嬉しそうに見えた。

俺はと言うと子供は嫌いではなかったしむしろ好きだ。まるで自分も妹ができたような感覚だった。

それからは隣人関係は良好で愛莉ちゃんの母親は2年後には退職し主婦になっていた。しかし相変わらず、俺が学校から帰宅すると愛莉ちゃんが俺の家にいて駆け寄って来る。

「よーくんおかえり~あのね~あのね~」とこのように出迎えてくれる。

まったく可愛いものだ。無邪気に笑うその小さな顔、抱っこしろと要求するその小さな手が学校帰りの俺には癒しになっていた。

そのまた2年後、彼女は4歳。俺は14歳。

その年も相変わらず、彼女は俺を出迎える。一緒に遊んでやっていると彼女は急にこう言った。

「あいりね~おおきくなったらよーくんのおよめさんになる!」

これを聞いた俺の母親がからかってきた。

「あら~陽介良かったね~お嫁さん候補ができて~友達いないのにね~」

「うるさい」と俺は返した。この年の女の子は本当にませていると感じた瞬間だった。

それから2年後になると愛莉ちゃんは小学生、俺は高校生になっていた。


第2魔法 「魔法と魔術」


俺は相変わらず、友達ができないままだったがより一層魔法の勉強に打ち込んだ。愛莉ちゃんはと言うと4歳の頃に比べ少し恥ずかしがり屋になっていた。そのせいか、あまり人前に出るのは苦手になったようだ。

小学生の彼女と俺の関係はと言うとこれも変わらず良好だった。彼女からしたら近所の話易い優しいお兄さんだったと思う。

それから3年ほどはほとんど会う機会がなかった。

愛莉ちゃんは友達ができ良く友達と遊んでいたようで、俺は学校が自宅から遠かったので朝早く準備して登校しクラスに誰もいなければ魔術の本を読んでいたり実際に魔法を使ってみたりして少しずつ使えるようになった。

そんな毎日を繰り返していた。そして、俺の魔法や魔術に対する感心、好奇心はここから大きくなって行くことになった。

俺自身考える魔法や魔術の考え方はアニメやゲームの中のものとは全く違うと思考する。アニメやゲームで登場するものはその世界にあるマナと言われるものやアニマなんてものがなければ行使できるものではないと言うものだ。

だが俺が行使する魔法や魔術と言うのは精神力で使うものだ。だから非現実的なマナやアニマと言ったものを必要としないしエーテルや精霊なんてのも存在して居ない。

そう言った魔導は精神が強ければ強いほど強力なものが使える。これが俺の魔法や魔術への考え方だ。

しかし、これが本当の事ならば人間はごく当たり前のように沢山の魔法や魔術を使っているとも言える。

それがなんなのか、その回答は「言葉」だ。

「言葉」とは人間が群衆の中で生きる為に身に付けたものだ。そして、「言葉」と言う魔法は人を傷つけ最悪、死に至らしめる事も可能だ、それに繋いでおく鎖となる事もある。よって俺の回答である「言葉」もまた魔法、魔術の一部だと思う。そうな風に思考を繰り返し、精神力を高める為に瞑想などをしているうちにあっという間に時は流れた。


第3魔法 「偶然と動揺」


それから俺が社会人になった年のある日に愛莉ちゃんから直接話がしたいと連絡があり仕事が終わってからそれに応じた。

愛莉ちゃんに会ったのは約4、5年ぶりであり、愛莉ちゃんはますます成長をしていた。俺は成長した姿に微笑みを隠せなかった。しかし同士に心臓の鼓動が大きく早くなって体が沸騰したかのように熱かった。

「話って何だい?」俺から切り出した。

「そのことなんだけどね・・・」そこで愛莉ちゃんが一時的に言葉が詰まった。

「ん?どうしたの?」と詰まったところ切り返した。

「あのね。よー君にお願いがあって」愛莉ちゃんはなんだかモジモジしていた。

「お願いって?愛莉ちゃんの頼みなら聞くよ」俺は微笑みながら返した。

「そのね。私の家庭教師をして欲しいんだけど」

「なるほど。そういうことか。だから少し緊張してたのか。断れると思って」

「う、うん。でも良く緊張してるってわかったね」

「小さい時から見てるからね。そのくらいわかるさ」

「そ、そうだよね。それで家庭教師の件どう・・・かな?」

「あぁ。もちろん。いいよ。愛莉ちゃんの頼みならやるよ」また微笑んで返した。

「良かった。ありがとう」愛莉ちゃんは嬉しそうに言った。

「だけど俺の高校の成績は普通くらいだよ?それでも大丈夫かい?」

「うん。大丈夫。と言うか。よー君に教えて欲しいんだ。家近いし」

「まぁ家庭教師はお金かかるからね」

「それもあるんだけど・・・」

また愛莉ちゃんの言葉が詰まった。

俺は敢えてその後の言葉を聞かないようにした。それがきっかけで本職の警備員と家庭教師を両立する生活が始まった。

人に何かを教えることなど自分の人生で一度もなかったが、まさかそんな自分が何かを教えることになるとは思わなかった。

俺が受け持つ教科は全教科。1日2教科を1時間ほどだ。俺の本職が休みの時は1日4教科やるプランでこなした。

それにしても愛莉ちゃんの飲み込みと理解力には驚かされた。正直、家庭教師がいらないレベルだ。

愛莉ちゃん本人曰く「それでも見て欲しい」とのことでそこまで言われては辞めるに辞められないのできっちり最後までやる事にした。


第4魔法 「あの日知った魔法」


ある日のこと、いつものように勉強を見てる最中に愛莉ちゃんが口を開いた。

「あのさ。よー君ってさ」

「今は先生でしょ。何?」

「あ、ごめん。そうだったね」

「んで。何かわからないところがあったの?」

「先生に質問。そ、その好きな女の子のタイプってどんな子?」

「ブホッッッ!!?」俺は唐突な質問が出てきて驚いてつい吹いてしまった。

「いきなりの質問だね」と苦笑しながら返した。

「い、いや。なんとなく聞いてみたいなぁ~なんて思ったりしちゃって」この年頃の女の子なら気になるかっと思いつつ初めて聞かれた事に少し戸惑った。

「急に言われてもなかなか出てこないよ」照れくさかったのもあった。何しろ自分好みの女の子は俺の目の前にいるのだから。

それに俺は恋愛なんてしたこともなかったので言葉が詰まる。そんな中、彼女はモジモジしながらこちらを見ている。

「・・・・・・。」それから少し考えて口を開いた。

「そ、そうだなぁ。強いて言うなら・・・愛莉ちゃんみたいな人かな」

「ほえ!?」愛莉ちゃんは驚いた様子だ。その声は俺も聞いたことのない声だった。

あとに続けた。

「愛莉ちゃんみたいに優しくて、少しふわふわしてて、でも自分の芯がしっかりしてる人。それが俺好みの女の子かな」

俺は正直に述べたつもりだ。それに対し彼女の反応は顔が少し赤くなっていたが嬉しそうな表情を浮かべていた。

「そっか~なんだか自分の事言われたみたい」

ふふっと笑いながら返してきた。

俺は心中で(紛れもなく君の事だがね)っと言っていた。

彼女は続けて聞いてきた。

「じゃ~さ。年上と年下どっちが好き?」

これは正直なところ年上はどうも苦手だ。やかましかったり何を考えているかわからないからだ。

「俺は年下の方が好きだな。面倒見がいがあるしそれに年下の方が何かと教えやすいしっと言っても教えたこと自体ほとんどないけどね」

そう言うと彼女は笑みを浮かべながら「なるほど」っと頷いていた。

「先生はそういう子がタイプなのか~ねぇねぇ先生」

「ん?どうした?」彼女が何を言おうとしたかはわかった。何故なら俺は読心術で何を言おうとしたかを理解していたからだ。だが敢えて何を言おうとしてるかを理解してないように振る舞った。魔法使いとしてはそうしなければならなかった。読心術を使って何を思っているかを理解したとしてもわからないように振る舞らければならない。それが現代に生きる魔法使いの在り方である。そう。誰にも知られてはいけない。生きる為には仕方ない事だ。

「あのね。今度の休日ね。二人でどこか行きたいなぁって」

「なんだか急だね。俺は構わないけど」

「うーん。行くならやっぱり定番の遊園地とかかな~ほら!よー君そういう事したことないでしょう?だからね。そ、そのぉデートの練・・習とか・・・」

わかっていた。わかってが改めて言われると少し恥ずかしい気もする。

「わかった。じゃあ。そういう定で行こうか。たまには遊ぶことも大事だからね」

次の休日、彼女とのデート練習をする事になった。

「じゃあ~待ち合わせは~」

「家、隣同士だから俺が迎えに来るよ」

「それはダメ!デートでは待ち合わせの場所に集合が基本なの!」

「わ、わかった。何時にどこに集合するの?」

「じゃあ~9時に守天駅の改札前に集合!」

前者で言った方が良かったのでは?と思いつつ仕方なく彼女の提案に従うことにした。

「じゃあ、今日の家庭教師終了。また明日ね」

「うん!今日もありがとうございました!」


第5魔法 「揺れ動く魔」


デート練習の当日。現在時間は8時30分だ。

待ち合わせは9時だがあまり女の子を待たせるべきではないと思い、待ち合わせ時間より30分早く駅に着いた。待ってる時間は魔導書を読みながら待っていたので退屈はしていない。

それから30分後、愛莉ちゃんと合流した。

「ごめん!着る服迷っちゃて遅くなっちゃた。よー君大分待たせちゃったね」

「別に大丈夫だよ。それに待ち合わせの時間にはピッタリ着いてるよ。それじゃ行こか」

待ち合わせの駅から乗り換え合わせ所要時間、1時間ほどで遊園地に到着した。

「んで?デートでは基本何から遊ぶんだ?」

「ん~とね~ジェットコースター!」

俺は走っているジェットコースターと長いコースを見渡した。すると悲鳴?のような声が響き渡った。

「ねぇ。愛莉ちゃんあれに乗るのかい?」少し焦りながらそう尋ねた。

「うん!もちろん!」

「・・・・・・・・・。」

「ん?どうしたの?」

「断固却下させてもらう」

「うん!ダぁメ♪」「あ。はい・・・。」

俺は強制的にジェットコースターに乗らされるハメになった。

ジェットコースターや絶叫マシーンに乗ったことのない俺にとっては未知の物だった。だがあれから聞こえてくる絶叫は俺に恐怖感を強烈に与えた。

そんな中の俺をよそに「楽しみだね♪」と彼女は楽しげに言う。

そしてマシーンが動き出した。マシーンはレールの頂点を目指し上昇して行った。頂点から下を見下ろせば約60度ほどあるであろう斜線と下を歩く人々が小さく見えた。

「そろそろだよ。緊張してきたなぁ~」と隣に座る彼女が言う。

「あ、あぁ。うん」俺にとっては今このマシーンに乗っている事が一番の恐怖だ。これが猛スピードで動くと考えると冷や汗が止まらない。

約3秒ほど止まっていたがすぐに動き始めた。

それから5分後ようやく悪夢のような時間が終わった。

「楽しかったね♪また乗ろう♪」彼女は満足した様子だったが一方の俺は顔が青ざめていたらしく気絶寸前だった。意識こそあったがあのモンスターに乗っていた時間の事は全く覚えていない。

俺達はしばしの休憩をすることにした。

「よー君ごめんね。ジェットコースター、ダメだったなんて知らなかったから無理させちゃって」

「もう終わった事だから気にしてないよ。こっちこそ心配させちゃったね。ごめん」

「じゃあ次は絶叫系じゃないところに行こうよ!それならよー君も大丈夫でしょ?」

「あぁ。絶叫系以外なら愛莉ちゃんの好きなようにしてよ。俺はそれに付き合うからさ」

彼女はなんだか嬉しそうに笑っていた。

「どうしたの?急に笑いはじめて」

「フフフ♪意外だなぁって思ってね。よー君にも苦手な物あるんだなぁって。だってよー君いつも苦手な事なさそうな感じだもん」

「まぁ。苦手な事言った事も聞かれた事もなかったしね」

「それもそうだね~他にも苦手な物とかあるの?」

「まぁ。まだあるよ。それじゃあ休憩は終わりにして次行こうか」

「あ!話逸らしたぁ!教えてよー!」

次の場所の移動途中で苦手な物など話した。彼女の好奇心に負けた結果だ。


次に向かったのはこの遊園地の幽霊屋敷ことお化け屋敷だ。何でも今来ている区域では屈指の怖さだと言う。しかし、俺はこの程度の物では驚いたりはしない。なんたって魔法使いであるのだから。それにこの手のアトラクションの仕組みがわかっているのもある。

しかしなかなか踏み出せない彼女がそこにはいた。やはり怖いのだろうと思い声を掛けた。

「大丈夫?やっぱり怖いかい?」

「だ、大丈夫だよ!い、行こう!」

本当に大丈夫か?と思いながら俺達はお化け屋敷に入っていた。

屋敷内は不気味で冷気が包み込まれいかにも出ますと言わんばかりのクオリティだ。

彼女はやはり恐怖感を隠しきれておらず小刻みに震えていた。

そんな中、最初の刺客が現れた。それは音だ。

カランカランと缶が落ちたような音であり、それが序盤からの恐怖を掻き立てる。

「ひゃ!?」彼女はやはり音で驚いた。

「本当に大丈夫かい?」俺は心配のあまり声を掛けた。

「だ、大丈夫。心配してくれたんだね。ありがとう」

「仕方ない。一度入ってしまったからにはゴールまで出れないらしいし今は進もう。怖いなら俺の後をしっかり付いて来るんだよ」

「う、うん。わかった」

少しは安心したらしくそこからは他愛ない話をしながら進んだ。

最後に来た刺客は幽霊役の店員だ。俺達の進んだ先に立ってしばらくして移動をしていた。容姿を見る限り女性だ。

彼女はそれに気づいてから少しそわそわしていた。

そしてしばらくしてから幽霊役が俺達に襲いかかった。

幽霊役は獣の如きうめき声をあげながらこちらに歩みよって来た。こう見る限りはっきり言って幽霊と言うよりゾンビだ。

「ひゃう!?」それに驚いた彼女はすぐさま俺の右腕にしがみついた。そうすると腕にほのかにだが柔かな感触があった。俺はそれに驚いたが何事もなかったように対処した。

「落ちついて。ゆっくり進むよ」彼女をしがみつかせたまま俺達は少しづつ進んだ。

幽霊役の横を通る際は驚かせに来たがそれを無視して先に向かった。先に向かうとそれがゴールだったらしく段々と光が強くなっていった。

光の先に出ると俺達の入って行った入り口だった。出る際も彼女は俺の右腕から離れなかった。

「ようやくゴールだね、あと少しで外だよ」そう声を掛けた。

ようやくの思いで外に出ると彼女は「二度とお化け屋敷には入らない・・・」と呟いていた。

「外に出れた事だしそろそろ腕を離してもらえるかな?」

「あ。ご、ごめん!さっきまで怖くて、歩きにくかったよね」

「やっぱりね。いや。大丈夫だよ」

先ほどの出来事は俺にとって忘れられない思い出になった。それに腕にはまだあの柔かな感触が少し残っていた。

「さて。また一休みしますか」俺がそう言うと彼女は「賛成~まだ足が震えちゃってるし」と言って近くのベンチに座ることにした。


第6魔法 「暖かい風」


しばらく座って話をしていると「最後はあれに乗りたい!」と指を指した。

その指先にあったのは観覧車だった。

「あれならよー君も大丈夫だよね!急に落ちたりしないし!」

「まぁ。そうだね。ゆっくり上からの景色を見るのも悪くないな」

俺達は休憩を終わらせて観覧車へ向かった。

観覧車乗り場に行くと、何処もかしこも恋人達が多く並んでいた。何か云われでもあるのだろうか。

「あ、あのね。この観覧車に乗った恋人同士は長い間関係が上手くいくって云われがあるんだって」彼女は頬を赤らめながら言った。

「なるほど。どうりでカップルが多いと思った」俺はその理由に納得した。

しかし、俺と彼女はそういう関係ではないのでそういった云われの対象にはならんだろうと思った。

「でも俺達はそういう仲ではないし効能はないんじゃないかな?」

「いいの!細かい事は気にしないの!」

並んで20分ほど待っただろうか俺達が乗る番が来た。来た籠は赤い籠で俺達はそれに乗った。

しばらく沈黙が続いたが彼女の方から沈黙を破った。

「綺麗だね。景色」

「うん。そうだね」

「今日はなんだかとっても特別なように感じたよ。恋人同士じゃないのにね。なんだかね。今、すごくドキドキしてるんだ」

「そうかい?でも確かに特別な日になったかも今日と言う日が」

「ねぇ。よー君」

「ん?なんだい?」

「もし、もしだよ。私が恋人だったら色んな事から守ってくれる?お化け屋敷の時みたいに隣を一緒に歩いてくれる?」

「何を今更。俺は大事な可愛い妹分の事は何時だって守るさ。それにもし恋人だったとしても守るのは当たり前だよ」

この時、初めて俺は彼女の事が本当に好きだと言う事を自覚した。この前、好きな女の子のタイプを聞かれた時に彼女ようなタイプだと言った時には微かにしか自覚しなかったが今は、はっきりと理解した。

それを自覚してからか、なんだか俺の胸の鼓動が激しく早くなった。

「よー君どうしたの?」

彼女が心配して俺の顔を覗き込んで来た。俺は呼吸を整え落ちついた。

「大丈夫。何でもない」本当に?という顔で彼女が見ていた。

「愛莉ちゃん。手出してみて」

「ん?どうして?」

「ちょっとしたおまじないをしようと思ってね。何かあった時の為にね」

「うん!わかった」

俺は彼女の手におまじないと称して転移魔法のマーカーを付けた。この魔法はマーカーを付けた魔法使いがその場所に転移する。転移する時は魔方陣が展開しマーカーの先に移動する事ができる。そしてマーカー先が人物だった場合その人物の前に移動する。しかしこれには少々難点があり、マーカー先の人物が強く念じれば念じるほどマーカーの位置は正確になるが念じが弱ければ位置にズレが生じる事。それと半場強制的に転移させられるのでタイミング次第では転移のキャンセルができない事だ。キャンセルをする場合は魔方陣の展開を止めなければキャンセルされない。

「はい。これでおまじないはかかったよ。このおまじないはいざって時と、もし危険で今にでも助けが欲しい時に強く助けてと念じるんだ。そうすると助けになる事が起こるから」

「へ~ありがとう!でも危ない時とかにしか何も起こらないの?なんだか魔法みたい」

「まぁ。それに関してはなんにも言えないけどその時がくればそのおまじないが守ってくれる」

俺は敢えて「おまじない」の事は深くは話さなかった。正確には話せなかった。俺が魔法使いだと他の人間に知れてしまったら科学者達のモルモットになったり化け物として扱われ、戦争や政府の道具にされるに決まっている。

だからこそ決してバレてはいけないのだ。


観覧車が回りきるまで15分とかからなかった。

俺達は降りてお土産を買いにお土産店に立ち寄った。

そこには可愛いらしい猫のキーホルダー等があった。彼女は何を買おうが大いに悩んでいた。

「う~ん。何がいいかなぁ~これなんか可愛いと思うんだけどぉ~」

「俺は決まったよ。そっちは?」

「う~ん。まだぁ~どれも可愛いくてさ~」

俺がふと目の前にある棚に目をやるとこれまた可愛らしい猫のストラップがあった。

「これは愛莉ちゃんへのプレゼントにしよう」心で呟いた。

そっと俺はそれを手に取りレジへ向かった。

お土産を買い終わった頃、ちょうど帰宅時だった。

「頃合いだし、俺達も帰ろうか」俺がそう言うと

「ちょっと待って」と彼女が先ほど買い物をした袋をあさり始めた。

袋から取り出した物は先ほど俺が彼女へのプレゼントに買った物と同じ物だった。

「はい。これ。今日、付き合ってくれたお礼。あといつも家庭教師やってくれたりしてるから」

俺はそれを手渡された。初めてのプレゼントだった。それは照れ臭くて嬉しかった。

「じゃあ。俺もこれを。色んな初めてを体験させてくれたお礼ってことで」

俺も彼女に買った物を渡した。彼女は微笑みならが「お揃いだね。同じの買ってたんだ私達」と今日一日の中で一番の笑顔だった。

俺はその時間が永遠に絶えないで欲しい。そんなふうに思った。楽しい時間はいつも短い。だからこそ大切にしたい。この瞬間を俺は目によく焼きつけた。忘れない為に。

「よし。じゃあ行こうか」俺がそう言って駅へ向かおうとすると彼女がまた止めた。

「よー君。もう少し待って」

「どうした?忘れ物かい?」

「ううん。違うけど。ちょっとでいいの。目を閉じて」

俺は彼女の言うとおりにした。すると彼女はこう言った。

「じ、じゃあこれもお礼ってことで」

その瞬間、俺の頬に滴っていて柔かな感触が触れた。その一瞬の出来事が俺の胸の鼓動を加速させた。ほんの一瞬だけ頭の中が真っ白になった。今までの記憶の中にもこんな気持ち、こんな出来事すらなかった。俺にとって彼女は可愛い妹分で自分の教え子であったはずだった。しかしこの時を境に俺の感情が違うものに変わった。「なるほど。これが恋ってやつか。まるで魔法だな」と俺は心で呟いた。

「よー君?」彼女が心配そうに俺の名を呼ぶ。

「あぁ。ごめん。じゃあ帰ろうか」俺は声を掛けられようやく我に返った。

「うん」彼女も照れ臭さそうに返事をした。

そうして俺達は駅へと向かった。その道中、俺はまともに彼女の顔を見る事ができなかった。

彼女も同じように俺の顔をまともに見れていなかった様子だった。そうしてその長いようで短い一日が終わった。


第7魔法 「動く魔心」


しばらく座って話をしていると「最後はあれに乗りたい!」と指を指した。

その指先にあったのは観覧車だった。

「あれならよー君も大丈夫だよね!急に落ちたりしないし!」

「まぁ。そうだね。ゆっくり上からの景色を見るのも悪くないな」

俺達は休憩を終わらせて観覧車へ向かった。

観覧車乗り場に行くと、何処もかしこも恋人達が多く並んでいた。何か云われでもあるのだろうか。

「あ、あのね。この観覧車に乗った恋人同士は長い間関係が上手くいくって云われがあるんだって」彼女は頬を赤らめながら言った。

「なるほど。どうりでカップルが多いと思った」俺はその理由に納得した。

しかし、俺と彼女はそういう関係ではないのでそういった云われの対象にはならんだろうと思った。

「でも俺達はそういう仲ではないし効能はないんじゃないかな?」

「いいの!細かい事は気にしないの!」

並んで20分ほど待っただろうか俺達が乗る番が来た。来た籠は赤い籠で俺達はそれに乗った。

しばらく沈黙が続いたが彼女の方から沈黙を破った。

「綺麗だね。景色」

「うん。そうだね」

「今日はなんだかとっても特別なように感じたよ。恋人同士じゃないのにね。なんだかね。今、すごくドキドキしてるんだ」

「そうかい?でも確かに特別な日になったかも今日と言う日が」

「ねぇ。よー君」

「ん?なんだい?」

「もし、もしだよ。私が恋人だったら色んな事から守ってくれる?お化け屋敷の時みたいに隣を一緒に歩いてくれる?」

「何を今更。俺は大事な可愛い妹分の事は何時だって守るさ。それにもし恋人だったとしても守るのは当たり前だよ」

この時、初めて俺は彼女の事が本当に好きだと言う事を自覚した。この前、好きな女の子のタイプを聞かれた時に彼女ようなタイプだと言った時には微かにしか自覚しなかったが今は、はっきりと理解した。

それを自覚してからか、なんだか俺の胸の鼓動が激しく早くなった。

「よー君どうしたの?」

彼女が心配して俺の顔を覗き込んで来た。俺は呼吸を整え落ちついた。

「大丈夫。何でもない」本当に?という顔で彼女が見ていた。

「愛莉ちゃん。手出してみて」

「ん?どうして?」

「ちょっとしたおまじないをしようと思ってね。何かあった時の為にね」

「うん!わかった」

俺は彼女の手におまじないと称して転移魔法のマーカーを付けた。この魔法はマーカーを付けた魔法使いがその場所に転移する。転移する時は魔方陣が展開しマーカーの先に移動する事ができる。そしてマーカー先が人物だった場合その人物の前に移動する。しかしこれには少々難点があり、マーカー先の人物が強く念じれば念じるほどマーカーの位置は正確になるが念じが弱ければ位置にズレが生じる事。それと半場強制的に転移させられるのでタイミング次第では転移のキャンセルができない事だ。キャンセルをする場合は魔方陣の展開を止めなければキャンセルされない。

「はい。これでおまじないはかかったよ。このおまじないはいざって時と、もし危険で今にでも助けが欲しい時に強く助けてと念じるんだ。そうすると助けになる事が起こるから」

「へ~ありがとう!でも危ない時とかにしか何も起こらないの?なんだか魔法みたい」

「まぁ。それに関してはなんにも言えないけどその時がくればそのおまじないが守ってくれる」

俺は敢えて「おまじない」の事は深くは話さなかった。正確には話せなかった。俺が魔法使いだと他の人間に知れてしまったら科学者達のモルモットになったり化け物として扱われ、戦争や政府の道具にされるに決まっている。

だからこそ決してバレてはいけないのだ。


観覧車が回りきるまで15分とかからなかった。

俺達は降りてお土産を買いにお土産店に立ち寄った。

そこには可愛いらしい猫のキーホルダー等があった。彼女は何を買おうが大いに悩んでいた。

「う~ん。何がいいかなぁ~これなんか可愛いと思うんだけどぉ~」

「俺は決まったよ。そっちは?」

「う~ん。まだぁ~どれも可愛いくてさ~」

俺がふと目の前にある棚に目をやるとこれまた可愛らしい猫のストラップがあった。

「これは愛莉ちゃんへのプレゼントにしよう」心で呟いた。

そっと俺はそれを手に取りレジへ向かった。

お土産を買い終わった頃、ちょうど帰宅時だった。

「頃合いだし、俺達も帰ろうか」俺がそう言うと

「ちょっと待って」と彼女が先ほど買い物をした袋をあさり始めた。

袋から取り出した物は先ほど俺が彼女へのプレゼントに買った物と同じ物だった。

「はい。これ。今日、付き合ってくれたお礼。あといつも家庭教師やってくれたりしてるから」

俺はそれを手渡された。初めてのプレゼントだった。それは照れ臭くて嬉しかった。

「じゃあ。俺もこれを。色んな初めてを体験させてくれたお礼ってことで」

俺も彼女に買った物を渡した。彼女は微笑みならが「お揃いだね。同じの買ってたんだ私達」と今日一日の中で一番の笑顔だった。

俺はその時間が永遠に絶えないで欲しい。そんなふうに思った。楽しい時間はいつも短い。だからこそ大切にしたい。この瞬間を俺は目によく焼きつけた。忘れない為に。

「よし。じゃあ行こうか」俺がそう言って駅へ向かおうとすると彼女がまた止めた。

「よー君。もう少し待って」

「どうした?忘れ物かい?」

「ううん。違うけど。ちょっとでいいの。目を閉じて」

俺は彼女の言うとおりにした。すると彼女はこう言った。

「じ、じゃあこれもお礼ってことで」

その瞬間、俺の頬に滴っていて柔かな感触が触れた。その一瞬の出来事が俺の胸の鼓動を加速させた。ほんの一瞬だけ頭の中が真っ白になった。今までの記憶の中にもこんな気持ち、こんな出来事すらなかった。俺にとって彼女は可愛い妹分で自分の教え子であったはずだった。しかしこの時を境に俺の感情が違うものに変わった。「なるほど。これが恋ってやつか。まるで魔法だな」と俺は心で呟いた。

「よー君?」彼女が心配そうに俺の名を呼ぶ。

「あぁ。ごめん。じゃあ帰ろうか」俺は声を掛けられようやく我に返った。

「うん」彼女も照れ臭さそうに返事をした。

そうして俺達は駅へと向かった。その道中、俺はまともに彼女の顔を見る事ができなかった。

彼女も同じように俺の顔をまともに見れていなかった様子だった。そうしてその長いようで短い一日が終わった。


第8魔法 「動く者」


それから1ヵ月経った。俺はその間、家庭教師として彼女の元に行く度に毎日胸がドキドキしていた。その感覚は彼女の魔法にかかったかのような感じであった。

ある日、いつものように家庭教師の仕事をこなした後の事だ。彼女から相談があると言われたので話を聞く事になった。

「相談ってどんな内容の事?勉強の事かい?」

「ううん。違う。最近、学校にいる時と学校帰りの時の話なんだけど・・・聞いてくれる?」

「構わないよ。その様子だとかなり困っているようだからね。話してみて、俺が助力できるか分からないけどね」

そう言うと彼女は話を始めた。

「えーと。最近って言うのは3週間くらい前からで。そのね。何だか視線を感じるの。それで怖くて」

「ふむふむ。なるほど。要するにストーカーにあってるかも知れないってことかな?」

「うん。それでね。私どうすればいいかわからなくて」

「ご両親にはその話はしたかい?」

「まだしてない。両親に心配かけたくなくて・・・」

「ふむ。なら最初にやる事はご両親に話す事だね。心配かけたくないのは良くわかるよ。愛莉ちゃんは優しいからね。でも今回のような事はきちんと話すべきだと俺は思う。そのあとは警察に相談するのがいいよ」

「う、うん。わかった。お母さんとお父さんには相談してみる」

「ならこれで俺は帰るけど他に話たい事はないかい?」

「ううん。大丈夫。ありがとう」

その翌日は何事もなかったように終わらせて家に戻ろうとした時だ。彼女のお母さんがちょうどリビングにいたので少し話をした。

「陽介君いつもありがとうねぇ。愛莉はいつもこの時間を楽しみにしていてねぇ。勉強の様子はどうかしら?」

「いえ。とんでもありません。俺も愛莉ちゃんの勉強見ているのは楽しいですから。それに愛莉ちゃんの理解力にはいつも驚かされてますよ」

まずは普段の様子の事を尋ねられたのでそれに応えて昨日の話を聞いたかを聞く事にした。

「あのつかぬことをお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「ええ。いいよ」彼女のお母さんはにこやかにそう言った。

「昨日のお話なのですが愛莉ちゃんから何か話を聞いてませんか?」俺がそう言うと彼女のお母さんは不思議そうな顔をした。

「ごめんなさいね。昨日は愛莉から何も話は聞いてないわねぇ。どうかしたの?」

「あ。いえ。最近、愛莉ちゃんから俺の事を何か言っていなかったかなぁっと思いまして」

彼女が両親に話をしていないのを確認したので後の話は誤魔化した。

「そう言えばあの子ねぇ。1ヵ月前に陽介君と行った遊園地がよっぽど楽しかったみたいでその事ばっかり話てたわよ」

「そうでしたか。わかりました。ありがとうございます」

「いえいえ。こちらこそいつもお世話になってありがとうねぇ。これからも愛莉の事よろしくね」

「はい。ではまた」そうして俺は夏本家をあとにした。

帰宅した後、俺は何があってもいいように色々な準備をした。その後ある程度の情報を念入りに調べる事にした。


第9魔法 「見られた魔人」


それから3日ほど経った頃に事件が起こった。

「はぁはぁ」彼女は必死に走った。何かから逃げていた。しかし走った先は裏路地でしかも行き止まりだ。それを嘲笑うかのようにそれは迫って来ていた。

「待ってくれよ。夏本さん」それは彼女の事を呼ぶ。それから続けた。

「僕は君と話がしたいだけなんだ。何故逃げるんだい?それに何故そんなに怯えてる?あぁ。僕の持っているこれに怯えているだね」それの手に持っていた物は刃渡り5㎝ほどのナイフだ。

「あなた誰?なんで私を追いかけるの?」

「さっき校門で名乗ったじゃあないか。僕は川村大樹。君と同じクラスなのに僕の事覚えていなかったのかい。酷いなぁ」

「話がしたいって言ったけど手に持ってるそれ本当に話する気あるの?」彼女は恐怖で震えていた。「誰か助けて!」と言う言葉が出ない。それほどに切迫していた。

「あぁ。ごめん。ごめん。話をする気はもちろんあるよ」

「話って何?」彼女は怯えながらも川村と名乗る少年の話を聞く事にした。

「話ってのは他でもないんだ。僕は君が好きなんだ。それから僕は君を見続けていたのさ」

「じゃあ、あの嫌な視線の正体は貴方だったの?」

「あぁ。そうだよ。僕は君に釘ずけだったんでね」

「あの視線。すごく怖かった。それに私には好きな人がいるからごめんなさい」

「そっか。それは残念だ。じゃあもういいや。ふふふ」

「何がおかしいの?」

「いやねぇ。返事がOKなら生かしてもいいかって思ったんだけどねぇ。やっぱり予想通りの結果になって可笑しくて可笑しくて」

彼女は「殺される」と言う事を察した。だからこそ今こそ助力が必要だった。

「お願い!私を助けて!誰か!」と心で叫んだ。強く。少年が彼女に襲いかかろうとした。

その瞬間。彼女の手の甲に青白い魔方陣が展開し発光した。発光した光の中から黒いローブを身に纏った人物が現れた。

「え!?」「・・・」

その黒いローブを着た人物こそ魔法使いとしての俺だ。「こういう登場の時は何か言った方がいいのか?」と一瞬考えた。

「お前誰だよ。僕の邪魔をしないでもらおうか。いい所なんだよ」少年がそう言った。

「・・・契約に従い、この娘を・・・主を死守させてもらうぞ、この☆※#♂※○野郎」少しでも俺だとバレないようにと思い、あえて使い魔かのように言った。

「・・・」「・・・」「・・・」

彼女と少年は唖然とした。まぁ当然の反応だろうよ。すると少年が先に口を開いた。

「お前、誰なんだよ。何しに来たんだよ」

「私か?ただ私は呼ばれて来ただけだ。私の主はお前か?それともそこの彼女か?」

「私はただ誰か助けてって願っただけです。お願いします。助けてください!」

「ほほう。君が私を呼んだのか。いいだろう、ならば今から君を私の主としよう」

「だからお前は誰なんだよ!!何なんだよ!!」少年はイライラした様子で聞いてきた。

「通りすがりの主なき使い魔っとでも名乗ろうか。まぁ今、主を得たがね。」そして小さな声で魔法を唱えた。

「メモリアソート」そう言って彼女の頭に触れ、記憶を見た。どうやらこの少年がストーカーの犯人らしい。

「さてと。さっそくだが君の行いを少し見させてもらったよ。彼女の記憶を通してね。そして、わかった事もある」

「なんだよ。わかった事って」

「ふふ。知りたいかね。わかった事を」

「言え!早く!」

「少年はせっかちだな。仕方ない。教えてやろう」

川村と名乗る少年は固唾を飲んで聞いた。

「それはな。彼女が君に眼中になかったって事さ。そして君はとんでもない愚か者だと言う事さ」

「ふざけるな!!」それを聞いた川村という少年は怒りに任せこちらにナイフを向け突っ込んで来た。

「その行動を予測してないとでも思ったかい?見え見えだよ」俺はまた小さな声で「バインディチェイ」と唱え、自分の足下で魔方陣を展開し予測していた事態に対応した。俺にナイフが刺さるか刺さらないかの距離で魔法が発動した。

俺が使ったのは拘束魔法で地面から出た鎖4本が少年の手足を縛りつけた。だがこの鎖は俺にしか見えない。普通の人間には虚空で止まってるようにしか見えない。

「んだよ!!?動けねぇ!テメェなにしやがった!」少年は拘束されたと知らず俺に問いかけた。

「なら冷静になって考えてごらんよ。その動けない理由の正体を」

「はぁ!?何言ってやがる!なんかした事は間違えねぇだろうが!」

「ではここで問題です。君が私に誰だと聞いた時に私はなんと言ったでしょう?」

「はぁぁ!?ってまさかな。本当にそんなもんがいるわきゃねぇだろ!!」

「ふふ。では答え合わせといこう。正解は魔法だよ。少年」

「ありえねぇよ。この化け物がぁ!!」

「なんと言われても構わない。彼女を守れるならな。私はどんな手、どんな魔法も使うぞ」

このあり得ない事態で少年は戦意喪失したらしい。手からナイフが落ちた。

「いけないなあ。こんな玩具を持って遊んじゃあ。さて。このままの状態ならこの魔法を解かず帰ってもいいのだが。それは余りにも可哀想だ。だから交渉しようじゃあないか。少年」

「交渉?どんな事だよ」

「簡単な事だ。彼女に二度と近づかないこと、それと私の事を忘れてもらう事だ。と言っても今日の出来事全ての記憶を消して彼女の事も忘れてもらうがね」

「でも僕が夏本さんの事を忘れたとして知らずに接近する可能性もあるだろ」

「それに関しては問題ない。対策は考えてある。でこの交渉に乗るのか?乗らないのか?」

「わかった。乗る。化け物の相手なんて懲り懲りだ」

そうして俺と少年の交渉は成立された。俺は記憶を消す前にとある魔法を少年に掛けた。「ショックズラッパー」とまた小さな声で唱えた。それは彼女に接近する度に電流のような痛みが生じる呪術だ。一度掛けると二度と解けないものだ。

「痛!何したんだ」予想以上に痛かったらしく川村は声をあげた。

「これは罰だ。彼女を手に掛けようとしたのとナイフなんて玩具を持っていたな」

俺がこのくらいの罰で終わらせたのは余りにも行き過ぎるとせっかく消した記憶が戻ってしまうのを考慮したからだ。俺だって本当はもう少しきつめにしたかったが仕方ない。

「さて。記憶が消える前に言う事はあるか?まぁ記憶が消えた後は自分が何故ここにいたかはわからなくなるからな。今のうちに言いたい事言っとけ」

「無い。早くしろよ。化け物みたいな人間といるのが今一番考えたくないんだ」

「そうか。ならもう消すぞ」俺は急かす彼の記憶をすぐに消した。記憶を消すのはとても簡単だ。「ブレイクアウトメモリ」また魔法を唱えた。対象者の頭に触れ消したい記憶を結晶化して砕く。これだけだ。記憶を消してすぐに彼女の元に行った。

「大丈夫か?立てるか?我が主よ」俺は手を差しのべ立つのに手を貸す。

「うん。ありがとう。よー君」

何ぃぃぃ!?と少し動揺をした。

「何を言っているだ、我が主よ、人違いだ」

「ううん。この手はよー君のだよ、私が知ってるよー君だよ」

「いつから気づいていた?」

「出てきてから1分くらいでわかったよ。その声は間違えなく、よー君だもん。それにこの優しい手で確信したよ。」

「そうか。とにかく今は家に帰ろう。話はそれからで」

「うん。でもどうやって?私、帰り道わからないよ?」

「こうやって帰るのさ」「え!?」

「しっかり捕まっとくんだよ」「エントフライ」俺はそう言って彼女を抱えて転移魔法で家の前に飛んだ。

「着いたの?」彼女はきょとんとしながら周りを見渡した。

「さぁ。とにかく話をするからすぐに俺の部屋に行くんだ」

「えっと。よー君の部屋は2階の右側だったよね?」

「そうだよ。さぁ早く」俺は彼女を急かせて自分の部屋に入った。

「さてはて。何処から話そうか」俺が考えてる間に彼女は俺の部屋を見渡していた。

「よー君の部屋、初めて入ったけど本が多いね」

「あぁ。そこら辺にあるのは魔導書やら魔術書だよ」

「これ全部そうなんだ。いつから魔法使えるようになったの?」

「あぁ。それは小学校上がってからだよ。正確には中学生で本格的に使えるようになった」

「へぇ~じゃあ私が小さい時はどうやって魔法の勉強してたの?」

「それは愛莉ちゃん帰ったあとにガッツリとね」

「それで話って?」

「その事なんだけど、愛莉ちゃんは見ちゃっただろ?俺が魔法使ってたの」

「うん。もしかして記憶消しちゃうの?」

「いや。それは愛莉ちゃんの返答次第かな」

「そっか。それなら記憶を消す必要もなくなるかもって事だよね」

「まぁ。そうなるね。話を戻そう。まず俺は一般の人に魔法使いである事は知られてはいけないんだ。そもそも魔法使いは超人もしくはあり得ないもの、化け物、悪魔、魔人として見られる。更に言えばそんな人間がいるとなると大きな騒ぎになる。それはわかるね?」

「うん。でも、もし知られたとしてその後はどうなっちゃうの?」

「それは俺にもわからない。でも予想だけならできる。例えば科学者のモルモットにされたり政府で魔法の力、もとい俺を利用する者も出てくると思う」

「それじゃまるで実験動物とかいいように使われちゃうって事なの?」

「簡単に言えばそうなる。ただし、それを防ぐ方法はある」

「それってまさか。嘘だよね?」

「最悪の事態ならその選択をするね」

「そんなのダメ!!!」

「仕方ないんだ。利用されるくらいならね。それにまだ万が一には至ってないからその心配はしなくて大丈夫だ」

「ふぅ。良かったぁ~まだ万が一の状態じゃないんだ」

「それで今、俺の話を聞いただろ?そこで愛莉ちゃんに選択をしてもらう。1つ目はこの事を誰にも他言無用にすること。もちろんご両親にも俺の両親にもね。2つ目は今回の事含め俺の記憶を消すことだ。さぁ。どっちにする?」

「そんなの答え決まってるよ。1つ目。誰にも言わない!だからお願い!よー君との思い出を消さないで!!私、私!よー君が好き!大好き!一番大事人なの!!」

「・・・・・・・・・。」俺は言葉を失った。こんな答えがくるとは予想外だった。それに彼女の言葉は本気だ。まさかこんな事があるだろうか。彼女は可愛い妹分で生徒でそれだけでも俺にとっては大事な存在なのにこんな事。

「ハハハ。愛莉ちゃん、それはズルいよ・・・本当にズルいよ・・・」俺は嬉しさのあまり感極まって涙が頬をつたった。

「よー君?泣いてるの?」そっと彼女が俺の顔を覗く。

「ち、違う。これは・・・」俺は涙を拭き取りながら言った。そうすると彼女が俺の背中に覆いさる形で俺を抱きしめた。

「私、ずっとよー君が好きだったの。私が小さい時に言った言葉覚えてる?4歳くらいの時に言った事」

「あぁ。覚えてるよ。俺のお嫁さんになるって言ってたよね。まさか本気だったのかい?」

「ふふ。そのまさかだよ」

「ハハハ。これは参ったな。これじゃ消したい記憶を消せないじゃないか・・・くぅぅぅ」

「ねぇ。今度は私から聞いていいかな?」

「なんだい?言ってごらん」

「よー君は私の事好き?」

「あぁ・・・好きだよ・・・大好きだ。とても大事だ。でも・・・」

「でも?」彼女は首を横に傾げる。

「俺と君は年が10も離れてる。ましてや成人男性と女子高校生だ。付き合うどころか警察行きだな。ハハ」そう俺と彼女の年は10個も離れていて今、お互いに異性としてみるとなるとお互いの両親の許し等何かとややこしいと思う。だからこそ俺は胸の内にある感情を告げなかったのだ。

「年がなんなの?別にお互いが好きで良いじゃん!関係ないよ。私もよー君も何もいけない事してないもん!」

「そりゃ君の言い分もわかる。けど・・・」

「世間の目?」彼女は察したように言った。

「まぁ。そうだね。それがあるから俺は言わなかった。いや。言えなかった」

彼女はうつむいて涙を流していた。

「だから何?私達は恋仲になっちゃいけないの?おかしいよ。そんなの」

「仕方ないじゃないか。お互いに立場があるんだ。それを覆せるならどれほど良いか」

「全部・・・よー君が悪いんだもん・・・よー君が私を好きにさせたのが悪いんだよ!」彼女が涙を流しながら俺の胸を何度も叩く。

「何で俺が・・・」俺は苦笑しながら聞いた。

「よー君が優しくて真っ直ぐでちょっと抜けてるところがあるけど私の事をずっと見守ってくれて・・・よー君が私に「恋」って魔法かけたんだもん!全部よー君のせいだよ」

彼女はそう言って最後は弱々しく俺の胸を叩いた。

「そんな事言ったら・・・愛莉ちゃんも同じだ・・・」

「へ?どういうこと?」

彼女が涙で濡れた顔を上げて俺の顔を見た。

そうすると俺は胸で泣いていた彼女を抱きしめ頭を撫でながら言った。

「君も俺に魔法かけたんだ。恋って逃れられない魔法を・・・だから愛莉ちゃんだって同じだ・・・」

「えへへ。それじゃあお互い様だね。私にも魔法使えちゃったんだね」

「そう。俺専用みたいな魔法だ。本来、人はみんな使えるものだったんだけどね。もう過去のものになったから」

「なんだか悲しいね。みんな使えたのが忘れ去られるなんて」

「人は摩訶不思議な生きモノだからね。新しいモノを見たらそっちに目が行ってしまうのさ」

それから俺達はお互いに落ち着くまで一緒にいた。遅くならない内に彼女を自宅まで送った。

別れる際に彼女は微笑みながら「さっきの事、二人だけの企業秘密ってことにしよ。また明日ね」と言って家に入り、俺も「あぁ」と頷いて自宅に帰った。


第10魔法 「トップシークレット」


翌日、俺は何事もなかったように出勤しようとした時だ。愛莉ちゃんが俺の自宅の前に待ち構えていた。

「こんな朝早くからどうしたんだ?」

「あのね。これ、昨日のお礼。受け取ってくれる?」

彼女が手渡したのは弁当箱らしき物だった。

「早く起きて作ったのかい?」

「うん。でも味は大丈夫だと思うから」

俺はそれ以降は聞かず黙って受け取る事にした。

「ありがとう。残さずいただくよ」

そう言って彼女と別れて仕事現場へ向かった。

仕事現場へたどり着いてから4時間後、昼食の時間になった。俺はさっそく愛莉ちゃんのお手製の弁当をいただく事にした。俺が食事をしようとすると現場の監督や職人さんから声を掛けられた。

「ガードマンさんは弁当かい?自分で作るの?」

「いえ。自分でも作りますが今日は教え子からの差し入れです」

現場の人達は俺が家庭教師をやっている事は話していた。

「へ~いいね~ガードマンさんモテるねぇ~さぞ可愛い教え子さんなんだろうなぁ~ガードマンさんさ。思い切って結婚しちゃいなよ~」

監督や職人さん達はそう言って笑っていた。

「け、け、結婚!?とんでもない!私と10個も年が離れてるんですよ!?そんな事とてもではありませんができませんよ」

そう言うと監督が真面目な表情で俺に言った。

「ガードマンさん。年なんてのは関係ないんだよ。大事なのはどれほどその人が好きでどれほどその人を思っているかなんだ。だからね。思い切ってぶつかる事は悪い事ではないよ。それにそんなにアプローチしてくるならちゃんと応えてあげなきゃ教え子さんが可哀想だ」

「監督・・・何故そう言えるのでしょうか?よろしければお話をお聞かせ願います」

「うーむ。そうだねぇ。いつも頑張ってくれてるし、少し話すとしよう。実は私、10歳差の結婚をしていてね。奥さんが下でね。私が大学生の頃バイトで家庭教師をしていた時に出会ったんだ。もちろん。私もガードマンさんと同じように考えたがやっぱりその子のアプローチを受け入れようと思ったんだ」

「何故です?今の私ならそんな決断は出来かねます」

「それはね。私も奥さんが好きだったのさ。まぁ今も愛しているけどね。だからこそ私は自分の気持ちを正直に伝えた。そしてその結果が今って事さ。だからね。教え子さんの事を思うなら自分の気持ちを正直に伝えなきゃ後悔するよ」

その話を聞いて俺の胸でモヤモヤしていた気持ちが晴れた。それと決心がついた。

「監督・・・ありがとうございます。私、決心がつきました」

そう言うと監督は穏やかな表情で「そうか。そうか。それは良かった。頑張りなよ」と俺の肩を叩いた。

その後は彼女のお手製弁当を黙々と食べた。美味しいかった。俺の好みの味、好みの物が入っていた。彼女の気持ちにきちんと応えなくてはと改めて思った。弁当を食べ終わりさっそうと仕事に戻った。


仕事を終えていつものように夏本家へ向かおうと思いながら帰りの最寄り駅に着き改札を出たところに愛莉ちゃんらしき人物が誰かと待ち合わせしているかのように待っていた。

こちらに気づいたようで俺を見てすぐに駆け寄って来た。

「遅いよ~待ってたんだよ~」彼女は少し頬を膨らませて言った。

「待ち合わせなんてしてなかったろ?なんで?」

「ここで待ってれば来るかと思って。それにお弁当の感想聞きたかったし」

「それだけの為に待ってたのかい?そんなの俺が愛莉ちゃんの家に行った時でも良かったろ?」

「それじゃ遅いもん。それに家で聞くのも恥ずかしいし、よー君が味を覚えてる内に聞きたかったの」

まったくもって俺には乙女心はわからん。しかし、俺にとっては好都合だとも思った。そう昼間に決心した事を彼女に伝える為にも都合が良かった。

「そっか。でも俺もちょうど良かったと思っていたところだよ」

「へ?そうだったの?」

「あぁ。話がしたいと思っていたから寄り道になるけど帰り道の公園で話そう」

そう言って俺達は駅を後にした。それから7分ほど歩いた先の公園に着き、話を始めた。

「それで話ってなぁに?」

「話ってのは昨日も言ったが・・・」

「魔法の事?」彼女が俺が全て言う前に割り込み言った。

「違う。その事でなくな。その・・・俺が愛莉ちゃんの事が好きって言ったろ?」

「うん。もしかしてアレ全部、嘘って事?」

「そうじゃない。最後まで話を聞いてくれ。俺、わかった事があった。それと俺の決心を聞いてもらおうと思ってな」

「そ、そうだったんだ。ごめん。ちょっと焦っちゃった。良かった」

彼女は安心したようで肩を撫で下ろした。

「まず俺は君との関係が崩れるのを恐れていたということ、あとは世間の目を気にし過ぎたって事だ。それから・・・愛莉ちゃんの気持ちにきちんと応えてなかったから」

彼女は黙って俺の話を真剣な表情で聞いていた。

「俺、昨日が昨日だったから返事が曖昧になったから、ちゃんと改めて言わせてほしい。俺は愛莉ちゃん、君が好きだ。それから・・・俺と付き合ってくれないか?俺は君をずっと守っていたいんだ」

俺は自分でも不思議なくらい緊張した面持ちで言った。そして、彼女の返事は・・・

「そんな返事・・・もう決まってるじゃん・・・」

俺は固唾を飲み、彼女は涙ぐみながら笑みを浮かべ応えた。

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

ここで俺の初恋は実り、花を咲かせた。その後一息ついた。

「ふぅ。その返事がもらって良かった。それじゃ改めてよろしくね。あとこの事も・・・」

「他言無用でしょ?わかってるって私達だけの秘密・・・トップシークレットだね」

「あぁ。頼むよ」

俺達は二人揃ってにこやかな表情を浮かべていたがお互いの目が合う度に顔をそっぽを向け様子を伺っていた。その内に、可笑しくなって笑い始めた。

「私、とうとう付き合うんだね」

「そうだな。そろそろ帰るか」

こうして俺達のトップシークレットができ、これから先どんな事があろうと彼女を守り続ける決心をした。


第11魔法 「エンドロールの先に見る景色」


それから月日が流れ、5年の時を経た。

俺にとっても彼女にとっても特別な日を迎えた。

5年もの月日が流れてもあの時の彼女を守り続けたいという思いは今でも揺らぐ事なく貫いている。

「愛莉、行ってくるよ」

「よー君、いってらっしゃい」

俺は幸せを掴み取った。掛け替えのないものを、命、魔法に替えられないものを

そして、これからも色々な苦難に襲われ彼女と喧嘩したり、悩み、苦しさで心が折れるような事もあるだろう。俺はそれを含め、全ての事柄から彼女を守り続けるだろう。

もしあなた方の周りに魔法使いが居ても秘密にしてあげてほしい。

今を生きる人々、そして未来を生きる人々に幸の多からん事を願う。


                 ~Fin~










読者の皆様、本作品をお読み頂きましてありがとうございます。

私は本作の作者、花咲ひめいちごと申します。本作品は私のひょんな気まぐれで執筆した次第であります。

今作は魔法と恋愛を題材にしておりますが恋愛を全面に押し出し、魔法は少しだけに抑えて書かせて頂きました。

というのも魔法をメインにしてしまいますと主人公以外の魔法使いを出してバトルをさせてしまい恋愛の方が薄くなってしまうっという理由があり、それは私の書きたい作品ではないと思い魔法は控え目にしました。それと本作品は続編、外伝等は書きません。

本作品は最初の私の小説です。

またお会いする機会がありましたらよろしくお願い致します。

それではまたの機会に( ・ω・)ノシ


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