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私があなたを養うから

作者: こーきち

恋愛小説のウケがよかったので、題名だけつけてから描きました。

私の実体験に虚構を少しだけ付け足したラブストーリーです

街の駅前の繁華街。そこにはオシャレなカフェにアパレルショップ、色鮮やかなスイーツ店。

十字路を曲がればたくさんの居酒屋や、おじさん憩いのパチ屋に鉄板焼き屋が軒を連ねる。

夜になれば黒服をきた兄さんや、派手なドレスを着たお姉さん達が歩く夜の街に変わる。


そんな少し賑やかな駅近の美容理容専門学校の美容科に通う学生。それが俺だ。

名前は榎本 光 (えのもと ひかる)美容科の2年だ。

美容師を目指して奨学金を借りて通っている。毎日学校で勉強と練習を励んでいる。バイトはスーパーで働いてる。

もちろん美容院のバイトも申し込みしはしたが、時給500円なんて言われたら、美容院で働くのは就職してからだなと思った。


学校が終わって、行きつけのピアス専門店に行った。いつもは友達と一緒に行くんだが、今日は誰も捕まらなかったから1人で行った。


俺はヴィジュアル系バンドにハマってて、ヘムラインをピンクにして、それ以外を真っ赤に染めている。

耳には人差し指がズボッとはいる大きなピアスをつけて黒のジャケットを着ている。

はたから見れば近寄りたくない見た目をしているだろうな。

美容専門学校ならこんな見た目でも目立たない。むしろ、ステキな髪色ですねって先生から褒められる。


ヴィジュアル系のような派手で奇抜なヘアースタイルを作る美容師になりたくて、その夢を叶えようとしている最中だ。


行きつけのピアスショップで、新作のピアスチェックと馴染みになった店主と話をして、来たお客さんとも会話を楽しんだ。あとは行きつけのゴリゴリ系の服を扱うアパレルショップのレインボーカラーの女店員とイチャイチャ話そうと思って外に出て歩いていた。

すると後ろから


「すいません、ちょっといいですか?」


声をかけられた。また私服警官が職質しに来たのだろうと思い、ため息をついてから振り返った。

明らかに私服警官ではないタイプだ。めっちゃ普通の女。

背は150ないな、、ペッタンコの靴を履いて、大人しいファッション、見るからにバージン毛の黒髪。

今どきこんな女おるんやなと思って不思議に思った。


「えーと、あの、私最近結婚を機に山口県からこの街に引っ越してきたんです。街を散策しようと思って出てきたのですが、、、もし良ければ、お茶ご馳走しますので、この街のこと教えてください。お願いします。」


人妻にとんでもなく丁寧な逆ナンをされた。

こんな真面目そうな人妻が俺みたいな見た目のやつに声なんてかけるか?おかしい、、、でもこの人がどんな人なのかとんでもなく気になる。


「ああー、なるほどね、僕の知っていることで良ければ何でも教えますよ。僕は榎本光って言います。どうぞよろしく。」

俺はマナーや接客の講習も受けているので、スマイルで対応した。


「あ、ありがとうございます!こちらこそいきなり声をかけてしまって申し訳ございません」

人妻は深々と頭をさげた。

「私は田村 沙織(たむらさおり)と言いいます、こちらこそよろしくお願いします。」

そう言ってまた深々と頭を下げた。


「じゃあとりあえずカフェ行きましょうか。落ち着いた店近くにあるんでいきましょう」


「はい、お願いします」


俺は人妻(田村沙織)を連れてモダンな雰囲気のあるカフェに向かった。


席に案内され、向かいあって座って俺はマジマジと人妻の顔を見た。結構可愛いな。

バージン黒髪のセミロング。化粧っ気の無いため肌ツヤの良さがよく分かる白い肌。目もナチュラルな二重のようだ。鼻も毛穴が分からないほど綺麗。唇は、、口紅ではなく色つきリップとみた。

これだけ顔が整っているから薄味メイクでも可愛さを感じるんだろうな。


俺がじーっと見つめていると、顔を赤らめた人妻は

「あ、あの、光君は何飲みますか?私はカプチーノにしようと思ってて、、あ!お腹すいてたら何でも好きなの頼んでください、この時間とお礼として!、、」

緊張がよく伝わる。逆ナンするタイプに見えないもんな、、、


これで何もたべなかったら気を使わせてしまうなと思って俺は

「じゃあお言葉に甘えてチョコパフェとコーヒーいただこうかな。沙織さん、ここのパフェめっちゃ美味いから食べましょうよ!目の前で嬉しそうに食べてたら欲しくなっちゃいますよ」

コーヒー1杯の会話時間なんてたかがしれているから、できるだけ話す為パフェを進めた。美味しいのは本当。何回いろんな女の子とパフェ食いに来たことか、、、


「え?光君は甘いもの好きなんですね、私も好きだから、おすすめしてくれるなら頼もうかな」


こうして人妻と2人仲良くパフェを食べることに。


「このフルーツパフェ本当に美味しい!さっそくこの街のいい所を教えてくれましたね」

人妻は今日1番の笑顔を見せてくれた。喜んでくれて良かったと素直に思った。


「でしょ、このメニューのティラミスパフェとかナタデココパフェなんてのも美味いんですよ」


「じゃあ次来た時はティラミスパフェかな」


「ええ、じゃあ旦那さんは自動的にナタデココパフェを食べることに決定しましたね。是非今度一緒に食べに来てくださいよ。おすすめです」


「ありがとう。」

人妻は嬉しそうに微笑んだ。夫婦仲はいいんだろうと直感した。


どうしても気になったことを聞いてみた。


「あの、なんで俺に声かけたんですか?自分で言うのもなんですけど、、、道を聞きやすい人には見えないとおもうんですけど」


「私山口県の田舎の出身なんで、光君みたいな格好の人見たことなくて、、実は声をかける前に1度すれ違ったんですよ。気づいてないと思うけど。。とてもステキだって思ったからUターンして声かけたんです。。」


全然気づかなかった、、知らない街で知らない人に女性から声をかけるなんて勇気がいる事だ。

人妻と聞いたせいか、沙織さんに手を出そうとは一切思わない。よし、この街のオススメをできるだけ教えよう。

俺はそう思ってたくさん話をした。

人妻は俺のくだらないシャレにも笑ってくれた。

いつの間にか3時間程たっていた。


「あ、もうこんな時間ですね、そろそろ帰らないと食事の用意もあるでしょう。」

そろそろお開きだと思って俺はきりだした。


「あーー、本当ですね、、楽しすぎて時間忘れていました。私のほうこそ長い時間頂いてありがとうございます。」

人妻はなごりおしそうにスマホを見た。


「あの、もしご迷惑でなければ連絡先交換していただけませんか?主人がいるのでメール送ったりできる時間限られてますけど、、、どうでしょう?」

人妻から連絡先交換を提案してきた。

俺は悩んだが、メールくらいならいいか。会って話すこともたぶんないだろうと思った。


「もちろんいいですよ。是非俺からもお願いします。」


俺と人妻(沙織さん)はメル友になった。


人妻にこちらから連絡するわけにはいかない。そう思ったからメールはしなかった。

交換した日の夜12時にさしかかろうとした時に人妻からメールが届いた。

画面1面には収まりきらず、スクロールしなければ全文読めない量の文字が打ち込まれていた。


旦那が寝てからメールをうったので、遅くなってごめんなさいという言葉から始まり、今日の思い出と感謝の言葉を綴た内容だった。


俺はすぐには返事をしなかった。人妻とどっぷり関わるべきではないと思ったからだ。寧ろ沙織さんはステキで心優しい人だから尚更。


俺は次の日の晩に丁寧な返事を書いて送った。お客さんに送るDMを書く授業が役に立った。


その日も深夜12時頃にメールが届いた。人妻からだ。

とても長く丁寧なメール。

近いうちにまた会って話がしたいと。

俺は優しい言葉で断った。


次の日学校を終えて、バイクを停めている駐輪場に向かっていた。

駐輪場の前に人妻が立っていた。沙織さんだ。


「あ!光君!よかった、ここの駐輪場だったんですね、違ってたらどうしようと思ってました。」


「沙織さん、こんなところでどうしたんですか?」


「昨日のメール何度も読み返したんです。優しさで断ってるんだって分かってるんですけど、、、どうしてもお話がしたくて、、私こっちに光君いがい友達も知ってる人がいないから寂しくて、どうしようもならなくて、ごめんなさい。」


結婚して山口県から旦那さんの仕事の都合でこっちに来たのだから、それは当然なんだろう。

人妻の旦那は病院勤めの医者だ。沙織さんは元々同じ病院で働く看護師だったそうだ。

旦那さんは沙織さんには家にいて欲しいということで、専業主婦になっている。子供はいない。

子供が入ればママ友が出来るだろうが、今は難しいだろう。


「いえいえ、せっかく友達になれたのに断ったりして、、俺こそすみません。今日バイト休みなんで、お茶しに行きましょう。」


「本当ですか!?ぜ、ぜひお願いします!」

人妻は深々とお辞儀した。


「じゃあまた楽しい会話と美味しいコーヒー飲みましょう。」


2時間ほどたっぷりと会話を楽しみ、お別れした。


それからというものの、会う機会が増えてきた。

俺からは絶対に誘わない、人妻だからだ

沙織さんは俺のバイトのシフトのコピーを取らせて欲しいと頼んできたので渡した。

すると空いている日に予定をどんどん入れようとしだした。


沙織さんが夜寝る時間がどんどんおそくなった。

俺は学校があるから寝ているが、朝起きたら2通以上沙織さんからメールが来ている。

作文用紙1枚ミチミチになるほどの文字数だ。

俺は朝メシを食べながら人妻のメールに丁寧な返事をだすのが日課になっていた。


人妻と友達になって2ヶ月が経とうとした頃、会う度にプレゼントをくれるようになった。

最初にもらったのは帽子だ。

「光君に似合いそうな帽子をたまたま見つけたから思わず買っちゃいました。」

人妻ははにかみながら帽子をくれた。


ピアス、ブレスレット、シャツ、靴など、沙織さんにもらったもので全身コーディネートが完成する。

会う度にプレゼントの袋が大きくなった。

嬉しい反面罪悪感があった。人妻に貢いでもらっている。お茶代ももちろん人妻持ち。俺はヒモになった気分だった。


女性に年齢を聞くのはタブーと思ったが、、聞いてみた


「沙織さんって何歳なんですか?」


「年齢?今年26ですよ。」


「俺は今年20になります。」


俺の6歳上だった。これで独身なら、、と思ったりもしたが人妻には違いない。



次の日の朝いつものように人妻のメールに目を通した。


今年20歳になるならお祝いさせてください。シフトを見たら○日おやすみですよね?お家まで迎えに行くので、一緒に食事に行きませんか?もしご都合良ければお店に予約を入れさせてもよろしいですか?


俺は悩んだ、、でもお祝いということなら喜んでいこう!

俺は是非お願いします。楽しみですと返事を綴った。


○日の16時。家の前に1台の車が止まった。人妻の車だ。


俺は助手席に乗り込み、人妻を見た。いつもよりカナリ気合いが入っている。結婚式に参列する時のようなファッションだ。

俺も高い店の予感がしたから一応スーツを着たが正解だったようだ。


それからつかの間のドライブと会話を楽しんでいると目的地に着いたようだ。とんでとなく高級そうなホテルだ。

なんだここは、、、俺は高級な重力に負けそうになっていると、人妻は優雅に歩き、車のキーをスタッフに渡していた。

あんなの映画でしか見たことない。

俺は1万円のイ○ンスーツできたことを激しく後悔した。


ドキドキしながらエレベーターに乗る。夜景を一望できるエレベーターだ。すごい。

人妻は綺麗だねと落ち着いた様子で話しかけてくる。

そうですねとしか返せない。


目的のフロアについた。フレンチのお店だ。

ホテルの中にレストランがあること自体、無知な俺は知らなかった。

窓際のいい席に案内してもらった。こんな席チャージ料いくらかかんねんと心のなかで叫んだ。


「光君、緊張してる?」


「え、、ええ、こんな凄いところ来たことなくて。沙織さんはこういう所来たことはあるんですか?」


「ええ、両親とこういうとこには毎年行ってます」


親の話は聞いた事あったが、とんでもなく金持ちの育ちらしい。車はフィアットだったけど、お金持ちやから好きなのに乗ってるということか。俺は今まで安いカフェやダイナーを嬉しそうに案内したことが恥ずかしくなった。


運ばれてくる見たことのない料理の数々。初めて飲んだ高いワインとレアステーキ。

キャビアなんて初めて見た。


優雅な時間を過ごし、運転代行に運転させ、その日は帰路についた。


家に帰っても、あの夢心地の時間が頭から離れなかった。

俺は初めて自分からお礼のメールを人妻に送った。もちろん長文でね。


1週間後。人妻が買い物に行きたいところがあるとメールの一文に書いてあった。

どこでも一緒にいきますよ。俺はそう返した。


買い物当日家の前にきた車は前のとは違った。Jaguarだ。

高級車だ。ビビりながら助手席に乗り込み、店に向かった。

1時間半ほどドライブすると着いた。

看板にはTiffanyの文字。ブランド店だ。

店内にはパリっとしたスーツをきて手袋をした人が立っている。

人妻はスタッフと話しながら見ていた。

俺はウロウロするも値札を見て学生が買える値段では無いことを再確認した。


「光君って指のサイズ何号?」


「いや、指のサイズ測ったことないのでわからないです。」


「じゃあ、今後のために測っといた方がいいと思うよ。こういうちゃんとした店で測るのが1番だから」


「そうですか?じゃあ計るだけはかっときます。」


俺は指の採寸をしてもらって、メモをもらった。今後の参考にしよう。この店で買うことは永遠にないだろうけど。


「私お会計するから光君は外出て待っててくれる?終わったらすぐにいくから。」


「わかりました」


俺はニコッと笑って店を出た。ブランド店てのは肩が凝るなと思いながら外の空気をすって落ち着かせた。


「おまたせ、ごめんね。はい、これ。」


人妻は俺に小さな袋を渡してきた。


「持っといてってことですか?」


「違うよ、開けてみて、ほら」


「はい、、」


開けてみると指輪が入っていた。数万円するやつだ。


「今日付き合ってくれたお礼にあげる。晩御飯食べに行こう、お店予約してるの。光君の好きな味付けだと思うから。さ、早く」


人妻は上機嫌にニコニコしながらJaguarに乗り込む。

俺も状況把握できないまま乗り込んだ。


お高めの鉄板焼きの店に連れて行ってもらい、お酒は飲まずに食事と会話を楽しんだ。


それから2日後の夜人妻からメールが届いた。

長いだろうから、とりあえず読もうと思いメールを開いた。


光君、私離婚することにします。光君を養うために仕事に復帰します。

私は本当に光君の事が大事で愛してます。これから光君のためだけに頑張りたい。本心で思ってます。


目が宇宙まで飛んでいきそうなほど驚いた。

これは本気だ。人妻には手も触れていない、ボディタッチなんてするわけにいかないと気を配っていたのに、、、

心に触れすぎてしまった。


返事出来ないまま数時間立った。


電話が鳴った。

電話番号を交換したものの、1度もかけることも、かかってきたこともなかった人妻の番号からだ。

恐る恐る電話にでた。


「もしもし、光さんの携帯番号でしょうか?」


男性の声だ。


「はい、そうです」


「私は田村の夫です」


きた、旦那から電話ということは沙織さんは離婚を切り出して俺の話をしたのだ。


「この度は妻が大変ご迷惑をかけてしまい申し訳ございません。光さんはまだ学生の身だというのに、妻から声をかけたと聞いてます。

手を触れることすらなく、健全な友人関係を築こうとしているのは妻の話から察しました。本当に申し訳ございません

私どもは山口県に帰ることしました。もう光さんにご迷惑かけません。この度は誠に申し訳ございませんでした」


怒られたり、訴えられたりするどころか謝られた。

日頃の行いは大事だなと痛感した。


「いえいえ、とんでもない。僕のことはどうでもいいので、これからは2人の時間を大切にしてください」


「本当にすみません、ありがとうございます。この連絡先は消去します。実家に連れ帰るので安心してください。では、失礼します。」


そう言って静かに電話がきれた。


夢心地の非現実な時間は終わったんやなと思った。

でも、これでいい。人妻は本当にいい人だ。旦那も仏顔負けの慈悲深さだしな。


次の日の夜知らない番号から電話がかかってきた。

一応でてみた。


「もしもし、光くん?私です、田村沙織です。」


人妻からの電話だった


「え、沙織さん?!どうして、、、」


「旦那にスマホ取り上げられたけど、親のスマホで電話かけてるんです。光君の番号は暗記してるから、、」


「そうだったんですね、、電話して大丈夫なんですか?」


「いいの、私はこっちの問題片付けたら必ず光くんのもとにいくから。大丈夫、奨学金も生活費も全て私が賄う。

光君は私が養うから待っててね。必ず行きます。」


そう言って電話は切れた。


必ず行く。そうはいっても現実的ではないだろう。

俺は人妻との一時はいい思い出として心に残すことにした。


そして少し月日がたち年があけたら。

国家試験が近いため遅くまで残って自主練に励んでいた。

そろそろみんな帰りなさいという先生の言葉に従い、みんな帰り支度して帰路についた。

俺は重い足取りでバイク駐輪場の目前まで来た時、名前を呼ばれた。


「光くん、待たせてごめん。養うために迎えに来たよ。」


元人妻が帰ってきた。



ホラー、恋愛、両方書いていきたい

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