表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

西方の令嬢ルテシア・モダン

オリキャラを会話させたいために作ったようなものなのでキャラ説明はほぼ欠落していますがそれでも読んでいただけるなら幸いです。

オリキャラなりチャの延長線のようなものです。

 太陽が真上から少し傾いた時間帯にルテシアが突然、私の家に訪ねて来た。


 お家柄の相談か、何かと思って身構えたものの。彼女、曰くは遊びに来ただけらしい。




「…………」

「?どうしたんですカ?」

「いや……。何でもないわよ。それより、貴女。今日は何しに来たの?」

「あぁ!そうでシタ!!実はクロムさんと一緒にお茶会をしたいと思いまシテ!!」


「……お茶会?別に良いけど、何処でやるつもり?」

「勿論、クロムの家でやりますヨ!」

「えっ!?ちょっと待ちなさい…。私の家は無理よ。流石に散らかり過ぎてるから」


「大丈夫ですヨ!!私が全部片付けマスカラ!!」

「そういう問題じゃなくてね……」

「ワタシも手伝いマース!!」

「だから駄目だって言ってるでしょ!!!」


 私は思わず叫んでしまった。

 そのせいでルテシアの動きが完全に止まった。

 彼女は目を丸くして驚いているようだった。


「オゥ、ソーリー……」


 彼女は申し訳なさそうな表情を浮かべて謝った。

 それから、しゅんとした様子で項垂れた。

 彼女の感情に合わせてなのか、耳まで下がっている。


 その姿を見た瞬間、胸の奥がきゅっと締め付けられたような感覚に陥った。

 まるで罪悪感に押し潰されそうになるように。


「……あーもう分かったわよ。家の中なら構わないから。そんなに落ち込まないで頂戴」


「ワーォ!ありがとうございマース!」


 彼女は満面の笑みを浮かべながら抱きついてきた。

 先程までの落ち込んだ様子が嘘のように思えるほどだ。


 私は「はいはい」と言いながら彼女を引き離した。


 そして、そのまま家の中に招き入れた。

 リビングへ案内すると、早速ソファーに座って寛ぎ始めた。

 テーブルには紅茶の入ったポットとカップが置かれている。


「紅茶、飲みたい人は勝手に注いで飲んで良いわよ」

「ハーイ!それではお言葉に甘えて……」

「あっ、ちょっと待って」


 ルテシアが紅茶を入れようとした時、それを制止した。

 彼女が不思議そうに首を傾げるのを見ながら、棚の中からクッキーを取り出した。

 以前、テルルのお土産として買ったものの一つ


「これ、良かったら食べて」

「オーッ!とても美味しそうデスネ!!いただきマース!」


 彼女は嬉しそうな笑顔を見せながら受け取った。

 口に運ぶと幸せそうにもぐもぐと頬張っている。

 その様子を見てほっこりしていると、急に声をかけ


「ところでクロムさんは今、何をしていマスカー?」

「ん?ああ、特に何もしていないわ。強いて言うならダラダラしていただけかしら」


「アハハハハッ!!何ですかそれは!」

「……なによ、笑うこと無いじゃない」


「いえ、ただクロムさんらしいと思っただけですヨ!」

「……どういう意味よ」

「クロムさんはいつも自由気ままに生きているという事デス!」

「……褒めているのか貶されているのか分からないんだけど」

「勿論、褒めていますヨ!」

「本当?」


「ハイ!」

 ルテシアは自信ありげな様子で返事をした。

 それが少し面白く思えたため、クスリと笑ってしまった。


「フフッ。ありがとう、ルテシア」

「イエイエ、こちらこそ!」

「あら、貴女も何かお礼を言う事があるのね」


「そりゃあ、ありますヨ!」

「例えば?」

 私が問いかけると彼女はニッコリと微笑んだ。

 それから私の方を見てこう言った。

「ンー…クロムさんはワタシにとって憧れの存在ですカラ!」


「……えっ!?ちょっ……、いきなり何を言い出すのよ」

「アハハハハハハハハハ!!」


 彼女は笑い声を上げながら立ち上がった。

 そのまま私の元へ歩み寄ってくる。


「ねぇ、クロムさん。クロムさんの事をもっと教えてくれませんカ?ワタシはクロムさんの事が知りたいデスー」

「……そう、そういうことなら別に良いけど」

「やったぁ!!ではまずスリーサイズを教えてくだサーイ」

「はぁ!?」


「ウソウソ!冗談デース」

 ルテシアはケラケラと楽しげに笑っていた。


 私は呆れつつも彼女に尋ねた。

「じゃあ、貴女の事はどうすれば良いのよ」

「ワタシの事デスカ?ワタシはクロムさんが話したくない内容に関しては無理には聞きまセン。でも、それ以外だったら何でも聞いて欲しいデース!」


 彼女はニコニコしながら答えた。

 その様子を見ていて、思わず笑みがこぼれる。

「ふぅん……。それならさっき言っていたことについても話して貰おうかしら」


「先程のこととは、一体なんのことデスカー?」

「ルテシアが私のことを憧れの存在だって言ってくれていたことについてよ」

「あー、あれデスネー。実はデスネ……」


 ルテシアは気恥ずかしそうに視線を逸らした。

 そして、チラリと私を見てから、照れたように頭を掻いた。

 そんな彼女の様子を眺めていると、意を決したように口を開いた。


「ホントのホントに、クロムさんに憧れているのは事実なんですヨ」

「ふぅん……そうなの」

「ハイ。だから、こうしてお話をする機会ができて嬉しいと思いマシテ」

「……そう」


 私は小さく呟くようにして相槌を打った。

 それから彼女の言葉を聞いていて疑問を感じた部分について質問する。


 どうしてルテシアは私なんかに憧れを抱いているのかしら。

 少なくとも、彼女と会った時に特別気に入られるような行動をとった覚えはないのだけれど。


 もしかして、過去に何かあったとか……? 私が考え込んでいると、ルテシアが不思議そうに首を傾げた。


「どうかしたデスカー?」

「いや、別に大したことじゃないわ」

「そうデスカ。何か悩み事があったら相談に乗るデスヨー」

「ありがとう」


 ルテシアはニコッと笑って見せた。


 それから紅茶を一口飲んで一息つくと、今度は逆に彼女が私に対して質問してきた。

 私のどんなところが羨ましいと思うのか、ということらしい。……正直、あまり考えたことは無かったけど、改めて聞かれてみると困ってしまうわね。


 うーん……そうねえ……。

 私は顎に手を当てて考える。

 すると、彼女は興味津々といった様子で私を見つめてきた。


 その表情からは期待している様子が窺えた。……仕方ないわね。


 私が今思い浮かんでいる限りのことを話してあげることにしましょう。


 私はコホンと咳払いをして、ゆっくりと語り始める。

 まずは、そうね……



「…………ってところかしら」

「成程……そういうことだったんデスカ……!」

 ルテシアは感心したような面持ちを見せた。

 それからキラキラとした瞳を向けてくる。……ちょっと、なんだか気恥ずかしいわね。


 私は誤魔化すように紅茶を口に含む。

 ……うん、美味しい。

 やっぱり紅茶は最高だわ。 


 私の話を黙々と聞いていたルテシアは満足げに微笑んだ。


 それからティーカップを手に取り、優雅な仕草で口に含んでいく。

 そんな彼女を横目で見ながら、私も同じように紅茶を飲む。


 しばらくするとテルルもこちらの様子を見ていたようで目が合った。

 彼女は慌てた様子を見せると、すぐに目を逸らしてしまう。


「……ねぇ」

「…ん!」

 声を掛けると、彼女はビクッと身体を震わせてから返事をした。……そんなに驚かなくてもいいでしょうに。


「テルル、こっち来て一緒にお茶しない?」

「いいの……?」


 テルルは遠慮がちに尋ねてきた。

 そんな彼女に優しく笑いかける。

 大丈夫よ。むしろ来て欲しいくらいだから。

 そう伝えると、テルルはすぐに立ち上がって駆け寄ってきた。


 嬉しそうに顔を綻ばせる彼女を見て、思わず頬が緩む。


 私は隣に座っているルテシアに視線を向けた。

 それからテルルに向かって話しかけた。

 今日はルテシアもいるんだけど、良かったら一緒に参加していかない? テルルは私の言葉を聞くと、ちらとルテシアの方を見た。

 それから恐る恐るという感じで口を開く。

「……えっと、あの……」


 ルテシアは目を輝かせてテルルの言葉を今か今かと待ちわびる。

「その、わたし…が参加してもいぃ…?」

「もちろんデスヨ!歓迎シマスー!」

「……」


 テルルが控えめな態度をとっているのに対して、ルテシアの反応は対照的だった。

 ……まあ、彼女の性格を考えるとこれが普通よね。


 テルルは戸惑いながら

「…ありがとう」

「どういたしましてデス!」


 ルテシアはニッコリ笑ってみせた。


「ところで、クロムさんは普段何をしていマスカー?」

「そうね…。本を読んでいることがほとんどかしらね。」

「へぇ、読書が趣味なんデスカー!」

「ええ、まぁ…そうね。最近は色々なジャンルの小説を読んでいるわね」

「ワオ、それは凄いデスネー!」


「そういえば、テルルは最近どんなことをしていたのかしら?」

「えっと、お花のお世話をしたり……あとは、お菓子を作ったりしたの」


 テルルは楽しげな口調で言うと、紅茶の入ったティーカップを手に取った。

 ……ふぅん、そうなのね。


 それなら、今度は一緒にクッキーでも作ろうかしら?


 私が考えていると、ルテシアが声を上げた。

 そして、身を乗り出して興味深げにテルルの顔を見つめている。

 それに気づいたテルルは驚いたように身体を震わせた。……ルテシアったら、また悪い癖が出てるわね。

 少し呆れ気味になりながらも、私は助け船を出すことにした。


「ねぇ、ルテシア。テルルの話を聞きたい気持ちはよく分かるけど、もう少し落ち着いて話さないと駄目よ。彼女が怯えてるじゃない。」


 ルテシアはハッとすると、ごめんなさいと謝ってから椅子に座り直した。


 それからコホンと咳払いをする。

「ふーむ、なるほどデスネェ。

 クロムさんの言う通りデス」


「……」

「それで、テルルは何を作ってみたのデスカ?」

「えっと…クッキーを作ったの」

「ワォ、クッキー!美味しかったデスカ!?」


「…うん、とてもおいしくできたと思うの。だって、ジェイはおいしいおいしい…って食べてたから」

「オー、それは良かったデス!」

「……本当においしかったんだから、ね?」

「アハハ、分かっていマース!」

「……良かった」


 テルルはホッとした様子で胸を撫で下ろしていた。

 ルテシアが嬉しそうにしているところを見ると、おそらく嘘ではないでしょうね。


 私は微笑ましい気分になって二人の様子を眺めていたのだけれど、不意にテルルと目が合った。彼女は恥ずかしかったのかすぐに俯いてしまう。


 あら、もしかして照れてるのかしら? すると、ルテシアがニヤリと笑みを浮かべて言った


「クロムさん、今度、私にも作り方を教えてもらえマセンカー?」

「えぇ、いいわよ」

「やったデスー!約束デスヨー!」

「ふふっ、分かったわ」

 ……なんだか子供みたいね。


「あ、あの……」

「ん、どうかしたのテルル?」

「……えっと、わたしもその、一緒にいい?」

「もちろんよ。」

「……ありがとう。嬉しい……」


 少し嬉しそうなテルルの頭を撫でてあげると、彼女もまた私の髪を優しく触ってくれた。


「あっ、ずるいデス!私も混ぜてくださいヨ!」

 ルテシアは勢いよく立ち上がると、こちらに向かって手を差し出してくる。


「えぇ、構わないわよ」

「ワーイ!ありがとゴザイマス!」


 私たちは互いに顔を見合わせると、クスッと

「フフっ」と笑いあった。


 そんな私たちの様子を見たテルルは、どこか羨ましそうな表情をしているように見えた。

「どうしたの、テルル?」

「……ううん、なんでもないよ。

 ただ、みんな仲良しさんで良いなって……」


「……ええ、そうね。皆、素敵な人たちだものね」

「……うん」

「さて、そろそろお開きにしましょう。」


 私が声をかけると、二人はピタッと話しをやめた。

 そして、静かにこちらへ視線を向ける。

 私はテーブルの上に散らばったお菓子を片付けながら、先ほどの会話を思い出していた。



 ふふっ、まさかあんなことになるなんてね……。


 ルテシアが興味津々な様子だったから、つい調子に乗って話し過ぎてしまったかもしれないわ。でも、悪い気はしなかった。むしろ、楽しかったくらい。

 またいつか、こういう時間を過ごしたいわね。



「……ところでクロムさん。その、一つ聞いてもいいデスカ?」

 突然、ルテシアがおずおずといった感じで話しかけてきた。

「ん、何かしら?」

「クロムさんは、どうして結婚しようと思ったのデスカ? 差し支えなければ教えて欲しいデスー!」

「あぁ、そういうことね」


「ハイ! 私、前からずっと聞きたかったんデスヨ!」

「そうねぇ……」

 結婚しようと思った理由か……。

 ふむ……


 改めて考えると、私もよく分からないわね。いつの間にか結婚していたようなものだもの。それに、私は元々誰かと結婚するつもりはなかったから。

 まぁ、あえて言うなら、彼と一緒なら退屈しないかなって思っただけかしら? それでも、この気持ちはきっと愛と呼べるものだと思う。



 だって、こんなにも温かいんだもの。私にとって彼は特別であり大切な存在なのだと実感する。だからこそ、彼と一緒に過ごす時間がとても心地よかった。


 私は彼に恋をしたわけではないけれど、彼のことが大好きなのは間違いなかった。

 彼が私を選んでくれたとき、正直に言ってすごく嬉しかったわ。



 ルテシアは不思議そうにこちらの顔を覗き込み返事を待っている。

「ふぅ……

 ごめんなさい。やっぱり上手く説明できないわ」


「あららー、残念デス」

「そういえば、ルテシアは好きな人はいないの?」


「私デスカー?いますよ、それは秘密なんデス……フッフー」

 ルテシアはニヤリと笑うと、わざとらしく唇に手を当ててみせた。


 まったく、本当に可愛らしい子ね。


 彼女はまだまだ話を聞き出そうにソワソワしている。

 彼女は目を輝かせながらこちらを見る。


「もっともっと!私もクロムさんの話をもっと聞きたいデス!」

「もぅ……

 そう言われても、特に話すことはないのだけれど……」

「そんなこと言わずにお願いシマスー!」

 ルテシアは両手を合わせて懇願してくる。……参ったわね。


 気付けば外は夕焼けで赤く染まっていた。

 もうすぐ夜になるだろう。

 流石に帰らせないとまずいわよね。

 それに、そろそろ夕食の準備をしないといけないし……。


 私は小さくため息をつくと、ルテシアの方へと向き直る。

 そして、彼女の目を見て言った。

 これは断れないわね。


「仕方がないわ。少しだけ付き合ってあげましょう。」


 私は椅子に座り直すと、ゆっくりと口を開いた。

 ルテシアは私の話を食い入るように聞いていた。時折、相槌を打ちながら。


 話しながら気づいたことがある。

 意外と自分のことを他人に話す機会ってないものね。


 こうして言葉にしてみると、案外すんなり出てくるものなのかもしれない。

 そうして、しばらく話していると、あっという間に時間は過ぎていった。気がつけば空は暗くなっていた。


 ルテシアを見送るために外へ出た。


「今日は楽しかったデスヨ、ありがとうございました!」

「いえ、私こそ久しぶりに話ができて良かったわ。」


 私は笑顔で答えると、ルテシアの顔を見て言った。


「また気が向いたときにでも来て頂戴?」

「ハイ! もちろんデス!!」

 ルテシアは元気よく答えた。


 ふぅ、ようやく終わったわね。

 これでゆっくりできそうだわ。

 私は家の中に入ると、大きく伸びをする。

 今日は疲れたから早く寝ようかしら。


 そう思ってベッドに入ろうとしたとき、ふと部屋の隅にある鏡が目に映った。……そういえば、あの日以来ずっと見てないわね。

 私は部屋の入り口から体を横にずらすと、鏡の前に立った。

 目の前には薄紫色の髪と瞳を持つ美しい女性が立っている。


 私は鏡の前でくるりと一回転すると、全身がしっかりと写っていることを確認する。


 うん、大丈夫みたいね。

 そのまま机の上に置いてある櫛を手に取ると、後ろ髪をとかし始める。さらりとした長い薄紫色の髪が肩からこぼれ落ちる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ