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「初めまして、俺の名前はジン・ミエニシっていうんだ。えっと、ククゥちゃんって呼んでも大丈夫かな?」


 小さく頷いてからおずおずと俺の手を握ってくれたククゥちゃんに合わせ、俺も強く握らないように細心の注意を払いながら握手をした。


「よろしくね、ククゥちゃん」


「よ、よろしくお願いします、です。みぇんし……あぅっ」


 ものの見事に俺の名前を噛んだククゥちゃんはどうしたらいいのか分からなくなったのか、耳をしょんぼりと伏せさせて泣き出しそうな表情で黙り込んでしまった。


(そういえば俺の苗字ってこっちの人にはすごく言い辛そうだよな)


 ふとテレビで見た外国人が日本人の名前とか地名で言い難そうな感じの口調になっていたことを思い出した。俺は今まさに泣き出しそうなククゥちゃんに慌てて声をかけた。


「ジンで良いよ。俺の名前って言い難いでしょ? だから気にしないで、ね?」


「は、はい……」とか細い声で答えてくれたククゥちゃんは素早くカリスさんの後ろに隠れて腰に抱きついてしまった。


「申し訳ございません、御主人様。ククゥは昔から人見知りが激しく、他人と話すのが苦手なのでございます。何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます」


 見ている俺の方が申し訳なくなってくるほどの表情で頭を下げたカリスさんに対し、すぐに頭を上げてほしいと声をかけた。


「いえいえ、気にしないでください! 俺の名前が言い難いのが悪いだけですから!」


「お心遣いをいただきありがとうございます」


 そう言ってカリスさんは顔を上げてくれたものの、まだ暗い雰囲気を感じた俺はとりあえず話題を変えることにした。


「そうだ! カリスさんも御主人様とかって言い難くないですか? もしよければジンって呼んでください!」


 この提案にカリスさんの表情が明るくなった。


「左様でございますか。ではお言葉に甘えさせていただきまして、これより貴方様のことをジン様とお呼びいたします」


「はい、どうぞどうぞ。それじゃあ今度こそ出発しましょうか」


 カリスさんの明るい返事とククゥちゃんの控えめな返事を合図に俺たち三人は邸宅のガレージに駐車されている自動運転車へと歩き出した。


■■■


「うわ、すごい! 今日はすごく賑やかですね!」


 自動で駐車場に止まった自動運転車から下りた俺たち三人は大通りの前で足を止めていた。歩行者専用になっている通路は車道三本分ほどの広さがあるのだが、今そこは歩くのに苦労はしないものの少し気を遣う程度の混雑を見せている。


(昨日は服選び優先でほとんど見て回れなかったから実感がなかったけど、ここってすごく都会っぽいな!)


 自動運転車で街中の車道を走りながら見るのと、徒歩で街中を見るのとでは大違いだった。


 大通りの両側には様々な店舗が軒を連ね、座れそうな場所の近くでは屋台が出ていて熱心に目玉商品の紹介に声を上げている。また、通路の中央に等間隔で木が植えられていて、それを囲むように配置されたベンチには親子連れやカップル、友達のグループと思しき人たちで賑わいを見せている。


「今の時期は休暇で都市の外に出ていた方々がちょうど戻ってこられる頃ですので、いつもよりも賑わいを見せているのでございます。皆様の心情としましては休暇の最後にもう一遊び、といったところではないかと存じます」


「なるほど、そういう感じなんですね。ところで、カリスさんは何か見たいものはないんですか? 俺はあちこち見てるだけでも楽しいんですけど」


「私は帽子を見ようと思っておりました。あとククゥの服も何着か見たいと考えております」


「いいですね。じゃあそれから回りましょうか。ククゥちゃんは何か見たいものとかあるかな?」


 俺が膝に手をついてククゥちゃんに顔を近づけると、彼女は怯えたように目と耳を伏せてカリスさんの後ろに隠れてしまった。


「いけませんよククゥ、あなたもいずれメイドとなる身なのです。アークであらせられるジン様に失礼な態度をとってはいけません。そして、それ以前の問題として返事はしっかりとなさい」

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