二転三極 0001
対極に位置したもの。
それは語らない。
スポンジを押した。へこんだ。
さらに押し込んだ。へこんだ。
さらに押し込んだ。穴が開いた。
むこうがわが見える。
むこうがわ。そう、語られないむこうがわ。
「やあ、こんにちは今日も会ったね」
「やあ、こんにちは奇遇だね」
「それで今日はどんな悩みを?」
「さあ、自分でもわからないから」
「教えてごらん、きっと導けるから」
「そうだね。でも語らないよ」
「そうか。それが答えなんだね」
「ああ、その通りだよ。察しがいいな。賢いやつはわりと好きだ」
「それは光栄だ。それで、今日の要件は?」
「そうだね。じゃあ・・・始めようか」
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もう、転ばないはず。そう、誓ったのに僕の足は言うことを聞かずに僕を転ばせた。
僕は思った。
こんなの・・・僕の足じゃない。
こんなの・・僕の足じゃない。
こんなの・僕の足じゃない。
少年は一人泣いた。
孤独の中で泣いた。
少年に家族はいなかった。
だから語られることはなくなった。
誰も助けてはくれなかった。
叫んでも、誰も助けてはくれなかった。
少年は心に深い傷を負った・・・のだと思う。
でも、少年は救いを求めた。
だから、少年はもう壊れかけていた。
確かに、彼は見た目には何も問題はなかった。
礼儀正しく、謙虚で誠実だった。
友達も・・・いたはずだ。
でも・・・それは過去の話。
今は、今の話。
今は、少年に何も希望はなかった。
だって、何を信じればいい?
何を頼ればいい?
何を求めればいい?
何を?いったい何を?
そして、少年が本当に不幸だったことは。
それすらも、教えてくれる人がいなかったことだ。
語られないことは語られないままでいいのか?
人は人であるなら、人でない人はいないはずだ。
孤独の中での少年はいつも虚ろで、空ばかり眺めていた。
いつか・・・いつか・・・
少年の目に映るのは、空の色と雲。
雲のカタチは絶えず変化するのに空というキャンパスはなぜ変化しないのか?
それが専らの彼の悩みだった。
もう、幸福はわからない。
もう、感情もわからない。
世界はひどくどんよりとしていて、鉛色の塊が蠢く。
鉛色の塊は僕を見て言う。
「どうしたの?言ってごらん?」
僕はこう答えるんだ。
「僕の幸福はどこ?」
たいていの塊はこれで立ち去る。
例外はあるが。
その例外の話をしよう。
「君の幸福は私が持ってるよ」
そう答えた男がいた。
「え?返してよ!僕の幸福!!!」
「ちょっとこっちについてきなさい」
男は言って僕に背を向ける。
僕はもう限界だった。そう、限界だった。
だから。だから。
・・・男は何も言わなくなった。
そう、僕が*したから。
でもね。
でも、仕方ないんだ。
これはね。だって彼が悪いんだ。
僕の幸福を奪ったから。
そう、彼が悪いんだ。
そう、みんな彼が悪いんだ。
だから、これはきっと正義なんだ。