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グランコートの侵入者

更新がとても遅くなってしまいました。

何回も書きなおしてみたのですがなかなか思うように書けませんね。


:ジェノイド・アルメッソ


いつものことがいつもでないような感覚に思うことがあると、私は考えることが多い。

私は考えるのだ、当たり前は実は当たり前ではないのではないかと。

当たり前が当たり前であるのは当たり前を支持する法則があるからだと。

つまりその法則=ルールが改変されてしまえば、簡単に当たり前だと思っていた日常なんて崩壊してしまうのではないかと。


日々を虚ろに過ごしている私にはそれを見極めたかった。

日々が虚ろである自分に意味はなかった。

日々が虚ろである自分を認めたくなかった。

だが、この繰り返しの中で私は確実にこのまま朽ち果てていくだろう。

それは私は嫌だ。

だから、もし。

その法則を破壊できるのなら壊したい。

思えば私にとって未来など、あの日にすべてなくしてしまったようなものだ。

そんな現実はいらない。

ただ、私を苦しめるだけの法則なんていらない。

だから破壊したい。

なぜかって?それが今の私にできる唯一の抵抗だから。

それを破壊できるのかどうかって?

それを見極めるため、大いなる愚行を試みようと思い立ったのだ。

故に、私に後悔はなく。

故に、恐怖もなかった。

なぜなら私はそこまでの感情を持ち合わせていなかったからだ。



私は今グランコートに向かっている。

私が今向かっているグランコートには大憲章と呼ばれる有名なアイテムがある。

アイテムと読んでいるのは、それがどんなものか正確にはわからないからだ。

武器とも言われているし、書だと言われている、また旗であるとも言われている。

正式には大皇帝の憲章というのだが、一般的に大憲章という名で通っている代物だ。

アイテムの詳細については不明だが、巷では持つと皇帝になれるとか、皇帝のように巨大な力を得るとか、ただ皇帝が使っていただけだとか様々な憶測が飛び交っている。

そんな得体もしれないアイテムだがもちろん国宝であり、アルカディアでは厳重に保管されている。

その保管場所というのが・・・

・・・そう、グランコート。

私にとってそのアイテムが目的と言えば目的なのだが、別に盗る気はない。

ただ、その謎に包まれたアイテムを一目でいいから見てみたいと思ったのだ。

まあ、こんなことを考えるのは私くらいしかいないと思う。

たいていは盗んで売るとか、力を手に入れて世界を自分のものにとかそんなバカが挑戦するものだ。

私のように見たいだけなんて人間はそれこそ、この世界に私だけかもしれない。

つまりは私はかなりの物好きで、そしてあほだと思われることだろう。


それでもいいのだ。

否、それでいい。

人間には寿命がある。

それは確実にやってくる。

だが人間は死ぬまでに為したいことが山ほどある、そしてそれは無限につくりだせる。

それに対して時間とは?

時間は無限に近い存在だが、時間は物質に直接作用を与える。

この世界のものは、どんなに小さくても物質により構成されている。

その本質の物質に作用を与える時間というものは、つまり・・・


どんなものでも必ずいつか線を引いてむこうに連れていってしまう。

不老や不死を求めるものをも。

例外はない。

一度時間によって線引きされた物質は逃れられない運命を受ける。

それに対する抵抗が無限に対する憧れではないだろうか?

無限とは、きっとそういう時間という線によって生み出されているのだろう。

曖昧に見えて、唐突に見えて、明確で、必ずくる、その時になるまで見えない線。

それが死の本質だと、私は考えるのだ。



その日は雨だった。

いつのまにか降り出した雨。

いくつもの大粒の雨粒が私に染みをつくり落ちていく。

私の身体を伝い大地にぽたりと落ちていく雨粒は音もなく消えていく。

やがて雨粒は大地に落ちても消えることなく、水溜りを形成し始める。

そんな光景を私はずっと見ていた。


柔らかい空気の中、ずっと見ていた。

私は・・・

私は今ここにあるんだって。

私の服はびしょびしょで、ずいぶんと重くなっていた。

それでも私はそこに立ち、そこでなにかを待ち続けた。

雨の降る音だけが私の世界だった。

その雨の中でさえ、私は死について考えていた。

永遠にも近いような感覚。

まどろみの世界。

一瞬が永遠を呼ぶ感覚。

他者の声。

聖者の憤怒。

死者の言葉。

それでも私は悲しくなかったし、満足などという感覚はとうに忘れてしまっていた。

ただ惚けていた。

そう、ただ惚けていただけなのだ。




朝。

光がまぶしい。

私はグランコートの近くの宿で寝ていた。

昨日あの後・・不覚なことに体調を崩してしまったのだ。

まったく何をしに来たんだ自分は?と心の中で自分に愚痴をこぼした。

まあ、2~3日も休めばよくなるだろう。

まったく。

とんだ時間のロスだ。

まあ、いいか。

そんなに急ぐことでもないだろう。

しばしここで休もう。

そして私はまた眠りについた。



それから2日ほどして私の体調はすっかりよくなった。

寒気も熱も咳もなくなった。

この宿からグランコートまでは歩いて1時間と行ったところだろうか?

荷物をまとめて早朝、私は宿を出た。

サントローレンヌ川沿いの道をゆっくりと歩く。

川はまだ静けさにつつまれ水の流れる音がするのみだ。

私はさながら死地に向かう兵士のようなものだが、のんきに鼻歌なんかを歌っていた。

川のせせらぎと私の鼻歌が相俟って私の心はなぜか晴れ晴れとしていた。

心境だけを言うなら死地に向かう兵士というより死地を制した将軍のようだ。

まったくこんなときまでのんきだなんて本当に私はあほなのだろうか?

歩いている途中で行商の荷馬車を見かけたが特に気にはしていなかった。

ただ、その行商の中の荷馬車の一つに甘い香りのするものがあって、甘いものに目がない私はふらっとそちらへ向かってしまった。

そこでクッキーを少しばかり買い、そこからはそれを食べながらグランコートに向かっていた。

さながらピクニックだ。

幸い天気もよい。


そんなこんなでグランコートに着いた私は、とりあえずポケットからコインを出してグランコートの守護者である、アルカディア独立機動部隊所属グランコート駐屯小隊にむかって投げてみた。

十秒ほどの時間が経ってコインは地に落ちることなく姿を消した。

さすがに結界を張っているようだ。

これはめんどうなことになりそうだ、と考えているとふいに声がした。


「おい、お前。ここで何をしている?」


さっそく見つかってしまったし、さてどうしようかと考えていると・・・


「おい!そこのお前だ。聞いているのか?ここはグランコート、アルカディア審議会本部直轄領だ。なんのようがあってここにきた?今日は特に来客の知らせは受けていないぞ?」


「・・・私は少し見学させていただこうと思っただけです」


「見学?ここは一般に中を開放している施設ではない。帰りなさい」


「”命じる”」


「・・・・・・・」


「”戻りなさい”」


「はい、わかりました。ここは異常なしですね」


まったく私としたことが危なかった。

あと少しで素敵アイテムを見る前に捕まってしまうところだった。

なんとか強制と幻惑のワードもどきを使って乗り切ったが、次も上手くいくとは限らないのでなるべく見つからないように行動することにした。

なにより言葉をそれ自体に魔力と効果を付加するのは意外と集中しないといけなくて大変なのだ。


そのまま歩き続けて城門の前までくることができた。

だが、城門には見たこともない魔法がかかっていた。

だが私には特殊なスキルがある。

それが鍵破壊キーブレイカーである。

これは無条件で鍵を破壊することができる。

必要な手順も支払う対価もなく、ある意味最強なスキルだ。

これは鍵を破壊することにだけ特化しているスキルなのだ。

ただし効果は本当にそれだけ。

使えるようで実はあまり使えないようなスキルなのだ。

対価も手順もないのだが効果が本当に鍵を破壊するだけなのだ。

私はそのスキルを使いまんまとグランコートに侵入することができた。







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