第一夜
この作品は前作と違い、ファンタジー要素が強くなっています。
基本的な世界観は、これから先に徐々に書くつもりですがカオスである可能性は高いかもしれません。
よって意味のわからないものは嫌いだ、という人は見ないほうがよろしいかと思います。
それは、夢だった。
始まりはいつもあの場所から
永遠に続くと思われた物語
男は言った。「いつか、この世界にもまだ幸福というものがあることを証明したい」と。
僕は言った。「それは永遠に叶うことのない幻想だ」と。
それでも男は続けて言った。「それは、確かに不可能なのかもしれない、でもそれはそれでいいんじゃないのかい?叶わないから願わないというのなら、それは自分で自分の限界をつくっている。それに、願いというのは叶うものじゃない、叶えるものだ」と。
さらに男は言った。「叶えるためには思わないといけない、最初から思うこと自体を否定してしまったら、叶えられる願いも叶わないし、なにより不幸になるのは自分自身だ。つまり叶うか、叶わないか、が大事じゃない、思うか思わないか、が本当に重要なんだ。思った、願った、結果叶わないとしてもそこには必ずそこに到達するまでの物語があり、そこには思い出ができるはずだ。その過程こそが真に重要なことだと私は思う」と。
そして男は満足そうな表情を浮かべた。
月光が僕らを照らし、男の影がふとおぼろげに見えた。
僕には、男がそのまま闇の中に消えていってしまいそうな気がした。
男の顔はもうよく見えないが、確かにかすかに笑っているようだった。
それは、自嘲しているようにも思えた。
男はふと空を見上げた。
そして、一つの星を指差し言った。「私はね、あの星を探していたんだ。そしてあの星に行きたいとずっと思っていたんだ」と。
僕には男の言っている意味がよくわからなかった。正直、変な人だとさえ思った。
そしてしばらくして僕は言った。「どうしてあの星を探していたのか?」と。
男は空を見上げたまま言った。「あそこには私の、幸福のカタチがあるかもしれないからさ」と。
僕はますますわけがわからなくなった。僕が頭を抱えていると、男は呟いた。「きっとあるはずなんだ」と。
僕はさらに聞いてみることにした。「じゃあなんであの星に行きたいのか?」と。
男は俯きながら言った。「あそこには約束があるからさ」と。
さらに男は微かに呟いた。「ずっとずっと昔の約束が」と。
風が僕たちの間を駆け抜けた。
男は「もう時間だ」と言った。
そして辺りの月明かりが集束をはじめ次の瞬間四方に飛び散った。
風が強く吹き、全身を悪寒が襲った。
膝がガクガクと震え、声は出なかった。
う、とか、あぁ、とか、そんな呼吸がやっとできただけで嬉しかった。
頭の中をグルグルと駆けまわる痛み。
ああ、知っている。
僕は、この痛みを。
いつかもこんな鈍い痛みが僕を襲ってきたんだ。
口の中は苦くて、目はまだ眩んでいる。
カチカチと音がして。
僕は意識を失い、目が覚めた。