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彼女との高校生活

作者: あこみー

 高校2年生になった俺は、今日もいつもと変わらない生活を送っていた。

 朝6時に起きて軽くストレッチと筋トレをし、30分ほどランニングをする。帰ってきたらシャワーを浴び、汗を流す。風呂から出ても髪は乾かさない。なるべくドライヤーをする時間を少なくするためだ。


 居間に行き、なんとなくテレビをつける。家には誰もいない。母は朝早くから働いており、父は海外出張のためもう5年も会っていない。帰る目途も立っていないそうだ。パンを一枚トースターで焼き、マーガリンを塗る。朝はあまりお腹が少ないのでこんなもので済ませている。

 食べ終わったら食器を洗い、家の掃除をする。母はやらなくていいと言ってくれているが、もう毎日の習慣になっているので今さらやめるのもなーと思って続けている。モップやコロコロを使って軽くだ。


 時刻は7時過ぎ。学校までは自転車で20分ほどなので、出るにはまだ早い。髪を乾かして適当に流す。ワックスは面倒なのでつけない。というかまともにつけたことがないからわからない。

 いつもこの時間はやることが決まっていない。ぼーっと外を眺めたり、買った本を読んだりしている。そうしているうちに時間になるので家を出る。

 自転車はクロスバイクだ。一年の頃はママチャリだったが、アルバイトをして貯めたお金で買った。ちなみにメーカーはFELTだ。デザインに一目ぼれして買ってしまったが、なかなか値段はした。後悔はしてない。なぜならかっこいいから。


 自転車を漕いで10分くらい経つと、必ず信号にひっかる交差点にぶつかる。ただの交差点なのだが、通学のときにすんなり青になってくれたことはない。それも交通安全のためと思えば特にイラつくこともない。いい休憩地点だと思っている。

 そこからさらに10分ほど漕ぐと私の通っている高校に着く。県立長線高校だ。偏差値52くらいのいたって普通の高校だ。特に強い部活があるわけでもなく、イベントもド派手にやるわけでもない。でもこの普通な感じが俺は気に入っている。


 今日は進級して最初の登校日、つまり始業式だ。前年のクラスで席に着き、担任の先生から自分の名前とクラスが呼ばれるのを待つ。


「天音鈴、3組」

「はい!」

「伊崎幸助、4組」

「ハイ!」

「伊藤ノブ、4組」

「はーい」

、、、、

「大間大和、8組」

「はい。」


 呼ばれた。こう書いて、おおまやまと、と読む。俺の名前は漢字で書くと「大」が二つ付くため、小学生の頃はよく「だいだい」と呼ばれていた。まぁ結構呼びやすいあだ名だし、私は気に入っていたけど、さすがにこの年になってだいだいと呼ぶ友だちはいない。


 一年の仲間と別れを惜しんで?それぞれのクラスに散らばった。同じ8組に行くやつは俺を含めて5人いるらしい。

 一人目は「田中健斗」。明るい性格でクラスでも中心にいることが多いタイプ。

 二人目は「斎藤拓海」。特に目立たつタイプではなかったが、いつも三人組でいることが多かったから、クラスが分かれて寂しく思っているだろう。

 三人目は、「山口遥」。どちらかというと目立つほう。休み時間などは女子何人かで集まって喋っていることが多かった。

 そして四人目に、「五月風花」。四人の中では一番目立たないタイプ。誰と一緒にいたかと言われてもよく思い出せない。教室にいないことも多かったように思う。

 この5人は今年もよろしくお願いしますというわけだ。別に嫌いな奴もいないし良かった。嫌いな人なんて別にいないんだけどな。苦手な人とは関わらなければいいだけだし。


 8組に行くとすでにほかの生徒がいた。同じクラスになって喜んでいる人。友達と一緒になれなくて残念がっている人。誰も知り合いがいないみたいで隅の方で知っている人を探している人。それすらも興味なさそうにしてる人も何人かいる。

 田中はやはり顔が広いようで、早速知り合いを見つけていた。そう言えばサッカー部だった。部員も多いので誰かしらはいるだろうな。

 斎藤はおろおろ周りを見渡している。しばらくするとどうやら知り合いに巡り合えたみたいで嬉しそうだった。

 山口も何人か友だちを見つけたようで今年も楽しくやっていきそうだ。

 五月はあまり興味なさそうにしており、空いている席に座ってしまった。

 俺と言えば、体育で同じだった人が一人でいたので、そいつのところに行って話していた。


 俺はバイトがあるためあまり放課後に遊んだりはしないが、クラスで知ってる人が一人もいないとなるとそれはさすがに厳しい。ボッチになりたいわけではないからな。

 大人数でワイワイしてる人と、数人でお話ししている人、静かに座って先生が来るのを待っている人。いい感じに分けられたみたいだ。クラスというのは不思議なもんで、だいたいいい感じにばらけるようになっている。


 担任の先生が来て、各自着席する。簡単な自己紹介と、あいうえお順に名前を呼ばれ、始業式へ。

 体育館に集まって校長先生の話を聞き、教室に戻る。担任の先生から一言あって、今日は終わりだ。

 みんなが足早に帰る中(部活の生徒もいるだろうが)、俺は教科書をロッカーにしまっていた。二年生で新しく買うのもあるが、家庭科や保健体育などの教科書はそのままのため、初日に持ってきてしまったのだ。教科書って意外と重いからな。

 廊下に出て教科書をロッカーにしまい、忘れ物がないか教室に戻ると、残っている人はまばらになっていた。窓際でお喋りしている人、前日夜更かししたのか爆睡している人。本を読んでいる人。などなど。その中に五月もいた。俺はこの後バイトがあったのであまり時間がなかったのだが、一応二年連続同じクラスになったことだし、声をかけてみることにした。


「五月、何してんの?」

「ひゃっ!?」

「うおっ!どうしたんだよ」

「いや、、びっくりしただけ、、。何か用?」

「何っていうか、、今年も同じクラスになったからよろしくってだけなんだけど、、。」

「あっ、うん。よろしくね。あんまり関わることもないかもしれないけど、、。」

「おっおう、、。じゃあ俺バイトだから行くわ」

「うん、、。またね。」


 そういって五月と別れた俺は、バイト先に向かった。

 教室を出てからちらっと見たが五月はまたすぐにスマホを見てた。なんかゲームでもやってるのかな。ちなみに俺はゲームはしない。オンラインゲームのあの毎日ログインが億劫で続かないし、何よりゲームが下手だ。

 小学生の頃モンハンやイナズマイレブンなどで遊んでいたが、いつも友だちの中では下から数えた方が早いくらいの下手さだった。だから俺はもうゲームはやらないと決めているのだ。

 そんなことを考えて自転車を漕いで15分くらいしたら、バイト先に着いた。

 学校から15分ということは家からは5分だ。まぁ自転車で5分なので近くて楽だ。お店はスーパーだ。品出しやレジなどいろいろやってる。スーパーということもあっておばちゃんが多く、人間関係に困ることもなく淡々と働いている。

 スーパーは21時に閉まるのだが、残るものなんかもくれるので、結構助かってる。母日付が変わったことろに帰ってくるので、残り物で申し訳ないが冷蔵庫には何かしら入れておくことにしている。

 今日は12時からなので8時間みっちりと働く。

 

 今日も特にトラブルもなく終わり、家に帰って一息つく。

「ふぅ。二年になっちまったな、、。」

 そんなことを思いながらテレビを見て、風呂に入って一日が終わる。今日も何ともない日だ。


 翌日、いつものように学校に向かうと、例の信号で五月を見かけた。信号待ちでもスマホとにらめっこしている。よっぽど面白いゲームをしているのだろうか。


「五月、おはよ。」

「ひゃっ!?」


と、五月はこないだと同じ反応をした。


「お、おはよう、、おおまくん?」


 名前は憶えてくれてたみたいでちょっと嬉しかった。昨日は名前呼んでくれなかったからな。


「おう。おはよう。五月も自転車なんだな。」

「そ、そうなの、、。あんまり乗りたくないんだけどお母さんが自転車で行きなさいって言うから、、。」


 あまり運動しそうにないし、ほんとは自転車に乗りたくないことが言葉の端々から伝わってきた。


「そっかー。まぁでも毎日自転車乗れば多少は運動になるからな。お母さんもそれがいいと思って言ってくれてるんだろ。」

「でも体育だってあるし、私は電車が良いって言ってるんだけど、、。」

「五月はここからどれくらいかかるの?」

「私は15分くらいかな。」

「そっか。いい運動になるじゃん。せっかくだから学校まで一緒に行こうよ。」


 そういって信号が青になると、俺たちは自転車を漕ぎだした。自転車に乗ってるときは喋りづらいこともあって、ほとんど無言だった。

 五月は女の子ということもあって、ペースが遅かったからいつもよりゆっくり目に漕いで合わせた。ママチャリだし大変だろうなー、、。ついこないだまでママチャリだったくせにそんなことを思いながら自転車を漕いでいた。

 ほどなくして学校に着いて、教室に向かった。教室に着くまで気づかなかったが、五月はずいぶん早い時間に登校している。私が早めに来ていることをすっかり忘れていた。


「五月は何でこんな朝早くに来てるの?」

「大間君こそ。なんか用事でもあるの?」

「いや、別に。何となくこの時間になってるだけ。」


 早めに来たからと言って何をするわけでもないのだが、ギリギリに来るのが何となく嫌なので、こんな時間に来ているというわけだ。


「そうなんだ。私もそんな感じ。」


 五月はそういうと、最初の質問には答えず、またスマホとにらめっこしてしまった。俺もそうなると声をかけづらいので、自分の席に座ってこないだ買った小説を読んでいた。


 2日目になると、早速授業が始まった。いつまでもぬくぬくしているわけにもいかないしな。仕方ないが付き合ってやろう。そんな気持ちで私は授業を受けることにした。


 それからは朝は五月と一緒に登校し、放課後はバイトをするという、一年の時と大して変わらない生活を送っていた。五月は一緒に登校はしてくれるが、下校時間になっても向こうから声をかけてくれないため、下校はバラバラになっていた。私はバイトもあるし、そこまで気にすることもなかった。、、、いつもスマホをいじっているのは気にすることではあったが。


 その金曜日、二年初めての体育の授業があった。私は中学時代バスケをしており、それ以外のスポーツも人並み程度にはできた。体を動かすことは好きなので体育もそこそこ好きであった。

 最初の種目は55mハードルだ。

 おいおい、最初からハードルはないだろ、と思いながらあいうえお順に並んで練習をする。


「ピッ」

「ピッ」

「ピッ」


 先生の笛がひっきりなしに鳴り、それに合わせて生徒が走っていく。

 これじゃまるで軍隊みたいだな。そんなことを思いながら俺もその一員となってハードルを飛んでいく。

うちの学校の部活は大して強くないため、部費も大して出ない。そのためか陸上部に割り当てられる部費も少ないようだ。何が言いたいのかというと、ハードルの数が足らないのである。

 そのため、ハードルは例年練習も記録も男女合同で行われる。今年も例にもれず男女合同で行われた。


「ピッ」

「ピッ」

「ピッ」


 休む間もなく笛が鳴り続き、生徒が走っていく。

 その中には当然ハードルを飛べない生徒もいるわけで、ハードルをよけて走ったり、躓いたりといった姿が見受けられる。

 そんな生徒を横目に列に並んでいると、ひと際大きい音が鳴り響いた。どうやらハードルに躓いて転んでしまったらしい。

 生徒がざわつき、先生も大丈夫かと声をかけに行く。俺は助けに行く勇気もないので遠めに見ていたらその生徒がどうやら五月らしいことが分かった。

 あいつ、ほんとに運動下手だったんだな。

 一年の時も同じだったと思うが、まだ学校に着いていくのに必死であまり憶えていなかったのかもしれない。

 とにかく、五月は先生に連れていかれ、保健室に向かうようだ。

 大事にならなければいいけど、、、。


 その後もいつも通り授業があったのだが、五月は帰って来なかった。

 様子を見に行くお友だちもあまりいないようなので、保健室に行ってやろうと思ったそのとき、五月は帰ってきた。

 体育の授業からもう二時間経っていた。

 それが最後の授業だったので終わった後に声をかけてみると、どうやら大きなけがではなく、大事を取って休んでいたみたいだった。

 ひと安心した。


「それにしてもそこまで運動が苦手だと思わなかったな。」

「私もちょっと驚いちゃった。ここまでできないってことはないんだけど、久しぶりだから緊張しちゃって。」

「そうだよな。一年の時にそんな苦手だった感じしなかったもんな。」

「うん、、。心配かけてごめんね。」

「いや、大きなけがじゃなくてよかったよ」

「そうだね。また明日。」


五月はそういうと、今日は足早に帰っていった。いつもはちょっと残るのに、やっぱりケガが心配なんだろうか。そんなことを思って、私もバイト先に向かった。



 日曜日は毎週バイトを休んでいる。バイト大好き人間ってわけでもないからな。ただお金が欲しいだけなので、わざわざ忙しい日曜まで働くこともないのである。

 今日は自転車を漕いで近くのショッピングモールまで来た。地元ではなかなか大きなショッピングモールで、土日なると家族がたくさん来る。

 一人で来てる人は少ないが、別に肩身が狭くなるなんてことは思わない。みんなの施設だからな。楽しそうで何よりだ。

 いつものように服や本など、気になる店を回っていく。

 本屋に入ると、いつも読んでる作家が新作を出していた。おっ、これは買わなきゃな。そう頭の中でつぶやき、ほかの本も見て回る。


 本屋を回っていると、本を見てうなっている同年代の女の子がいた。何やら真剣な様子だ。どうやら買うかどうか悩んでいるみたいだ。

 ちらっと本の表紙を見るとゲームの攻略本みたいだった。攻略本って大したこと書いてないくせに高いからな、、。

 そう後ろから見ていると、ふっと振り向いた女の子と視線が合ってしまった。


「あっ。」

「あっ。」

「すっ、すみません。ずっと見てしまって、、。今どきますからっ。」

「あっ、いえ。俺の方こそ。ちょっと見てだけなんで大丈夫ですよ。」


そうお互い顔を合わせると、俺の方が先に気づいた。


「えっと、、。五月、だよな、、?」


私服だったためわかりづらかったが、顔を見て五月だとわかった。


「えっ、大間、くん、、?」

「うん、偶然だな。こんなところで会うなんて。」

「うっ、うん。そうだね。大間君は何しに来たの?」

「俺はちょっと本を見に来ただけだよ。五月は?」

「私もそう。でも高いから買うか悩んでて、、。」


五月はハッとして、今度は顔を赤らめていた。


「どうしたんだ。五月?」

「えっ、いやっ、何でもないの!」


何やら慌てた様子で、手に持っていた本を戻してしまった。


「それ、欲しいんじゃないのか?」

「べっべつにいいのっ!。たっ、たまたま手に取ったってだけで、欲しいなんて思ってないからっ!」


五月は急いで棚に本を戻すと、そのまま立ち去ってしまった。


「おーい!五月ー!!」


 声が届いていないのか、走って逃げていくので、追うのを諦めた。

 何で逃げたんだろう、、。ゲームの攻略本だからって、恥ずかしがることないだろうに。。明日会ったら聞いてみよう。

 手に取っていた本を買って、家に向かう。

 今日は日曜だから母と一緒に晩御飯だ。平日に会えない分、寂しいというわけではないが、やはり顔を見ると安心する。元気そうでよかった。

 ご飯を食べて、音楽を聴きながらさっき買った小説を読む。この時間は俺は好きだ。

 小説を途中で切り上げ、いつもの時間に寝る。明日五月に何で逃げたのか聞いてみよう、、。そんなことを思いながら眠りについた。



 翌朝、いつもの信号に五月はいなかった。寝坊でもしたんだろうか。

 学校に着いても姿は見当たらず、遅刻するんじゃないかと心配していたが、なんとか朝礼には間に合ったみたいだ。

 朝礼が終わった後、五月はまたスマホをいじっていたが、昨日のことを聞いてみることにした。


「五月、おはよう。」

「おっ、おはよう。」

「なんで昨日逃げたんだ?攻略本見てたのが恥ずかしかったのか?」

「そっ、そうよ、、。大間君はちゃんとした小説手に持ってたのに、私だけゲームの攻略本なんて、、。」

「別に恥ずかしがることないだろ。好きなもの買ってるんだからさ。それで、昨日見てたやつがいつもやってるゲームのなのか?」

「そっ、そうよ、、。なかなか先に進めないから買おうか悩んでたの。」


五月は顔を赤らめながらも答えてくれた。


「そっかそっか。でもいまって攻略法なんてネットでいくらでもあるだろ。買わなくても何とかなるんじゃないのか?」

「そういうわけでもないのよ。本にしか載ってない情報って意外とあって、、。ほんと商売上手よね。」

「ははっ。商売上手って。たしかにそうか。結局買ったのか?」

「うん。買ったよ。これで先に進めるといいんだけど、、。」


 












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