第三十五話 従者が出来ました。
一応これで第四章は終わりになります。
「・・・なーんて、私がそう簡単に死ぬと思ったんですか?」
「・・・チッ!」
ヤルダバオートの胸を貫こうと、繰り出した剣はヤルダバオートの尾に弾かれてしまった。
「しかし、こちらも深手を負ってしまいましたし今回は引いて差し上げます。但し、また会う時が貴女方の命日になりますがね」
ヤルダバオートはそう言って姿を消した。どうやら俺達は見逃されたらしい。
「何とかなった、か・・・」
俺は剣を鞘に収めながらそう呟いた。
「エリシア!」
「レティシア?」
俺の名前を呼びながら、レティシアが駆け寄ってきた。
「離れていくのが速すぎるよぉっ!」
「へ?・・・ってああ、戦いながら場所を移していたのか」
「無意識だったんだ・・・。で、あの悪魔は?」
俺の言葉に呆れた後、レティシアはヤルダバオートの事を聞いてきた。
「見逃された」
「見逃されたって・・・。じゃあ、暫くは大丈夫なのかな?」
レティシアは「良かった〜」と胸を撫で下ろしていた。が、俺はその考えが間違いである事を伝えた。
「いや、別の悪魔が来るかもしれないし」
「ああ、そうだった・・・」
レティシアはその喜びがぬか喜びだった事に気付き、溜息を吐いた。
「それよりも、レティシアは今後どうしるの?」
俺がそう尋ねると、レティシアは動きを止めて呟いた。
「・・・考えてなかった」
「あ、そう・・・」
呆然となっているレティシアに俺は何も言えなかった。
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その後、屋敷に戻って父に無事済んだ事を伝えると、レティシアは数日間屋敷で保護してくれることになった。
その保護してくれてる間に、レティシアには、今後、何をしたいのかを考えて貰うことにして、俺は森の異変調査についての報告を冒険者ギルドに行い、軽めな依頼をこなしたりして過ごしていた。
そして・・・。
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「それで、レティシアは何をしたいか決めたの?」
俺はティーカップを傾け、注がれていた紅茶を飲みながら対面に座るレティシアに尋ねた。
「うん、決めたよ。私は・・・」
レティシアはそう言うと、椅子から立ち上がり、俺の前に跪いた。
「アルゲート伯爵家ご息女、エリシア・フォン・アルゲート様にお仕えさせて欲しいのです」
「・・・え?」
俺は予想外の事に思わず固まった。
「え、えっと・・・。お、私に仕えたいって本当に?」
「はい、私にはもう帰る場所もありませんし、エリシア様は私の命の恩人ですから」
「・・・本当にいいんだね?」
「はい」
俺はレティシアの真剣な表情を見た。とても強い意志を瞳に込めているのがよく分かった。
「・・・うん、私は良いよ。けど、父様の許可が必要に・・・」
「あ、伯爵様からは既に「エリシアが受け入れるならそれで良い」って許可を貰ってます」
「・・・仕事が早いな」
俺はレティシアの仕事の早さに少し戦慄してしまったのだった。
レティシアがメイドになりました。




