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第二十八話 レティシアの事情

漸くレティシアの硬直が解け始めてきたので、俺はレティシアに改めて質問をした。


「それで、レティシアに何があったの?」

「・・・そうね、貴女なら自分を守れそうだし。・・・なら話すね」


レティシアはそう前置きをして、話し始めた。彼女の身に何があったのかを。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


もともと私はハルムラク獣王国にある常夜の森に点在する吸血鬼の隠れ里の一つの出身だよ。里では両親や兄弟、近所の人達と仲良く暮らしてたんだ。

だけど数日前、突如として『ヴァンパイアハンター』を名乗る男達が里を襲ってきた。父や兄は里の男衆と共に迎え撃ちに、私や母、そしてまだ幼かった弟は家の奥に隠れたの。

けれど、その男の一人が家の扉を蹴破り、侵入してきた。

母は私を連れて慌てて裏口から逃げ出したけど、その途中で別の男達の襲撃にあって母と弟の二人と私は逸れた。

逸れた私はそれでも我武者羅に逃げ続けた。一応、私の持つ『憤怒』のスキルの効果で近づいてくる魔獣は少なかったから、警戒するのは男達だけでよかった。

そして逃げ回っている時、男達の会話を盗み聞きした。


「おい、別にここまで追わなくて良くねぇか?」

「馬鹿野郎、俺達に依頼されたのは『魔王の資格を得た吸血鬼が産まれたから処分しろ』って内容だろ?もし逃した吸血鬼がその魔王だったらヤベェだろ?」

「けど、もし魔王となって暴れても異界から勇者様って奴を召喚すればいいだろ?」

「まぁ、そうだな」

「「ギャハハハハッ!」


男達の汚い笑い声が遠ざかっていくのを聞きながら、私は男達の会話の内容にうちのめされていた。


私が次期魔王の資格を得たから、憤怒のスキルを手に入れてしまったから。


私は呆然としながらそこから逃げたの。そして気付いたらこの森にいて、ハンター達も追いかけてきたからこの森から出るに出られなくなって、更に奥へと追い詰められながら逃げていた時に貴女に・・・エリシアに会った。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「其処からはエリシアも知っての通りだよ」


そう言ってレティシアは弱々しい笑みを浮かべた。

俺はその姿を見ながら必死になって考えた。「どうすれば彼女を救えるか」と。


(・・・よし、こうすれば)


そして大体の作戦を立てると、俺はレティシアに声をかけた。


「レティシア、私に着いてきて」

「・・・え?」


この時のレティシアはポカンとした顔で目をパチパチと瞬きしていて、少し間抜けに見えたのだった。

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