第二十六話 レティシア・アルフィータ
「あ?何俺に剣向けてんだよ、ガキが。舐めてんのかぁ?」
「舐めませんよ。貴方みたいな気色の悪い中年男性は」
「んだとぉ!?・・・余程痛い目に会いたいようだなぁっ!」
「そんなわけないでしょう。貴方みたいな変態じゃあるまいし」
「・・・テメェッ!!」
俺の挑発にブチ切れた男はそう叫びながらクロスボウの引き金を引いた。
「ふっ!」
キンキンッ!
俺は剣を振り、クロスボウから放たれた矢を全て払い落とした。
「何っ!?」
男が驚きで固まった瞬間に俺は『加速』スキルで一瞬で男の背後に回り、剣の柄で男を殴った。
「グハッ!?」
男は殴られた衝撃で気絶した。俺は気絶したのを確認すると、『無限収納』から取り出した縄で縛った。
「・・・よし、これでこいつは無力化出来た。君は怪我はない?」
俺は振り向いてレティシアにそう尋ねた。
「・・・何で?」
「え?」
「何で私を助けたの!?」
俺は何を言っているのかが分からず、首を傾げた。が、レティシアは興奮しているようで、叫んだままだった。
「なんで、なんで私を助けたの?どうして・・・」
「私が助けたかったから、だよ」
「・・・えっ?」
「私が助けたかったんだよ。貴女を」
俺はそう言って、レティシアと視線を合わせる為に蹲み込んだ。
「だって貴女を見捨てるなんて出来なかったし。それに・・・」
俺はそこで言葉を区切ると、視線を少し逸らした。
「私が原因で貴女は逃げられなかったんだし」
「・・・そう」
レティシアはクスクスと小さく笑いだした。クロは気を利かせてくれたようで、レティシアを捕まえていた影魔法を解除していた。
「ところで君の名前は?」
「私?私はエリシアだよ」
レティシアに名前を聞かれたので俺は素直に名乗った。するとレティシアは姿勢を正して口を開いた。
「レティシア、私の名前はレティシア・アルフィータよ。助けてくれてありがとう。エリシア」
そう言って笑ったレティシアはとても綺麗だった。




