第十九話 冒険者ギルド
「そうだ、冒険者登録をしよう」
屋敷に用意されていた俺の部屋の中で、俺は思い付いて、そう言った。
《・・・いきなり如何したんっスか?》
突然言い出した俺にクロは呆れたような声を出した。
「いや、前に悪魔を倒した時に『憤怒の魔王の配下』って名乗ってただろ?少し気になってな・・・。だから情報を入手したり、能力を鍛えたりするには冒険者の立場もあった方がいいと思ってな」
《なるほどっス》
俺の説明に納得して、クロはコクコクと頷いた。
「よし!思い立ったが何とやらだ!早速行くぞ!」
俺は部屋を出て、『隠遁』スキルと『隠蔽』スキルを使って隠密行動をして屋敷を抜け出したのだった。
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「ここか・・・」
俺は腰に手を当てて目の前に聳える大きな建物を見据えた。この建物が冒険者ギルドだ。
俺の今の格好は旅の時も着ていた丈夫な服にリアーノで買った革製の軽鎧と鋼製の片手剣を身に付けて、長い髪をポニーテールに纏めていた。そして、クロは俺の影に控えてもらっている。
(よし・・・。エリシア、行きまーす!)
そう心中で呟いて気合いを入れると、俺は冒険者ギルドの大きな扉を押し開けて中に入るのだった。
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ガヤガヤ・・・
冒険者ギルドに入ると、そこはとても賑やかだった。酒場もあるからだろうか?
しかし、俺がギルド内に入ると少しずつ静かになっていき、最終的には静まって俺に注目を向けていた。
(一体何だよ・・・)
俺は少し居心地が悪くなりながらも、カウンターへと向かった。
「えっと・・・少しいいですか?」
「は・・・はい!どのような御用でしょうか!」
受付に座っていた女性は少し緊張した様子でそう言った。彼女は一体何故緊張しているのだろうか?
「えっと、冒険者登録をしたいのですが・・・」
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私の名前はハーマイン。冒険者ギルドセルムレイト支部で受付嬢をしています。
今日もいつも通り酒場で馬鹿騒ぎしている冒険者達の声に眉を顰めながらも依頼達成を確認したりと職務を行なっていると、ギルドの扉が開いた。
また冒険者が帰って来たのかとボンヤリと思いながらもそちらの方を向くと、そこには銀色に輝く髪を持つ天使が居た。思わず見とれてしまっていると、他の受付嬢や冒険者達も見入ってしまっていた。
「えっと・・・。少しいいですか?」
ヤバッ!つい見惚れててボーッとしていた!
「は・・・はい!どのような御用でしょうか!」
その美しいオーラに気圧されて少し緊張しながらも要件を尋ねると、天使の様な少女は注目されているのが居心地悪いのか少し挙動がおかしかったが、口を開いた。
「えっと、冒険者登録をしたいのですが・・・」
・・・今、この天使はなんて言ったの?
「えっと・・・冒険者登録ですか?依頼ではなく?」
思わず尋ね返すと、少女は首を傾げながらも「いいえ」と首を振った。
「私は依頼ではなく登録をしに来ました」
・・・どうやら聞き間違えではなかったらしい。私は少女には向かないとは思うが、これも職務なので登録用紙とペンを手渡して言った。
「・・・そうですか。ではこちらの用紙に記入してください」
登録まで行かなかった・・・。
それにしても何故だかさくさくぱんだが止まりません。とても美味しいです。




