第十八話 屋敷に到着しました。
「では、引き続きお仕事頑張って下さい」
「有難うございます!」
セルムレイトに入ってすぐの門の前で、俺は兵士さんと別れた。別れ際に激励すると、敬礼を返してもらった。元気な人だ。
「さて、早速お父様の所に行きますか」
《了解っス!》
《嬢ちゃん、案内してくれるか?流石にワイも知らん道を行けって言われても無理やからな》
「ええ、任せて下さい」
《・・・なんか主人様の喋り方が高貴っぽいっス!》
「今は人が沢山居ますからね。猫を被っているんですよ猫を」
クロの疑問に答えながら、俺は普段は消している『メニュー』のマップ表示を出した。
「では、案内します」
俺はそう言ってマップを見ながら屋敷までの道の案内を始めた。
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屋敷に着くと、すぐに父の所まで連れて行かれた。
「エリシア。お前が平民として来るのは納得していたが、何故馬車で来なかった?」
「馬車より速い移動方法を手に入れましたので」
俺が澄まし顔でそう言うと、父は片手で額を抑えて溜息を吐いた。
「・・・お前に何を言っても意味が無さそうだ。本当に何故こんな風に育ってしまったのか・・・」
『聞き耳』スキルが父の独り言を拾って来た。
・・・うん、なんかすみません。
俺はいつも苦労させてしまっている父に申し訳ない気持ちが少し湧いたのだった。
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娘のエリシアが部屋を出た後、一人のメイドが入室してきた。
「・・・それで、エリシアはどのような行動をしてきたんだ?」
私は目の前で報告しにきてくれたフェーレに尋ねた。
「・・・申し訳ございませんオーラム様。お嬢様を途中で見失ってしまった為、行動のすべてを把握出来ませんでした」
その言葉を聞いた時、私は驚愕した。何故なら、フェーレは私に仕えてくれる以前は諜報部隊でもトップクラスの腕前を誇っていた程なのだ。
「・・・そうか、エリシアは成長したんだな」
「成長しすぎな気はしますが・・・」
「・・・確かにそうだな」
私は最近多くなってしまった溜息をまた吐いたのだった。




