第十七話 市門の前でのいざこざ
「お、あそこが入口か。よし、ロウキー。あそこに向かってゆっくり歩いてくれ」
《任せな、嬢ちゃん》
俺は街に入るために並んでいる行列を指差し言った。ロウキーは頼もしげに答えて歩き始めた。
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門の前に並ぶ行列の最後尾に着くと、クロが俺の腕の中から顔を出し、呟いた。
《結構並んでるっスね〜》
「まぁ、ここって国境近くだし、商業都市としての面もあるらしいからな」
《なら、活気もありそうっスね》
「あると思うぞ。街でショッピングもいいかもな」
《しょっぴんぐ・・・っスか?》
「買い物の事だよ」
順番を待っている間、俺はクロと話をしていた。
前が進んだ時はロウキーが進んでくれているから俺の番が来るまでは会話に夢中になってても問題は無い。
・・・筈だったんだが。
「おい、嬢ちゃん。そんな犬っころに話しかけるぐらいなら俺達ん所で酌してくれや」
俺の背後に並んでいたおっさんが話しかけて来た。酒盛りをしているおっさんの一人だ。少し面倒くさくなって、無視をする事に決めたが・・・。
「おいっ!無視してんじゃねぇぞ!」
ブチギレ始めた。
俺は仕方なく振り向くと、酒のせいか、それとも怒りゆえか、顔を赤く染めた熊獣人のおっさんが額に血管を浮かび上がらせていた。
そのおっさんの背後には、おっさんと同じような怒気を孕んだ目をしているおっさんが五人、それを止めようとしている優男が一人いた。
この騒ぎが気になったのか、周囲の人達が遠巻きに俺達を眺め始めていた。
「何故そこまで怒っていらっしゃるのですか?」
俺は呆れた目でおっさん達を見ながらそう言うと、おっさん達の額に更に血管が浮かび上がった。
「こっちが下手に出てりゃあ、舐めてんじゃねぇぞクソガキが!」
いや、いつあんたが下手に出てたんだよ!
俺は内心そう叫んでツッコミながらも、表情を変える事なく溜息を吐いた。
「酒を飲む事自体は止めませんが・・・人に迷惑をかけたらダメでは無いでしょうか?」
「んだとぉ・・・!?」
「少しは落ち着いたらどうですか?そんなにカッカしていると、早死にしますよ?」
俺がそう言うと、おっさんは遂に怒りが振り切れたようで、腰に下げていた剣を引き抜いた。
おっさんが剣を抜いた段階でギャラリーの数人が兵士を呼びに市門へと向かっていくのが視界に映ったが、それはどうでも良い。
「痛い目見たくなかったら早く頭を下げやがれクソガキ」
「断ります。私に非があるとは思いませんので」
「・・・余程痛い目にあいたいんだ、なぁ!!」
熊獣人のおっさんはそう言って俺へと剣を振るった。
「・・・『障壁』」
ガキィンッ!!!
「何ぃっ!?」
俺が展開させた障壁に剣を阻まれ、おっさんは驚愕の声をあげた。
「貴方は無抵抗の一般市民に理由なく向けましたね?これは犯罪ですよ?」
「う、うるせぇ!お前が早く謝らねぇのが悪いんだろうがっ!!」
トンチンカンな事を叫ぶおっさんに俺は『威圧』を乗せた冷めた目を向けた。
「一方的に絡んできて、勝手に激情して、その上自分の罪を被害者に責任転嫁ですか・・・。控えめに言って屑、ですね」
「ぐ、ううぅ・・・!」
俺の威圧に気圧されてか、おっさんは黙った。
と、その時、
「おい!そこで何している!」
そう言って揃いの鎧を着た数人の男がこちらに近づいて来た。どうやら、ギャラリーが呼んで来た兵士達らしい。
「・・・って、エリシア様!?何故、エリシア様がお一人で!?」
兵士の一人が俺の顔を見て驚愕の声をあげた。どうやら彼は俺の顔を知っていたらしい。
「いえ、お父様を驚かせようかと思いまして」
「まぁ、確かに驚くでしょうが・・・。しかし、供の一人もつけずに来る事は無いでしょう!」
「供なら居ますよ?」
「え、何処にですか?」
「ここに」
俺は「ほら」と、抱えていたクロを見せつけた。
クロはクロで、見せつけた時に《ワンッ!》と一鳴きして自己主張していた。
「いや、子犬は護衛になりませんよ!?」
俺が持つクロを見た兵士のツッコミが響いたのだった。
その後、俺は優先的に街ヘと入れて貰え、熊獣人のおっさんは詰所に連れていかれたのだった。
因みに作者は刑法などに疎いので、知っている方には違和感があるでしょうが、生暖かく見て下さい。




