第六話 初めての野営
「凄い速いな・・・」
《なんか、悔しいっス!》
ロウキーのスピードに俺は呆然と呟いた。俺が抱えていたクロは謎の対抗心を燃やしていたが。
《あまり暴れんといてくれ。落っこちたら流石に危険やからな》
「お、おう・・・」
俺はそう返答しながら考えていた。「こんなに働くならもう怠け者の驢馬じゃねぇーだろ」と。・・・野営の時に聞いてみるか。
俺は内心でそう決めたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
夕暮れでオレンジ色に染まった森の近くの平原に俺達は居た。
「日も落ちてきたし、今日はここで野営だな」
《了解っス!》
《・・・分かった》
俺の言葉に二匹は頷いた。俺は無限収納からテントを取り出した。
「じゃあ、ロウキー。お前はここで送還するつもりなんだが、いいか?」
《別にいいさ。ワイはお嬢の足として動くだけやからな》
「わぉ、ロウキーは頼もしいな」
俺はロウキーの意識に少し驚嘆しながら俺は『送還:ロウキー』と唱えてロウキーを返したのだった。
「・・・さて、クロにはお仕事がある。そう、とても重要なお仕事だ」
《重要な仕事っスか?》
俺の言葉にクロがコテンと首を傾げた。俺は「ああ」と頷いて、内容を告げた。
「クロには今日の晩御飯になる獣を狩ってくるのだ!クロの頑張りによって晩御飯のグレードは変わるからな」
《重要じゃないっスか!それ!頑張ってくるっス!》
俺の言葉を聞いてクロは慌てて森の方へ早速駆け出していった。
「・・・さて、俺は野草を探したり、簡素な竃を作ったりしようかね」
俺は森へと向かって走っていったクロを見届けた後、鑑定を使って食用可能な周囲に生えていた野草や木の実を軽く採取したり、魔法を使って竃や薪を集めて、火を起こしたり、野営の準備を進めた。
《狩ってきたっスー!》
「お、お帰りー」
クロの声が聞こえたため振り向くと、本来の姿に戻って、口に巨大な猪を咥えたクロが居た。
「お〜・・・随分と大物を狩ってきたなぁ」
《ふっふっふ・・・》
「ん?どうした、クロ」
俺の賞賛を聞いたクロは怪しげに笑い始めた。気になって尋ねてみると、クロの影から鹿や熊やらの獣の死体がドサドサドサッと出てきた。
「これは・・・凄いな」
《これなら鱈腹食えるっスよ!》
「いや、これは流石に多すぎないか?」
俺は頰を指で掻きながらクロにそう言った。
「さて、まずは血抜きだが・・・どうするか」
《オレは生のままでもいけるっスよ?》
「いや俺がいけないんだよ」
俺はクロと会話をしながら無限収納から取り出した短剣で猪の皮を剥がすように切れ込みを入れた。すると、
ピロリン!スキル『解体』を取得しました。
やはり、俺の予想通り『解体』のスキルを取得できた。すると、不思議な感覚が湧いてきた。何処をどう切ればいいのかが分かる。
・・・どうやら、この感覚がスキルの効果のようだった。中々に使えそうだな。
そして、クロが狩ってきた獲物を全て解体する時には『解体』スキルのLVは6まで上がっていた。・・・いや、クロよ。お主は一体どれだけ狩ったと言うのか。まぁ、暫くは困らなそうだし良いか。
俺はそう考えながらも、料理を始めたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「いや〜意外と美味かったな」
《主人殿は、本当に多才っスね〜。なんで貴族なのに料理が上手なんスか?》
「さてな〜」
猪肉のステーキにウサギのシチュー、ホロホロ鳥の香草焼きを満足いくまで食べた俺とクロは料理にも使った火を見ながら話をしていた。
「・・・さて、そろそろ寝るか」
《んじゃあ、野営の番は任せるっスよ!》
「おう、よろしくな」
俺はクロにそう頼んでテントの中に入って眠りについたのだった。




