第五話 二匹目の使い魔
「・・・で、ここから更に北上したところにアルゲート伯爵領、つまり父様達が今暮らしている場所がある」
無事に王都から出た俺達は、王都から少し離れた街道の端で、俺は広げた地図を指差して、クロと目的地についての確認をしていた。
《つまり、今回の作戦は、そこまでオレに乗って行く訳っスね?》
「いや、違うぞ?」
《・・・っスーー!?!?!?!?》
「だからその驚き方は一体何なんだよ・・・」
クロの言葉を否定すると、物凄い勢いで飛び跳ねながら奇声を発するという独特の驚き方をした。俺は少し呆れながら呟いた。
「今回使うのはこっちだ。・・・『召喚:スロウスドンキー』」
俺が怠惰の能力の一つ、使い魔召喚を発動すると、目の前に光の線が絡み合い、魔法陣を作り上げた。そして、地面から少し浮いた場所に出来た光の魔法陣が更に一層光り輝くと、目の前には驢馬がいた。
《・・・誰だ、テメェは?》
召喚されたスロウスドンキーは顔を俺に近づけて、睨んできた。
「一応、俺が召喚主だけど・・・」
《テメェがかぁ?・・・って、んん?この匂いは・・・》
ふと、その時、スロウスドンキーが鼻を鳴らしながら呟くと、さっきまで睨んでいたのに態度が一変した。
《・・・で、それでお嬢。ワイを呼び出したっちゅう事は、どっかに遠出かぁ?》
「あ、ああそうだ」
俺が頷くとスロウスドンキーはブルンと鼻を鳴らした。
《だったらまずはワイに名前を付けてくだせぇ。じゃないと、ワイのじつりきを万全に発揮出来へんからなぁ》
そう言うスロウスドンキーの言葉に俺は頷いて、名付ける事を同意した。
「わかった、ちょっと待っててくれ考えるから」
《おう、バッチコイや》
俺は暫し考え込んで、口を開いた。
「ロウキー・・・はどうだ?」
《・・・ああ、その名前、ええやないか》
「そうか、なら良かったよ」
俺はホッと胸を撫で下ろして、『命名』スキルで名前を付けたのだった。
「んじゃあ、よろしくな?」
《これでオレも先輩っスね〜》
「・・・先輩風を吹かしたりすんなよ?」
俺は抱えていたクロがフフンと鼻息を鳴らしているのを見てそう釘を刺した。
《ギクっス・・・》
「口で言うのかよ、それ・・・」
クロの言動の残念さに疲れを感じながらも、俺はロウキーに跨った。
「まぁ、クロが残念なのは今更か」
《それってどう言う意味っスか!?》
「んじゃあ・・・ロウキー、レッツゴー!」
《無視しないでほしいっスー!!》
クロの悲鳴を黙殺して俺たちは出発したのだった。
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(ロウキー・・・か、やっぱ、お嬢は生まれ変わってもお嬢のまま、て事か)
ワイは、背中でちっこいダークネスウルフと騒いでいる主人を横目で見て、そう結論付けるのだった。




