第十話 五年越しの友人
今回はちょっと百合成分が入ってます。
「と、ここがAクラス、だな」
自分のクラスを見つけた俺は扉を開けて教室内に入った。どうやら席は自由に選んでいいようで、隅っこの方を俺は選んだ。
その時、
「ねぇねぇ、エリシア!久しぶりだね!」
背後から声がかけられた。振り向くと、そこには笑顔のレイナが居た。その後ろには少し呆れたような顔をするカストル殿下もいた。
「レイナ様はご壮健なようで何よりです」
「そりゃ元気モリモリ激獣拳が売りだからね!」
挨拶をすると、レイナはそう答えた。しかし、何故動物モチーフの功夫ヒーロー達をレイナが知っているのだろうか。まぁ、また今度聞けばいいか。
「私とはデビュタント以来だな、エリシア嬢」
「カストル殿下もお変わりないようで」
「ああ、あの時エリシア嬢に助けてもらったお陰でな」
パチリとウインクをするカストル殿下。意外と親しみやすいようだ。
「あ、そうだ!カストル殿下もエリシアもお友達になれば良いよ!」
「ふぇっ!?」
「何だ、エリシア嬢も随分と可愛らしい声を上げるな。それより、友人か・・・悪く無いな」
「でしょー!」
俺を置いてけぼりにしてレイナとカストル殿下は話し合ってた。
「では、今日より私達は友人で良いか?エリシア嬢」
「は、はい」
そして、クルリとこちらを向いたカストル殿下の言葉に頷くと、カストル殿下はこちらに手を伸ばした。
「では、これからよろしく頼む。・・・では、まず最初に、エリシア嬢の事も呼び捨てにして良いか?」
「はい、どうぞ」
「ありがとう・・・エリシア」
カストル殿下がニコリと笑ったのを見て周囲の女生徒達が騒ぎ始めた。まだ幼いが、流石イケメン。微笑みだけで女子をノックダウンするらしい。大人になった時はどれだけの女性を腰砕けにするのだろうか。今から考えただけで恐ろしく感じてしまう。
「エリシア?一体どうした」
俺がいきなり黙ったのを見て、カストル殿下が首を傾げて尋ねてきた。
「いえ、少し考え事を・・・」
「悩み事か?何か私が力になれる事があるなら手を貸すぞ」
俺がそう答えると、殿下はとんと軽く自身の胸を叩いた。
「いえ、悩み事では無いので心配はご無用です。・・・しかし、ありがとうございます。気にかけて頂いて」
「なに、エリシアと私は友人だ。友を助けたいと思うのはおかしなことだろうか?」
「いえ、やはり殿下は凄いですね」
「む?そうか?」
俺がそう言うと、殿下は首を傾げた。けど、凄いと思う。まだ友人になったばかりの人物に手を伸ばそうとするのだから。
「ちょっと、二人だけで話さないでよー」
「ちょっ、レイナ様!?」
ガバッといきなり抱きついてきたレイナに俺は驚いた。
「私だけ蚊帳の外で寂しいよー。私は寂しいと死んじゃうよ?」
「レイナ様はウサギですか・・・」
「ウサギみたいに可愛いなんて照れるよー」
「・・・言ってません。って、ひゃん!」
抱きつかれたままレイナの好きにさせてそう話していると、いきなりレイナが俺の脇を撫でた。
「おおー。可愛い声で鳴くんだねぇ。ならここは?」
「ちょっ、レイナさ・・・はぁん!」
そのままレイナは俺の胸や脇腹に手を這わして、撫で回した。思わず艶めいた声を出してしまい、それが更にレイナの悪戯心に火を付けてしまったようだった。
「ほらほら〜。此処かぁ?此処が良いんかぁ?」
「この・・・っ、いい加減に、して下さいっ!!」
俺はまだ俺の身体を撫で回そうとしていたレイナの脳天に手刀を叩き落とした。
「いったーい!?」
少し鈍目な打撃音と共に、レイナは俺から離れて頭を抑えていた。
「あまり、調子に乗らないで下さい!」
俺は荒い呼吸と、レイナによって乱された制服を整えた。
そこで、ふと視線を感じ、周囲を見てみると女性男性関わらずに、生徒達が前屈みになっていた。
「えっと・・・これは?」
「エリシアの上げる声を聞いてると何だかイケナイ気分になったのだろう。彼等は」
俺の呟きにカストル殿下が答えてくれた。それを聞いて、俺はカストル殿下に気になったことを尋ねた。
「・・・カストル殿下は?」
「・・・私も少しだけなってしまった」
「そうですか・・・」
カストル殿下もなってしまったらしい。
ピロリン!スキル『魅了』を取得しました。
(喧しいわ!)
俺はスキル取得の音声にそう胸中で叫びながら溜息を吐いたのだった。
友達はいいものですよね!
え、私?私にも居ますよ友人ぐらい!(ゲーム機を見ながら)




