第五話 剣神ボルパマルファシエラ
「あの、竜人さん?ボルパマルファシエラ様は女神様ですよ?」
「・・・えっ?」
エクリシオンの言葉に思わず俺はバッ!と、エクリシオンの方を向いた。
「・・・私はそんなに女っぽく無いのかい?」
シエラは蹲り、少しいじけ乍ら「の」の字を書いていた。最初に現れた時の大物感はどうしたよ。
「あー・・・済まなかった。悪い」
「・・・神に向かって流石に軽くないかい?まぁ、良いけれどさ」
いじけるのを止めたシエラは、「よいしょっと」と言いながら立ち上がった。
「それでね、君が悪魔を倒した時に、『剣鬼』ってユニークスキルと称号を手に入れてたよね?」
「まぁ、よく分かってないけど、持ってるよ」
俺が素直に頷くと、シエラはにっこりと微笑んで、俺に近付いてきた。
「実は、『剣鬼』のユニークスキルは、そのスキルを持つ者が更に腕を磨くと『剣聖』って言うユニークスキルに変化する特殊なスキルでね、そうなった時には、私が加護を与えるのさ」
「・・・それがどんな関係があるんだ?」
俺がシエラに尋ねると、「チッチッチッ」とシエラは指を振った。
「実は私達神族には気に入った転生者にささやかな援助を与える事が許可されてるんだよ」
「へぇ・・・」
俺が、「成る程」と他人事のように頷いていると、エクリシオンが口を挟んできた。
「何を他人事のようにしてるんですか?竜人さんも私や酒神ヨーム様の加護を受けてるじゃないですか」
「あれ?主神の加護は含まれないのか?」
俺が疑問を投げかけると、シエラとエクリシオンは声を揃えて、「ああ」と頷くと答えた。
「アルグス様の加護は転生者には全員与えられますよ」
「その代わり、加護の効果はランダムだけどね」
「つまり転生時のプレゼントって事か?」
「まぁ、そうなるね。主神様の加護を受けているのは大抵が転生者だよ」
シエラはコクリと頷いて、俺の例えを肯定した。成る程、主神の加護は転生者かどうかを見極める為の大体の目安にもなるのか。
「因みにヨーム様は竜人さんのお父君の呑みっぷりが気に入ってて、その息子の竜人さんが転生するって聞いて、加護を与える事にしたらしいですよ」
エクリシオンの言葉を聞いて俺はなんとも言えない気持ちと表情になった。
(親父のお陰で加護を貰えるとか少し微妙だな。まぁ、ありがたいけどなぁ・・・)
「あ、私は竜人さんがとても良い人だと思ったので渡しましたよ!」
「そ、そうか。ありがとう」
勢いよく言ってきたエクリシオンに気圧されながら俺が感謝を伝えると、嬉しそうに笑った。そう、まるで褒められて喜ぶ犬みたいに。それで良いのか上級天使!
「とまぁ、こんな感じで結構好き勝手に神族は加護を与えたり、与えた加護を回収したりしてるんだよ」
「・・・この話の流れからすると、シエラからも加護を貰えると期待しちゃうけど良いのか?」
「そのつもりだから期待して良いとも」
俺の言葉ににこりと微笑んだシエラが俺の額に指を当てた。そして、シエラの指が光ったかと思うと、俺の体に何やら力が漲ってきた。
「私の・・・剣神ボルパマルファシエラの加護を君に与えたよ」




