幕間 その後の地球で(後編)
今回は東雲莉奈目線です。
「あれ、ここは?」
気が付くと私は何も無い真っ白な部屋に居た。いや、部屋とは言えない場所だ。何故なら扉も窓も壁も床も天井も無いのだから・・・。
(確か私は、あの男に抱きつかれてそのまま一緒に・・・)
私がそう考えていると、背後から男の声が聞こえた。
「どうも初めまして」
「っ?誰っ!」
声のした背後を向くと、そこには翼を生やした金髪の美男子が居た。
「初めまして、天使です」
「天使・・・?と言うことは、此処は死後の世界、なんですか」
「ええ、そうです」
私の言葉に天使は微笑みながら頷いた。
「実は貴女にお願いがあってきたのです」
天使はそう言って顔をキリッと引き締め、そのお願いというものを伝えた。
「貴女には、とある世界に転生して、その世界を救って欲しいのです」
「どうでもいいです」
「・・・へ?」
私の答えに天使はポカンとした顔になった。
「どうでもいいって、何故ですか?」
天使の疑問に私は表情を変えずに呟き返した。
「りゅー君が居ない世界なんてどうでもいいです」
「りゅー君って誰でしょうか?」
「山本竜人」
天使の質問に答えると、天使は「ええっ!?」と大袈裟に驚いた。
「もしかして貴女は竜人さんの事を知ってるのですか?」
「!?貴方も知ってるの!?」
私がガバッと詰め寄ると、天使は「え、ええ」と少し押され気味に頷いた。そして、少し鋭い目で私を見た後、少し引きつった笑みを浮かべて答えた。
「実は、貴女に転生してもらおうと思っていた世界に、竜人さんにも転生してもらってるんですよ」
「それは本当なの!?」
「え、ええ・・・」
「如何でしょうか」と、天使は少し引きつった笑みを浮かべて聞いてきた。
「因みに注意点ですが、転生時に稀に今と同じ種族とは限りませんし、記憶が戻らない場合が事故であります」
「分かった」
天使の言葉に頷くと、天使が微笑んで「では行ってらっしゃい」と言った瞬間、私の意識が薄れたのだった。
(待っててね、りゅー君。会いに行くからね)
私は胸中でそう呟いたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「・・・ふう、彼女はかなり恐ろしい思考の持ち主でしたね。まさか竜人さんの幼馴染、しかもヤンデレ系だとは思いませんでしたが。恐らくこれで、竜人さんの事はバレないでしょう。ふふん!やはり私は出来る天使です。これで、彼女のやる気も出しながら竜人さんの安全も有りますし、良い手ですね。竜人さんがお祈りに来た時に伝えときましょう」
天使・・・エクリシオンは莉奈を転生させた後、そう呟いた。そして、何かに気が付いたように呟いた。
「彼女を転生させた時の穴に別の魂が向こうの世界に行ってますね・・・。これは至急連絡した方がいいかもしれませんね。取り敢えず竜人さんが十二歳になった時にお告げで呼び出しましょうか」
エクリシオンはそう言って、その空間から姿を消したのだった。




