幕間 その後の地球で(前編)
それはとある日の朝、某所の駅のホーム内でそれは起こった。
「きゃあああああ!?」
「おい!人が線路に落ちてるぞ!早く起こせっ!!」
「いや、だめだ!意識がない!頭を怪我してるんだ!」
「誰か、誰か早く駅員を呼べ!」
「いや、駅員より救急車を呼ばないと!」
「早くしねぇーと列車が来るぞ!」
ホームに落ちた少年を救おうと、多くの人達が活動をしている中、柱の陰でボソボソと呟く少年がいた。
「ククククク・・・・・・。僕は悪くない、悪くないんだ・・・!僕から、僕の莉奈ちゃんを奪ったアイツが悪いんだ・・・。ハハハハハ・・・」
少年は歪んだ顔で暗い笑い声を上がながら、背を押され、こちらを信じられない様な目で見ていたいけ好かない男の最後を思い返していた。
そして、駆けつけた救急隊によって線路に落ちた少年の死亡が確認されたのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そして、駅での事故があった数日後、少年の葬儀が執り行われた。
「りゅー君!どうしてっ!どうしてぇぇ・・・」
「なんで死んじゃったの、お兄ちゃん!朝の事、謝りたかったのに!まだ御免なさいって言えてないのに・・・っ!」
少年の死体が入った棺桶にすがりつく様に泣く二人の少女がいた。一人は少年の妹、そしてもう一人は少年に恋をしていた彼の幼馴染だ。
状況から、少年の死は何者かによる他殺の可能性が高いと告げられた家族は犯人へと強い憎悪を向け、彼の友人もまた、彼との永遠の別れに嘆いていた。・・・一人を除いて。
(なんでそんなヤツの死で泣くんだい?だってそいつは僕らの仲を邪魔してきた糞虫じゃないか!なんでなんでなんでなんでなんで?)
そう、彼こそが少年を突き落とし、殺した張本人だ。あの時、少年を殺して愉悦に歪んだ顔は死してなお、己の邪魔をする少年への憎悪に染まっていた。
彼の願いは一人の少女を自分のものにしたいという歪んだ愛の成就で、その邪魔となった少年を殺したのだった。
そして、彼はその数ヶ月後、また、行動を起こした。
「ねぇ、莉奈ちゃん?なんで死んだ奴のことをまだ考えてるの?」
「ちょっと蓮司君?用があるからって言うから来てみたら、何を言ってるの?」
学校の屋上に呼び出された少女・・・東雲莉奈に向けて、彼・・・海堂連司は歪んだ笑みを浮かべた。
「何を言ってるって?そんなの決まってるでしょ。莉奈ちゃんは僕の物なんだから僕以外の男の事を考えてたら駄目だろう?」
「ちょっと何言ってるの、私は連司君の物になった覚えは無いよ。それに・・・私は連司君の事別に恋人として好きになれないし」
その言葉を聞いた瞬間、連司の顔が凍りついた。
「・・・なんで?」
「え?」
「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!?莉奈ちゃんは僕の、僕だけの物なんだよ!?君の為に君に纏わり付くクズ虫を、山本を殺したのに!莉奈ちゃんはそれでも僕の事を見てくれないの?ねぇ、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてっ!僕は莉奈ちゃんの事を、莉奈ちゃんの事だけを見て、考えて、思い続けていられるよ?莉奈ちゃんの下着も、歯ブラシも、靴も、ペンも消しゴムも!全部僕にくれる為に置いてあったんだよね!ねぇっ!ねぇっ!」
その言葉を聞いた時、莉奈は叫んだ。
「貴方が・・・貴方がりゅー君を殺したの!?りゅー君の為に準備したペンも、消しゴムも靴も、私が使った下着も歯ブラシも連司君が盗んでたの!?なんで私のことを思ってるって言っているのに邪魔をするの!」
「五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い五月蝿い!・・・こうなったら莉奈ちゃんも、殺してやる・・・っ!」
「きゃっ!?」
そう言って連司は莉奈を掴み、共に屋上から飛び降りた。
「来世では一緒になろうね・・・」
「いやぁぁあああっ!!」
そして、ここでまた、二人の少年少女の命が消えたのだった。




