第六話 悪魔との戦い(前編)
長くなったので分割します。
鑑定の結果、そこに記されていたのは『悪魔』という種族と『魔王の配下』という称号だった。
「ふむ、まさかこの様な場所に当たるとはな」
「当たる?それは一体どういう意味だ!」
なんか聞いたことある声が悪魔に誰何していた。・・・って、この声ってやっぱりカストル殿下じゃねぇーかよ!
俺が少しハラハラと見守っていると、意外な事に普通に悪魔は答えたのだ。
「何、『ランダムテレポート』の魔法で転移した先で必要数の魂を集め、それを陛下に献上する事が我らが役目、我らが使命なのだ」
さらに殿下は疑問を投げかけた。
「貴様たちの陛下とは誰だ」
「魔王様だ」
悪魔の男は淡々とそう答えた。その答えに反応した子供は俺、悪魔の前に立っている殿下、そして俺の隣にいた兄の三人だけだった。他の子供達は恐怖で泣き、騎士達は憎憎しい表情を浮かべながら警戒を解かず、武器を構えたままだった。
(しかし、どうするか・・・)
俺は悪魔を見ながら思考を巡らせていた。恐らく魔王が、天使の言っていた災厄なのだろう。なら、俺はその魔王の邪魔をするのが当たり前だ。と、その時、俺の目が悪魔の右腕に何かが集まっているのが見えた。
ピロリン!ユニークスキル『魔力視』を取得しました。
ピロリン!ユニークスキル『瘴気視』を取得しました。
って、このスキルを手に入れたと言うことは!
「ふむ、もういいか。・・・では貴様ら。死ね」
そう言って悪魔は無造作に魔力と瘴気を纏わせた手刀を振り払った。
しかし、その攻撃が周りの彼らに届くことはなかった。
「『結界』!」
ガキンッ!
「・・・何?」
俺は魔力を大量に込めて結界を張って悪魔の攻撃を防いだ。
悪魔は己の攻撃が塞がれた事に片眉をあげた。
「まさか・・・エリシア嬢か!」
・・・カストル殿下。貴方、勘が良すぎませんか?それとも耳が良いのかな?
「はぁ・・・」
「エリシア?」
俺が吐いた溜息を聞き拾った兄が俺の名前を呼んだ。
「兄様、大丈夫ですよ」
俺は兄に微笑み、繋いでいた手を離した。そして、無限収納から鉄剣を取り出し、付与系魔法を使い、俊敏と防御力、そして筋力を強化して悪魔の前へと進み出た。
「なんだ?小娘が一体何の様だ?」
「エリシア嬢!?」
「何?この娘が?」
悪魔は俺を見て嘲る様に笑ったが、カストル殿下の言葉を聞いて悪魔はピクリと片眉を動かした。
「・・・成る程、七歳と言う若さに対してかなり高いその実力、まるでチグハグだな」
「褒め言葉として貰っておきましょう」
「ふむ、肝が座っているのだな。・・・ここで始末したほうがよさそうだ」
悪魔はそう呟くと先程放った魔力と瘴気を纏わせた手刀を振り払い、斬撃を飛ばしてきた。
「『結界』!『結界』!もう一つ『結界』!」
俺は結界を連続で発動して悪魔が放った斬撃を防ぎ、強化した足で高く飛び上がった。
「はあっ!!」
「む!?」
ガキンッ!
しかし、俺の剣戟は防がれてしまった。俺は体を猫の様にクルリと捻って着地した。
「・・・なかなかやる様ではないか」
「いえ、それ程でもございませんよ」
俺は振り返り交差した腕を下ろした悪魔を見た。
「・・・憤怒の魔王が配下が一人、ガミジン」
下に降り立った悪魔・・・ガミジンが名乗りを上げ、両方の拳を構えた。どうやら同格の敵と認められた様だ。
「・・・アストリア王国アルゲート伯爵家長女、エリシア・フォン・アルゲート」
俺もガミジンに続くように名乗り、両手で鉄剣を構えた。そして、ジリジリと少しずつ相手の隙を狙う様にお互いが動き始めた。周りの彼らも緊張しているのか静寂の中俺達は睨み合っていた。
カツンッ
誰かが身じろぎして金属製の装飾品が何かに当たり、音が鳴った。そして、俺とガミジンはその音をきっかけに動き出した。
「はぁぁぁぁあっ!」
「ぬぉぉぉぉおっ!」
俺の振るう剣とガミジンが繰り出す魔力を纏った拳がぶつかり合い、硬質的な音が鳴り、お互いを弾いた。
俺はその勢いを利用して、ガミジンから距離を取った。そして、ガミジンも俺と同じ選択を取ったらしく、遠くに降り立っていた。
(このままじゃ負ける!ならっ!)
俺はガミジンが拳に魔力を纏わせた時の流れを思い出しながら俺は体に魔力を循環させた。
ピロリン!スキル『身体強化』を取得しました。
ピロリン!スキル『加速』を取得しました。
ピロリン!スキル『堅固』を取得しました。
ピロリン!スキル『剛力』を取得しました。
どうやら新しいスキルが増えたらしい。俺は新しく手に入れたそれらのスキルを発動させた。
「・・・行くぞ!」
俺はそう吠えてガミジンへと突撃していった。




