第五話 急展開を迎えました
「ではここら辺で私達は失礼しよう」
「じゃあね!エリシア!」
そう言って殿下とレイナは俺たちから離れていった。
「じゃあ、僕達も周ろうか」
「そうですね」
俺はニコニコとしている兄の言葉に頷き、歩き始めた兄の後を追った。
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その後は他の貴族家の子達と少し話したりしながら俺たちはかいじょうをめぐった。
「・・・エリシア。流石にそんなに食べなくても良いんだよ?」
「モグッ・・・ゴクンッ。・・・そうですか?」
そして今、俺は呆れた様な兄の言葉に口にしていた大きなエビの蒸し焼きを胃に納めた後、首を傾げた。
「うん、まさか僕の可愛い妹が食いしん坊さんだとは思わなかったよ」
「・・・そこまで食べましたでしょうか?」
俺には沢山食べている意識はなかったので、いまいちピンと来なかった。
「まったく・・・それで、そのエビは美味しかったかい?」
「はい。かなり美味しかったですよ」
「本当!?エリシアの舌は凄いからね、そのエリシアがかなり美味しいと言うことはいい当たりだよね」
俺の言葉に少しウキウキした兄がエビの蒸し焼きを皿に盛りつけた所でそれは起こった。
フッ
会場がいきなり暗闇に包まれたのだ。
しかし、そんな状況でも俺は普段通りと同じ様に見えていた。何故なら、『称号:使役者』の効果で、クロが持っている暗視LV MAXが使えるのだ。
「エリシア!無事かい!」
「ええ、兄様安心してください」
「・・・落ち着いてるね。エリシアって意外と度胸があるのかな?」
「度胸が無いとダークネスウルフを従えようなんて思いませんよ」
「・・・確かにそうだ」
俺の軽口に兄はクスリと笑うと、俺の手を握った。
「けど、一体何が起こっているのか・・・。エリシアには何か予想がつく?」
「いえ、私ではそこまでわかりませんよ。・・・けど、ここは王城ですし、そう簡単に賊は入れないと思うのです。ならばこれは・・・」
「そう言う余興か、もしくはかなり凄腕の賊が侵入したということの二択・・・てことだね?」
俺と同じ考えに至った兄に俺は頷き返した。
「しかし、この様な形の余興は有り得ないでしょう。もし行うなら直ぐに陛下、もしくは大臣か王太子殿下の声がするでしょうし」
「となると、実質一つしかないわけか・・・」
「はい。嫌な事に、真実はいつも一つなのですよ」
俺は頭に手をやった兄を前世で有名だった、声が変わる蝶ネクタイをした子供探偵のセリフを引用して慰めたのだった。
と、その時、広間の中心にスポットライトが当たった。そしてそこには長い赤髪を後ろで纏めた黒衣の男が居た。
「一体あれは誰なんだ?」
聞き耳スキルが拾った見知らぬ誰かの呟きを聴きながら俺は警戒心を強めた。何故ならメニューを使ったあの男の鑑定結果が到底信じられない様な事だったのだ。
そこに記されていたのは『悪魔』という種族と『魔王の配下』という称号だった。




