第三話 デビュタントが始まりました。
暫くして馬車が止まった。王城に着いたのだ。
「さあお手を、お姫様?」
「・・・はい、兄様」
俺は兄の手を取って馬車から降りた。もう既に夜の帳が下り、辺りが暗くなり始めている中、魔道具の灯りが王城を明るく照らしていた。
「エリシア、スベルム。来たか」
「はい、父上」
「はい、お父様」
王城の前で俺と兄は父と合流を果たした。
「スベルム。エリシアが男に絡まれないように守ってやるのだぞ」
「当たり前です!」
「そ、そうか・・・」
父は食い気味に答えた兄の勢いに少し引いていた。
「ま、まぁ良い。エリシアも気を付けるのだぞ」
「はい、お父様」
俺が頷くと父は満足したように王城へと向かった。父はデビュタントに保護者として来ている他の貴族家の方々と話をするようだ。
「じゃあ、僕らも行こうか」
「はい、兄様。・・・よろしくお願いしますね」
「勿論だよ」
俺の言葉に兄は微笑み返したのだった。
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デビュタントの舞台となる王城の広間はとても広く、煌びやかだった。天井から吊るされた何十個ものシャンデリアや点在するテーブルの上には豪華な食事が並べられていた。
と、その時、俺を呼ぶ声が聞こえたのだった。




