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第十五話 お城に呼び出されました

「・・・王城、ですか?」


城から帰ってきた父の言葉に俺は思わず聞き返した。


「ああ、陛下がお前がCランク魔獣のダークネスウルフを従えたと聞いて、興味を持った様でな。来週に行く事になった。それまでに準備をする様に」


父は呆然とする俺にそう告げると部屋を出て行った。


《・・・なんか大変っスね、主人殿》


ぽふぽふっ


呆然と固まったままの俺の足をチビクロが小さい肉球で慰める様に叩いたのが心に沁みた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



そして、ついに城へと行く日が来た。俺は馬車に揺られながら窓から見える王城に視線を向け、溜息を吐いた。


(ああ、憂鬱だ・・・)


俺の溜息が聴こえたのか、俺の足元でクルンと丸くなっていたクロが俺を向いた。


《主人殿。溜息を吐いたら幸せが逃げるっスよ?ほらスマイルスマイル!》


そう言ってクロは物凄く獰猛な笑みを浮かべた。まるで口が裂けたかと錯覚させるほどに。


「そんな笑い方だと、幸せどころか人も逃げるぞ?」

《あれ?おかしいっスねー?》


ムニムニとクロは前足で自身の頰を揉みながら首を傾げた。それを見て俺は思わず吹き出してしまった。


《あ、やっと笑ったっスね。心は晴れやかになりましたか?》

「・・・ありがとな、クロ」

《わわわ!?首がもげるっスー》

「そんなに力強くねぇーよ」


黒のおかげで気分が晴れた俺はクロを膝の上に抱えて、モシャモシャと撫で回した。

どのぐらい、そうしていたのだろうか。コンコンと、馬車の戸を叩く音がした後、「お嬢様、到着致しました」と、セバスの声がした。俺はクロを足元に下ろして立ち上がり、セバスの開けてくれた戸を潜って、馬車を降りた。


「・・・すごい」


そして、俺は目の前に聳え立つ雄大な城を見てそう呟いた。


「お嬢様、此方へ」

「ありがとう、セバス」


俺は先導し始めたセバスにお礼を言って、その後に続いた。もうすぐ、この国の王に会うのだ。俺は緊張してゴクリと生唾を飲み込むのだった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「エリシア、緊張しているのか?」

「はい、実は・・・」


待機室に案内された俺はそこで父と合流した。

そして今、その父が少し心配そうに聞いてきたところだった。


「・・・そうか、しかしそれも仕方がない。陛下に会うのは、本来デビュタントを行う七歳の時なのだから」


父は少し疲れた様に呟いた。

その時、扉を叩く音がした。


「アルゲート伯爵家当主オーラム・フォン・アルゲート卿及び、御令嬢エリシア・フォン・アルゲート様。お時間です」

「ああ、わかった。・・・エリシア、今回は私も側に居るからな」

「はい、お父様」


呼びに来た人に向けてそう答えた父は、俺に微笑みながら「安心しろ」と言った。相変わらず優しい父だ。俺もそんな父に向けて微笑み返して答えたのだった。

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