第十三話 チビクロ
「・・・エリシアって従魔術が使えたんだね」
「ええ、少しばかり・・・」
レイナが俺を見てそう呟いた。それに対して返すと、レイナはキラキラとした目をして叫んだ。
「凄い、凄いよ!まさかダークネスウルフを従魔にするなんて!」
「あ、ありがとうございます?」
レイナの物凄い勢いに押されて、つい、疑問形で返答してしまった。
「しかし、こんな大きなダークネスウルフ。一体どうやって連れて帰るのですか?」
「あ・・・」
俺はしまった!と頭を抱えたくなったが、それよりも先に対策を考えないと。
《あの〜主人殿?俺、体をちっさく出来ますよ》
「え?」
クロの言葉に思わず反応してしまった。それに護衛の人達とレイナは不思議そうに見てきたので、慌てて誤魔化した。
「それで、どうやって小さくなるんだ?」
《・・・もしかして主人殿。俺の言葉が分かります?》
クロに近づき小声で訊くと、質問されたので軽く頷き肯定すると、クロは口を大きく開いた。
《スッゲーっスね!流石は主人殿です!》
「それよりも、どうやって小さくなるんだ?」
クロの賞賛を流してまた小声で尋ねると、クロは慌てたように話し始めた。
《あ、はい。『身体縮小』ってスキルを使うと、体を小さくする事が出来るんですよ》
「・・・それはどのぐらいの間?」
《一応、解除するまでは小さいままっスよ。けど、その代わりに俺が弱体化するっスよ》
「そうか・・・」
俺が頷いていると、レイナが声をかけてきた。
「エリシア、さっきから何かブツブツ言ってるけど、どうしたの?」
「いえ、何でもありません」
俺がそう答えると、「そう・・・」と一言呟いてレイナはすぐに引き下がった。
「それより、方法が一つ思いつきました」
「本当に!?」
俺の言葉にレイナは驚きながら聞き返してきた。それに対して、俺はコクリと頷いた。
「では・・・クロ!『縮小化』!」
俺がそう命じると、クロは遠吠えをした。そして、その咆哮に応えるかの如く、クロを風が包み込んだ。そして、風が収まると、そこには小型犬サイズのクロがいた。
《ふふん!どうですか、主人ど・・・》
「かっわいいー!!」
《グフェッ!?》
胸を張って自慢気なクロは言葉を最後まで紡げず、レイナに捕まって物凄く頬擦りをされていた。
《あ・・・主人殿、助けてください・・・!》
クロの助けを求める言葉に俺は少し首を振った。
「ごめん、無理」
《そ、そんな〜・・・》
「くぅ〜ん」と、クロは悲し気に鳴いたのだが、それもまた、レイナの琴線を刺激する物だったらしく、更にレイナの頬擦りは激しくなるのだった。