第六話 考察
翌日、レティシアと朝の支度をしつつ、先日の話をしていた。
「・・・で、結局あの手紙はなんだったんだ?」
「さぁ?取り敢えずムツ◯ロウさん並みの動物愛は感じました」
「どっちかと言うと、ペット愛だよな」
前世の有名人の名前が出たが、俺はもう気にしないことにした。恐らく過去の転生者が持ち込んだものだと思っているのだ。
「・・・私のボケがもう通用しないですか。私の思いは一方通行ですか」
「レティシアの思いはベクトル変換できるの!?・・・はっ!つい反応してしまった!!」
俺が自分のツッコミ体質に驚愕していると、レティシアはニヤニヤと勝ち誇った顔をして見ていた。
「・・・取り敢えず、早く行くよ!!」
俺は照れ隠しで、レティシアを引っ張って部屋を出るのだった。
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レティシアと別れた後、教室で、カストルとレイナに先日の密室投函された手紙のことを話した。
「密室投函・・・一体どういった手段で行ったのかな?」
「しかし、実際に行われているわけだから何かしらの方法があったはずだ」
その結果、二人は意外と本気で考え込んでいた。
「この謎は私が必ず解くよ!死んだじっちゃんの名に賭けて!」
「レイナ嬢。先代メルアード公爵はまだピンピンしてるはずだが・・・?」
「真実はいつも一つだった気がするし!」
「気がするだけなのか・・・」
・・・何故かレイナが有名探偵を意識している気がするが、気の所為だろう。気の所為だと思いたい。
「まあ、一番可能性があるとすれば、エリシア嬢とレティシア嬢の二人が授業で学院の方に居た時に、転移で持って来たとかだな」
「けど、転移魔法はほんの一握りの実力者しか使えないじゃん」
カストルの推測に、レイナが口を尖らせて反論する。しかし・・・。
「それは『人間』の枠組みだけで考えた場合だろう?レイナも知っているはずだ。転移魔法を簡単にも使える存在を」
「・・・あ、そうか」
レイナはそう呟いた。どうやら漸く犯人が分かったようだ。
「悪魔族が犯人か!」
「恐らくそうだろう。悪魔族はレティシア嬢、エリシア嬢に対して強く興味を持っているようだし、ありえない話ではないだろう」
「本来なら、ぶっちゃけ、ありえな〜い!って言うところなんだけどね」
「レイナ様。残念ですが、DANZENその可能性が高いです」
俺はレイナに向けて、そう言った。レイナは「思ったよりあっさり解決してつまんない」と言っていたが、つまったらつまったで困るので、こちらとしては万々歳なのだが。
「いや、まだ解決していない問題があるだろう?」
カストルが気を抜き始めた俺とレイナにそう言った。
「え!?まだ何かあったっけ!!わたし、気になります!!」
「ちょっ!レイナ嬢!?分かったから落ち着いてくれ!」
何処ぞの古典部の部長のように、好奇心の猛獣となってカストルに詰め寄るレイナ。あちらは豪農だが名家のお嬢様だし、レイナは公爵令嬢だ。関連性はあるのか・・・?
俺は少し的外れな考えをしながら、レイナに詰め寄られてしまったカストルをぼーっと眺めているのだった。
「エリシア嬢。見ていないで助けてくれないか!?」
「・・・?」
「いや、周囲を態とらしく見渡さないでくれ!!エリシア嬢はこのクラスに君だけだ!!」
「・・・!?」
「だから、『えっ、私!?』と言った風に驚かないでくれ!!」
ちょっとした俺のお巫山戯にも、カストルはちゃんとツッコミを入れてくれた。有り難い。
「だから、早くレイナ嬢を止めてくれ!!」
「わっちは気になるでおじゃるー!!」
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(暫くお待ち下さい)
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「はぁ・・・はぁ・・・」
猛獣となっていたレイナだったが、授業の開始と共に何とか落ち着きを取り戻してくれていた。
そして時は流れて昼休み。中庭に俺達は来ていた。
「えーっと、それで何の話だったっけ?密造図書の話だったっけ?」
「何の話ですかそれは・・・。密室投函の話です」
「ミッションダンカン?」
「密室投函です。何で発泡怪獣の計画について話をするんですか」
「失礼、噛みました」
「ワザとですよね」
「噛みまみた」
「ワザとではない!?」
「髪禿げた」
「中年男性に悲劇が起こりましたか・・・」
「阿弥陀下駄」
「仏の履物がどうしたんですか!?」
「描いた絵だ」
「どれがですか!?」
俺とレイナが何処かの吸血鬼もどきと蝸牛少女のような掛け合いをしていると、
「話が進まないから、そろそろやめてもらっていいか?」
「はーい」「分かりました」
ドクターストップならぬ、プリンスストップがかかった。
「それで、問題は『何の目的があって密室投函を行なったか』だ」
「マッシブ瓢箪?」
「誰が今がっしりした瓢箪の話をするんだ。・・・で、密室投函の目的なんだが・・・エリシア嬢。何か心当たりは?」
レイナをスルーして、カストル殿下は俺に質問してきた。しかし、
「さぁ・・・。あの手紙から分かったのは、ペットの田んぼが可愛いってだけでした」
「田んぼがペット・・・?」
どう考えても、それしか分からなかった。が、カストルとレイナは疑問符を浮かべていた。
「なぁ、エリシア嬢。ペットの田んぼとは一体なんだ?」
「そういう名前の虎です」
「凄いペットだな・・・」
俺の返答に、カストル殿下は疲れたように遠くを見るのだった。
結局、今日は密室投函の犯人の目的は不明のままだった。
お久しぶりです。が、また暫くは投稿できそうにありません。また、不定期投稿になります。
この話の続きを投稿できるのは、いつになる事か、作者の私も見通しが立ちません。まさに、神のみぞ知るの状態です。
神棚にお供えものをしたら、夢枕に立ってお告げをくださるのでしょうか?
まあ、我が家に神棚はありませんが。
では、また会える日まで、adiós!
ネタ解説
・◯ツゴロウ
有名人。解説不要!!
・一方通行
言わずと知れた『とある』お方。ベクトル変換は強い気がする。
・じっちゃんの名に賭けて!
日本が誇る若き探偵の台詞。死神と呼ばれる事も。
・真実はいつも一つ
日本が誇る若き探偵その2の台詞。死神とよく呼ばれる。あの蝶ネクタイが欲しい。
・ぶっちゃけ、ありえな〜い!
幼女と大きなお友達の好きなあのアニメの歌詞から。黒い方の口癖と混同視されたりも。
・DANZEN
上のと同じところから。こっちは曲名を意識したもの。・・・誤字じゃないですよ?
・わたし、気になります!!
古典部部長の有名な台詞。自分は折◯と◯反田のカップリングが良いと思います。
・「失礼、噛みました」「噛みまみた」
八◯寺の例のアレ。自分は刀の方も好き。




