第五話 一体この手紙は一体なんなんだ。
「・・・取り敢えず、中身を見てみるよ」
俺はレティシアから封筒を受け取ると、ペーパーナイフで封を切り、中の便箋を取り出した。
「えーっと・・・『拝啓、この手紙読んでいる貴女は、レティシア様でしょうか?』」
「違いますね」
俺が便箋に書かれた最初の文を口に出して読むと、レティシアが律儀に答えた。
どうやらこの手紙はレティシア宛だったようなので、俺はすぐさま手渡した。
「えーっと・・・『拝啓、この手紙読んでいる貴女は、レティシア様でしょうか?』」
「音読するにしても、そこからするの?」
思わずツッコミを入れてしまうが、レティシアはそれを無視して続ける。
「『もし、レティシア様では無い場合は、すぐさま読むのをやめて、レティシア様にお渡し下さい。さもなくば・・・』」
「さもなくば・・・?」
もしや呪われるとかだろうか・・・?
俺は少し不安になりつつ、レティシアの言葉の続きを待つと、
「『泣きます』」
「いや、泣くだけかよ!?」
意外としょうもなかった。密室投函するほどの手練れなら、そこは『呪う』とか書けよ!・・・って、なんで俺は謎の手紙にダメ出ししてるのだろうか。
俺が自分が分からなくなってる間にもレティシアは手紙を読むのを続ける。
「『私のペットのライスフェルトちゃんが』」
「しかもペットかよ!?」
何でここで、俺たちの知らないお前のペットを取り上げるんだよ投函主!?
「『因みに、うちのライスフェルトちゃんはとっても可愛いトラ柄の猫です』」
「猫になんて名前をつけてんだよ!?と言うか、ライスフェルトって、ドイツ語で田んぼじゃなかったっけ!?」
「『品種はジェノサイダーサーベルタイガーと言います』」
「それ猫じゃなくて、Aランクのガチやばい魔物じゃねぇか!」
ここまで読んで・・・と言うか、レティシアが読むのを聞いて、一つ気付いたことがある。
この手紙書いた奴、実力はあるのにかなり残念な奴だ。と。
「・・・エリシア」
「ん、どうした?手紙の続きは読まないのか?」
ふと呼びかけられたので首を傾げて尋ねると、レティシアは困ったような顔で俺の名前を呼んだ理由を答えた。
「いえ、この後に書かれてるのがこのライスフェルトちゃん(種族:ジェノサイダーサーベルタイガー)の推しなんですよね・・・」
「・・・うん。読まなくていいぞ」
差出人が謎の手紙が、差出人の目的どころか、内容さえも謎の手紙になった瞬間だった。
補足。
魔物のランクは下からF、E、D、C、B、A、Sと有ります。
Sより上は種では無く、それぞれのオンリーワンな魔物のみで、SS、もしくはSSSなどと呼ばれています。SSとSSSの二つは一般的に二つ含めてDisasterクラスや災害級などと呼ばれたりします。
因みにジェヴォーダンは個体ですが、Sに該当する魔物です。




