第三話 日常
暫く話していると始業のチャイムが鳴ったので、俺たちはそれぞれの席に戻り、一時限目の数学の準備をするのだった。
「・・・それで、この式の解は2√2となりますね。・・・と、今回はここまで。皆さん、しっかりと復習してくださいね」
授業が終わり、数学教師のアティカ先生は手早く教卓の上を片付け、教室を出て行った。
「はー・・・。疲れたねぇ」
「そう言いながらもらレイナはスラスラと解けていたじゃないか」
「カストル殿下もねぇ」
俺の席の隣のレイナがうーん、と伸びをしていると、俺の前の席にいたカストル殿下がツッコんだ。
「しかし、エリシアは相変わらず数学が得意なようだな。まさかあの数式もスラスラと解けるとはな・・・」
「私や殿下も少し詰まったりしてたからねー」
そう言ってレイナとカストルは俺を褒めてきたが少しばかり複雑な気分だ。
この世界の数学は、・・・と言うか、殆どの学問は過去の転生者たちの仕業で歴史や地理、魔法など以外は地球のものと似通っているのだ。
俺は前世で高校生だったのと、エクリシオンの仕業か、今世では記憶力が凄まじい程に良いため、苦もなく前世の記憶も引き出せるのだ。
だから、数学が出来るのはある種の知識チートなので、俺は素直に喜べないでいたのだ。
しかし、そんな俺の内心は『ポーカーフェイス』スキルが隠してくれているのでレイナとカストルには気付かれなかった。
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Sideリーナシア
「はぁ・・・」
今日の授業も終わり、私は今、寮内にある自室でベッドに寝転んでいた。
「こんなに探しているのに、なんで見つからないの?本当にどこにいるのりゅー君?」
私は今だに見つけられない前世からの想い人であるりゅー君・・・山本竜人が見つからない事へ軽い愚痴を零し、枕へと顔を埋めた。
「この『赤い糸SP』って本当に効果あるのかな?・・・いや、実際にこの学舎内で何度も反応してるんだ。絶対にこの学院にりゅー君はいる」
私は一度軽く頰を叩いて気合いを入れ直すのだった。
今回は少し短いです。




