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第五話 別に本は関係ない。

「ボンヌ・レクチュール」とは、フランス語で「よい読書を」との事だが、タイトルの通り、別に本は関係ない。


 皆さん、ボンヌ・レクチュ〜ル!私はエリシア。

 突然ですが私は今、大ピンチ中なのです。

 本を買いに町へと来ていた私は、突如路地から伸びて来た手に捕まり、袋詰めにされながら何処かへと運ばれています。

 これからどうなっちゃうの〜!!


 ・・・自分でやっててだけど、巫山戯過ぎたわ。てか、運び方が雑!痛い痛い!




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「大人しくしとけよ」


 暫く運ばれたかと思ったら、ポイっと乱暴に地べたに落とされた。・・・酷い。


ギィ・・・ガチャンッ


 何か金属製の物が音を立てた。ゴソゴソと体を動かし袋から顔を出すと、俺はどうやら牢屋のようなところに入れられているようだった。


「あの・・・大丈夫?」

「ふぇ・・・?」


 背後から聞こえて来た少し高い声に振り向くと、そこには同じぐらいの歳の子や、それよりも年下の子供達がいた。

 牢屋の中に怯えたように固まっている少年少女達、みんな一様に薄汚れているし服もボロボロ。


(この状況・・・多分、と言うか十中八九人身売買の組織だろこれ)


 どうやら俺は、また事件に巻き込まれたようです。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 数時間経ったが、俺はまだ牢屋の中に居た。

 俺一人ならすぐにでも逃げられるが、ここには子供達がいる。それに、今逃げ出したりなんかしたら、ここの悪党どもが逃げてしまうだろう。

 そうなったら、アイツらは別の場所でまた、同じ事をするだろう。何人か捕まっても、新しい仲間を作って行う。それが悪党だ。偏見かもしれないが、俺はそう思っている。


(というか、お忍び用に着たこの平民の服の所為で、貴族だと思われなかったのかな?)


 俺はそんな事を考察してみるが、別にそれは今はどうでもいい。

 取り敢えず・・・。


「えーっと・・・」


ビクゥッ!!


 牢屋の隅で固まっている子達と、コミュニケーションを取らなくてはならないのだが、俺は見事に警戒されていた。


(どうすっかなこれ・・・)


 俺は頰を人差し指で掻きながら、頭を悩ませるのだった。

 ・・・取り敢えず、クロに連絡しとこ。うん。





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





Sideクロ


《ほうわ!!》


 ソファで寝そべっていたクロが突然跳ね起きた。それを冷めた目で見るのは、この部屋の主人に使える吸血鬼メイド、レティシアだ。


「水蒸気量がどうしたんですか?」

《いや、そっちの飽和じゃ無いっスよ・・・じゃなくて!今、主人殿からビビっと来たんスよ!》

「ああ、前にエリシア様が言っていたニュータイプってやつですか?」

《ただの念話っスよ!?》


 エリシアが居ない為、やる気の起きないレティシアの投げやりな返しにクロは律儀にツッコむ。


《今来たのは、『しもしもー?私エリシア。誘拐されちった☆悪いけど殿下達に連絡頼みマンモス!』っていう、危機感の全く無い連絡っスよ!?》


 クロが叫ぶと、レティシアの動きが止まった。


「・・・へ?エリシア様が誘拐された?」

《・・・そうっス》

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》


 暫く無言の時間が続くと、レティシアは黒に顔を近づけた。


「大変じゃ無いの!?」

《だからそう言ってるっスよ!!》


 互いに叫ぶと、レティシアは指を鳴らす。すると、レティシア自身の影がレティシアを包んだ。

 そして、その影が消えると、そこにはメイド服を着こなしたレティシアの姿があった。

 これは、レティシアが新しく作った影魔法を用いた早着替えだ。


「急いで!」

《連絡に!》

「行く(わよ)《っスよ》!!」


 そうして、一人と一匹の従者は主人からの連絡を伝えに部屋を出るのだった。

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