第四話 それは放課後の出来事でした・・・
放課後、新しい魔導書を買おうと思い立ち、街の大通りへとやって来ていた。
「と言ってもそこまで時間はありませんし、急いで用事を終わらせましょう」
俺は呟くと、目的の魔道具取扱店へと向かうのだった。
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数時間後、俺は魔道具取扱店の店先で、先程買ったばかりの本を抱えて立っていた。
「ふふふふふ・・・。まさか『ネタ魔導書』と呼ばれるものを手に入れてしまうとは。とても面白そうですね」
俺は両手で抱えた本を早く読みたいとワクワクしながら、学院の寮へと向けて歩き始めた。
本来なら馬車も出そうと思えば出せるが、正直言って馬車で向かって畏まられても面倒臭い。それなら、少し高めの服を着て歩きならば、少し裕福な平民と勘違いしてもらえるのだ。
「伯爵令嬢というのも楽じゃないなぁ」
「まぁ、最近は馴染んだけど」と、転生したての頃の事を振り返りつつ、歩いていると、大通りの横から伸びている路地から伸ばされた手に捕まった。
「・・・へ?」
突然の事に思わず間抜けな声が出る。咄嗟に両手に抱えいた本は『無限収納』に仕舞ったが、俺は路地へと引き摺り込まれたのだった。
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Sideレティシア
「・・・それは本当ですか?」
《本当っスよー》
学院の寮にあるエリシアの部屋にて、吸血鬼メイドのレティシアとこの部屋の主人の少女、エリシアの従魔であるダークネスウルフのクロが話していた。
・・・側から見たら、レティシアが黒い子犬に一人ブツブツと話しかけているという頭を心配されそうな光景だが。当人達は気にも止めていなかった。
「何で・・・、何で・・・っ!!」
クロから聞かされた事実にふるふると拳を握り締め、俯くレティシア。それを呆れた目で見つめるクロ。
「何で私を置いて一人でお出かけしてるんです、エリシア様ー!!」
《いや、主人殿も人間だから一人で何かしたい時ってあるっスよ。だからオレも一匹、残ってるんスよ》
取り乱すレティシアとは対照的に落ち着いた雰囲気のクロは、床に土下座のような体勢でしゃがみ込み、ドンドンッと床を叩くレティシアのその姿に《ハァ・・・》と溜息を吐くのだった。




