第十六話 冒険者ギルドランクアップ!
メリークリスマス!
冒険者ギルドアストリア王国王都ガリアード支部、その奥にある特別応接室。俺はその部屋へとキャサリンに連れてこられていた。
「それで、ギルドランクを上げるからギルドカードを預からせてもらっていいかしら?」
「はい」
俺は素直に頷くと、懐のポケットから取り出すように見せて、無限収納から取り出して手渡した。
「・・・うん、確かに預かったわ。じゃあ、暫く待っててねん☆」
キランッと星の飛びそうなウインクを一つすると、キャサリンは部屋から出て行った。
そこで、暇つぶしをしようと、以前見つけた『無限収納内の本をメニューを利用して取り出さずにウインドウで見る』という事をすることにした。
イメージはまさにパーソナルコンピューターのファイルを開くイメージそのもの。正直、かなり便利だった。
ちなみに今読んでいるものは『パルテノンの百合』という、何処かで聞いた事のあるような有名作品のパクリだった。これも多分かつての転生者の遺産の一つなのだろう。
他にも、『アナグマカスラル』や『フラメンコの犬』などがあった。もうツッコム気にもならない程、多くの転生者が自由にやったようだった。
と、変な方に思考が逸れ始めた頃に、キャサリンが戻って来た。
「お待たせ〜♡ギルドカードの更新、済んだわよ!これでエリシアちゃんも晴れて一人前のBランクの冒険者よ!」
「はい、ありが・・・Bランク?」
お礼を言おうとした時、キャサリンが言った台詞に聞き逃せないものがあった気がした。
「もー、蟻がじゃなくて、エリシアちゃんがBランクよ」
「いや、いやいやいや!そこじゃなくて、何でBランクなんですか!?」
俺は少し声を荒げてキャサリンに詰め寄った。淑女にあるまじき行為だが、そんなものを気にしている余裕がない。
「ごめんなさいね?私も頑張ったけど、Bランクまでが限界だったのよ」
「いえ、そうではなく!何故、最底辺のFランクから一気にBランクまで上がってるんですか!?」
すまなそうに言うキャサリンに対し、つい、高級そうな机をバンバンと叩いてしまった。が、机は頑丈なようでビクともしていなかった。
「何でって・・・ここのギルドマスターもエリシアちゃんが悪魔討伐をやったって事は知ってたから、実力の方は疑われなかったのよ。・・・けどね、ギルドへの貢献度が低いから、これ以上は無理って言われちゃってね」
またもやすまなそうに言うキャサリン。俺はそれに対して、「いや、十分ぐらいですよ」と答えたのだった。
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「はー・・・疲れた」
寮に戻り、俺はベッドの上で思いっきり横になって呟いた。
《お疲れ様っス、主人殿》
「ああうん。お疲れー」
トコトコと近寄るチビクロ。その姿を眺めて、ふと思った。
(・・・そういや、もうクロとも7年もの長い付き合いになるんだよな・・・)
「・・・いつもありがとうな、クロ」
つい、ポロリと口から出た言葉はクロの耳にも届いたようで、クロはピタッと驚いたように動きを止めた。
《あ・・・》
「あ?」
俯いたクロが震えながら何かを呟いた。少し首を傾げて続きを待つと、バッ!と勢いよく顔を上げたクロが叫んだ。
《主人殿が壊れたっス〜〜〜!!!》
「失礼な従魔だなおい!」
思わず俺も言い返し、しゅばっ!とクロを捕まえるとわしゃわしゃと撫で回すお仕置きを実行するのだった。
そして、俺が満足するまでわしゃわしゃした結果、
《や、やり過ぎっスよ、主人殿・・・》
「・・・ごめん」
疲労困憊でグダァ・・・としたクロに頭を下げて謝る俺と言う光景が完成していたのだった。
黒い子犬に頭を下げて謝る銀髪美少女・・・シュールな光景ですな。




