第十四話 転生者アルシノ・フォン・ゴルゴーレス
「ちょ、ちょっと待って下さい!?」
俺に引っ張られたエレンシアさんを無視し、俺は『聞き耳』のスキルを使用した。
『聞きますけど貴方、日本人ですか?』
『な、なんで知ってるんですか!?』
よし、バッチリと聞こえている。・・・しかし、ゴルゴーレス君よ。君は驚き過ぎじゃないかね?
「あ、あのちょっと・・・?」
『知ってるも何も・・・私も転生者、元日本人だからですよ』
『な・・・っ!?』
『・・・驚き過ぎじゃないですか?』
リーナシアもツッコんだ。やっぱり、ゴルゴーレス君は驚き過ぎだよね。
「お、おーい・・・」
しかし、何故三人目の転生者についてエクリシオンは言及しなかったのか?それが気になるな・・・。
「・・・ぐすっ」
「・・・って、あっ!?ご、ごめんなさい!!」
背後から涙声が聞こえ振り向き、エレンシアさんを放置していた事に気が付き、慌てて慰めるのだった。
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Sideリーナシア
エリシアとエレンシアを追い出し、私は医務室で転生者と判明したゴルゴーレス侯爵家子息と話していた。
「それで、貴方の前世の名前は?」
「あ、はい!!光。光井光です」
「光井光・・・」
ゴルゴーレス侯爵子息・・・光井君の名前を聞き、私は予想はしていたが落胆した。
(やっぱり・・・、りゅー君じゃなかった)
「はぁ・・・」と、分かっていてもつい、溜息を吐いてしまう。
「あ、なんかすみません・・・」
私が零した溜息を拾い、光井君は申し訳無さそうに言う。私はそれに対し、「気にしないで下さい」とだけ、答えた。
「それで、貴方は天使に会いましたか?」
「はい?」
光井君は一瞬「何言ってんだこいつ」と言ったような目で私を見た。それに対し、キッ!と睨むと、「あ、すいません」と直ぐにへし折れた。・・・見た目はかなり厳ついのに・・・。
「冗談でも何でもなく、私は転生をする時に、天使を名乗る男に会いました」
「ふぇ!?」
「それが貴方にはなかったか、を聞いたのですが・・・。その様子だと無いようですね」
私の言葉にコクリと頷く光井君。その姿を見ながら、内心で呟いた。
(もしかして、転生には天使の関与しない場合もあるのでしょうか・・・?ならば、他の転生者も居るのでしょうか?)
しかし、この場で考えても何も答えは出ない。取り敢えず私は、闇魔法で『アルシノ・フォン・ゴルゴーレス』の記憶を引き出し、頭に植え付けた。
「ほ、本当に貴族だったんですね、僕・・・」
力なく笑う光井君は戸惑っているようだった。




