第十三話 三人目の転生者
「こ、ここですね・・・」
結局リーナシアとは気不味いままで、医務室に辿り着いた。
「「失礼します」」
俺とリーナシアは揃って医務室へと入った。そこには、
銀髪の少女に抱きつかれていたゴルゴーレス侯爵子息が居た。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
まさかの光景に俺とリーナシア、そして俺達と視線が合ったゴルゴーレス侯爵子息の動きが止まった。
「どうしたの、アルシ・・・ノ・・・?」
銀髪美少女がゴルゴーレス侯爵子息のよ視線の先を辿り、俺たちの姿を認めた。
「ふぇ、ふぇぇぇぇえっ!?」
「痛っ!?」
そして、俺達の姿を見た銀髪美少女は、奇声を上げつつ慌ててゴルゴーレス君を突き飛ばして離れた。その時、ゴルゴーレス君は後頭部を打った、
「あっ!ご、ごめん。大丈夫?」
「う、うん・・・。大丈夫」
ゴルゴーレス君は後頭部を摩りながら起き上がり、銀髪美少女に平気である事を伝えた。
「はしたない所をお見せしてしまい申し訳ございませんでした・・・」
そう言ってテイルネスト伯爵の長女、エレンシア・フォン・テイルネストと名乗った銀髪美少女は恥ずかしそうに頭を下げた。
「いえ、別に興味はありませんので」
リーナシアは冷たくそう言うと、エレンシアさんから視線を外した。
「とにかく、今から治療を始めますのでエレンシアさんは静かにしていてください」
「・・・はい」
ファルミーユ帝国の皇女に言われると一介の伯爵令嬢でしかないエレンシアは表情を暗くさせて頷いた。
「それで、どのぐらい記憶が無いんですか?」
「えーっと・・・」
リーナシアの質問に言い淀むアルシノ君。黙ったままなのでリーナシアが目に見えてイライラしていた。
「あ、あのっ!」
「・・・何ですか?」
突然声を上げたエレンシアさんを、リーナシアは凍てつくように冷たい視線を向けた。
「あ、えっと、その・・・。アルシノは、なんか、『いせかいきたー』って言ってました」
リーナシアの冷たい目に気圧され、エレンシアは少しばかり逃げそうになりながらも、答えた。
「異世界・・・」
「嘘・・・」
その言葉に俺は表面上は取り繕いながらも、驚愕していた。
エクリシオンから聞いていた転生者は、俺以外には莉奈と連司の二人だけだ。そして、莉奈は此処にいるリーナシアに、連司はエクリシオンの話によると、デゼアの森で転生したらしい。
つまり彼は、俺の知らない三人目の転生者という事だ。
「少し聞きたい事が出来ました。エレンシアさんとエリシアさんは至急、部屋を出て行ってください」
「分かりました」
「えっ、ちょっ!?」
俺は突然の事に戸惑うエレンシアさんを引っ張って、医務室から退出するのだった。




