第九話 合同訓練③ 訓練開始
相手が決まり、俺は早速相手役のアルメルさんと向かい合った。
因みに、レイナはゴルゴーレス侯爵家の三男が、カストル殿下はポルックス殿下が相手らしい。
「それでは、早速行かせて貰っていいですか?」
「は、はいっ!どうぞ!」
俺が尋ねると、アルメルさんは少し緊張した様子で頷いて了承した。俺はそれに頷き返すと、訓練用に刃を潰された剣を構えると、『加速』のスキルを用いて、俺は助走なしに最高速度に達した。
「ふぇっ・・・!?」
突如消えた俺に、アルメルさんは戸惑い、声を零し、俺に足を払われて転んだ。
「あ痛っ」
尻餅をついたアルメルさんの頰に、剣の腹の部分を軽く付けた。
「・・・終わりですね」
「はい、負けました・・・」
ションボリと呟くアルメルさんを見ながら、俺は剣を戻し、アルメルさんへと手を伸ばした。
アルメルさんは、最初は戸惑っていたようだけど、俺の手を握った。
俺はアルメルさんの手を握り返すと『剛力』を少しだけ使い、起き上がらせた。
「やっぱり強いですね・・・」
「一応、冒険者の末端に名を連ねさせて貰っていますからね」
俺は少し微笑みながらアルメルさんに答えた。俺の答えにアルメルさんは「違うんだけどな・・・」と小さく零した。何が違うのだろうか?
「あ、エリシア様。レイナ様も強いんですね」
少し離れた所でゴルゴーレス侯爵の三男坊を魔法で吹き飛ばしたレイナの姿があった。
「・・・何してるんですか。レイナ様ったら・・・」
俺は額に手を当てて呟いた。何故、レイナは武術での戦闘の訓練なのに何故魔法を使うのか。
『レイナちゃんは反則負けねぇ〜』
『えぇーっ!!何でぇ〜!!』
『何でぇ〜って、これ、一応武術戦闘の訓練よ?』
『・・・あっ!』
向こう側でもキャサリンがレイナに注意していた。
レイナも思い出したのか、頭を恥ずかしそうに掻いているのが遠目でも分かった。
「本来、上級の魔法って威力の調節が難しいから、近接戦闘に向かないはずなんだけどなぁ・・・。流石は天才魔法使い」
俺は改めて、レイナの規格外さを目の当たりにして、驚嘆の言葉を零すのだった。
「あの・・・。最年少による悪魔殺しを成し遂げたエリシア様が言いますか?」
俺の言葉を聞いたアルメルさんは、少し遠慮がちに、しかし呆れたように言った。つい、俺は目を逸らしたのだった。




