第三話 神力
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学園に戻ってから数日が経ったが、俺の不安とは裏腹に、特に何も起こりそうではなかった。
「心配しすぎたかな」
寮の自室で呟くと、頭の中に声が聞こえた。
(もしもーし、聞こえますかー?)
「エリシュオンか?」
(エクリシオンだよ!!……確かこんな芸風の芸人さんがいたような)
「いや、知らねぇよ。で、一体何のようだ?」
俺はペンダントを取り出して耳に当てると、エクリシオンに尋ねた。
(いえ、最近遊びに来てくれないので連絡してみました)
「そんな頻繁に神界には行けないんじゃなかったか?」
俺は首を傾げつつ尋ねた。確か以前にそう聞いた気がしたのだ。
(あー、それはエリシアさんの称号ですよ)
「俺の称号?」
俺は普段は閉じている『メニュー』を開くと、ステータスの称号欄を見た。すると、そこには神界に関係ありそうなものがいくつかあった。
「もしかして、この『天使の友』とか『剣神の友』とかか?」
(ええ、そうですよ。神の友系の称号があると神界にあるその神の領域ならフリーパスになるんですよ)
「つまり、俺はエクリシオンとシエラの領域なら自由に行き来できるって事か?」
(はい。なのでいつでも来て下さい。ボルパマルファシエラ様もいつ来るのかと待ち侘びてそわそわと……って、何をするんですか!?ボルパマルファシエラ様!?ちょ、やめっ!ウワァァアッ!)
「ど、どうした!?」
突然ペンダントからエクリシオンの悲鳴が響いてきた為、思わず耳を離してしまった。
慌てて呼び掛けるがそれっきり神託は切れてしまった。
俺は神界で何があったのか気になり、神界へ意識を飛ばすのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……何だこれ」
神界に着き、目を開くと、そこにはシエラにアイアンクローで締め上げられたエクリシオンの姿があった。
「えーっと……シエラ?」
「ふぇ!?え、エリシア!?」
戸惑いながらも声を掛けるとシエラは驚いてこちらを振り向いた。その際、エクリシオンは「クペッ」と変な声を残して投げ飛ばされた。
「何やってたんだ?」
「い、いや!!ただ、要らない事を喋ろうとしていたエクリシオンを黙らせていただけだよ!」
「あっ、はい」
「アッガイ」
やはり復活の早いエクリシオンは、何事も無かったかのようにムクリと起き上がると俺の台詞に被せてボケてきた。
「「少しお前(貴方)は黙ってろ(いなさい)!」」
「ボキャブラリッ!?」
エクリシオンは俺とシエラのツッコミで鼻血を散らしながら吹き飛んでいった。
飛んで行くときの悲鳴からエクリシオンに余裕がある事は感じ取れたので俺とシエラは無視する事にした。
「それで、エクリシオンから聞いたけど、シエラは俺が神界に来る事を待ち侘びていたって……」
「ま、まぁ……。うん。せっかく友達になれたのにあれ以来会っていないし」
恥ずかしげに前にあった時より伸びた紫髪を弄るシエラ。その姿は失礼だが可愛らしくて……って、
「髪が伸びてる?」
「あ、神力で少し伸ばしてみたんだ」
「神力ってそんな事にも使えるんだ」
俺は感心して、「へぇー」と呟くと俺は自分の長く艶やかな銀髪を弄った。
「エリシアももっと成長すればもしかしたら弱いけれど神力使えるかもね?」
「マジかー」
冗談めかして言うシエラの言葉に俺は何とも言えない笑みを浮かべたのだった。




