第二十六話 封印
「『ラースインフェルノ』!」
突然雰囲気の変わったレティシアは、見たことの無い魔法をジェヴォーダンへと向けて放った。
《グゥオオオオオオオオオッ!?!?》
レティシアの放った魔法は黒と赤の混じった禍々しい焔の槍だった。焔の槍はジェヴォーダンの肉体へと突き刺さり、その内側からジェヴォーダンを焼いた。
「ちょっ!?何あの魔法!?私知らないんだけど!」
レイナはその光景に驚愕し、ブルームとグレンも思わず攻撃の手を止めた。
そんな中、エリシアだけはその力に心当たりがあった。
(あれは…魔王の力?)
そう、レティシアが持つ称号と天魔能力。それが開花したのだとしたら……
(いや、今はそれよりもジェヴォーダンの封印だ)
エリシアは軽く首を振ると、改めてジェヴォーダンを睨み、封印魔法の詠唱を続けるのだった。
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「詠唱完了しました!皆さん、離れて下さい!」
詠唱の最期の句を詠み、エリシアはジェヴォーダンを足止めしていた仲間達に知らせた。
四人と一匹はその知らせを受けてすぐにエリシアの魔法の射線上から離脱した。
「『フォースシール』!!!」
かつてジェヴォーダンを封じた聖女の魔法。それが時を超え、その時代の聖女の口より紡がれた。
四方にに光の線で描かれた魔法陣。そして魔法陣からジェヴォーダンへと放たれる光の鎖。
鎖はジェヴォーダンへと絡みつき、縛り、その行動を阻害する。
《グルルルゥオオオオオオオオオンッ!!》
封印の縛鎖から逃れようと踠くジェヴォーダンだが、鎖は一切緩まず、決して流そうとはしなかった。
その間にも四方に現れた魔法陣の間を新たな光の線が走り、四つの魔法陣を結び、一つの大きな魔法陣へとその姿を変貌させた。
一つの大きな魔法陣へと変わった『フォースシール』の魔法陣から神々しい光が溢れ、ジェヴォーダンの身体を包む。そして、ズプズプとジェヴォーダンの身体は地面の中へ沈み込んで行く。
《グゥオオオオオオオオオ…………》
完全に飲み込まれるまで、ジェヴォーダンは叫び続けた。まるで断末魔の如く。
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「……終わった、のか?」
「……多分」
ジェヴォーダンが封印された後の場所を呆然と眺めながら、グレンが呟いた。それに対して、彼の隣にいた幼馴染のブルームがコクリと頷いた。
「いよっ………………しゃああああああああああっ!!!!!!!!!!!」
「「やったぁぁぁぁぁぁあっ!!!」」
《やれやれっスねぇ》
「ジェヴォーダンに勝利した」。その事実を送れて理解した全員は、飛び上がり、手を叩き、抱きしめ合いながら、喜び合った。
そんな中、エリシアは少し離れたところに立っていたレティシアへと近付いた。
「レティシア」
「……エリシア様」
振り向いたレティシアは、エリシアを見て気まずげに視線を逸らした。
「……魔王になったんだな」
「……はい」
エリシアの言葉にレティシアは素直に頷いた。エリシアははぁ、と溜息を少し吐くと、口を開いた。
「魔王になったって事は、更に悪魔達に狙われる事となる。それは分かってるんだよね?」
「……はい。エリシア様の力になりたいんです」
「……………」
無言になったエリシアを見て、怒られると思い、レティシアはその身を縮こまらせた。
「……俺の為、か。なら、頼りにさせてもらうよ?レティシア」
「っ!!……はいっ!!」
エリシアの言葉にレティシアは嬉しそうに返事をした。その様子をエリシアは少し微笑ましげに見つめるのだった。




