第二十五話 憤怒の魔王
「それで、あいつを封印するにはどうすれば良いんだ!?」
「以前、ジェヴォーダンを封じた時は大量の魔力で大地そのものに封じる力技で封印しています」
「なら今度もそれって事だな!」
「はい。しかし、封印には時間がかかります」
「それを私達が足止めって事だね」
グレンが少し乱暴な口調で尋ねてきた。俺はグレンの質問に丁寧に答えると、レイナもその隣で頷いた。
「よろしくお願いします。皆さん」
「おう!」
「もちろん!」
「ええ!」
「は、はい!」
俺の言葉に言葉は違うが、皆同じ意思を持って力強く頷いた。
俺も四人に頷き返すと、封印魔法『フォースシール』の詠唱を始めた。
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「『投擲』!」
「『ウォーターバレット』!」
「『インフェルノジャベリン』!」
「『ダークネストライデント』」
四人はそれぞれのスキルを使い、遠距離から攻撃を行い時間稼ぎをしていた。が、
《ガアアアアアアアアアッ!!!!》
四人の魔法はジェヴォーダンの吐く黒炎に掻き消された。
「おい、これ無理じゃねぇか!?」
「正直言うと、レイナ様とレティシアさんの高位魔法のお陰でなんとか打ち消せてる訳だから、僕たち逆に足手纏いっぽいんだけど」
「弱気なこと言うな!」
グレンとブルームがそう言い合っていると、
「っ!?危ない!!」
「「へっ?」」
ジェヴォーダンが跳ね飛ばした巨大な岩が二人を押しつぶそうとしていた。
《グルゥオオンッ!》
しかし、二人は岩に押し潰されることはなかった。
《大丈夫っスか!?皆さん!》
「クロッ!?」
クロが現れたのだ。
「今迄何をしていたんですか」
《実はあのデカイ魔獣の影響で森から溢れそうになっていた周囲の魔物狩りをしていたんスよ》
レティシアの質問にクロは胸を張って答えた。そこに、
「話してないで早く攻撃して!」
グレンとブルーム、レティシアとクロが話していた間、一人だけで高位魔法を連発してジェヴォーダンを足止めしていたレイナが我慢の限界と怒鳴った。それで慌てて三人と一匹はジェヴォーダンの足止めに戻ったのだった。
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(このままではジリ貧ですね……っ)
レティシアはそう胸中で呟いた。確かにジェヴォーダンにはレイナとレティシア、二人の高位魔法は通用しているが、それでもまだ火力が足りない。よってレティシは今、自身の不甲斐なさに猛烈にイラついていた。
だからだろう。その声が頭に響いたのは。
《力が欲しいか?》
「っ!?誰!」
《私はお前の中に眠る力だ。どうだ?力が欲しいか?》
「……ええ、欲しいに決まってるじゃないですか」
突然響いてきた声に最初はレティシアは警戒していたが、いつのまにか、その声を受け入れていた。
《もしそれが、血塗られた道だとしても?》
「それでも構わない!その先に待っているのが私の破滅だとしても、私を救ってくれたあの方の力になれるなら!」
レティシアはそう叫び、その力を受け入れた。……受け入れてしまった。
《良かろう!ならばこれより汝は候補ではなく、真の魔王となった!》
ピロリン!称号『次期魔王[憤怒]』が称号『魔王』に変化しました。これにより個体名レティシア・アルフィータは特権『憤怒の魔王』を行使可能となります。
この瞬間、新たな魔王が誕生したのだった。
舞い戻りました。布袋です。
今更ですが、布袋は《ほてい》読みではなく、《ぬのぶくろ》読みです。




