第二十三話 蘇る漆黒の巨狼
ズズゥン……ズズゥン……
少しずつ近づいて来る足音、森から慌てて逃げてくる教師や生徒、野生動物達。
そして、それはその姿を現した。
《グオオオオオオオオオオオオンッ!!》
漆黒の巨狼。
やはり、先程幻視したのはアイツだ。
「何で?あの時封印したはずなのに……」
口から無意識に言葉が零れた。
「エリシア?」
それを周りが混乱の中、レイナは的確に拾った。
「エリシア、あの魔獣のことを知ってるの!?」
「……分かりません。けど、何故か見たことがあるような気がして……」
俺はレイナからの質問に、少しずつ痛む頭を抑えながら答えた。何だこの記憶は……。一体誰の……。
「うわぁぁぁぁぁぁ!?」
その時、一人の生徒が恐怖からか剣を投げつけた。しかし、その剣は刺さらない。だが、かの漆黒の巨狼の気を引いてしまったらしく、こちらをグルリと見た。
「ジェヴォーダン……」
「は!?ジェヴォーダンって何だよ!」
ふとそちらを向くと、ブルームがそうポツリと呟き、グレンは苛立った様子で聞き返していた。
「ジェヴォーダンは〝英雄フォーリンドの物語〟に出て来る、まだ幼い英雄フォーリンドの故郷を滅ぼした伝説の魔獣だよ!その数年後、英雄フォーリンドは仲間の神官とともに立ち向かい、封印したと言われてるけど、その封印の地は不明なんだ。……ってそうか!この森が」
「その封印の地って事かよ!」
「ちょっと待って!なら、再封印すれば!」
活路を見出したのか、喜色を浮かべたレイナに対し、ブルームは首を振る。
「無理だよ。封印の方法は記されてなかったし、その仲間の神官は『聖女』の称号を持つ高位の存在だったんだから」
「そんな……!?」
ブルームの否定に、一変してショックを受けたレイナ。だが、俺はそれどころじゃなかった。
「……そうだ、ジェヴォーダン。あの時大地に巨大な封印を……」
「え?……って、エリシア様!?」
俺は呼びかける声も無視して、とにかくジェヴォーダンへと向けて走った。
あの時と同じで……。
お久しぶりです。最近はpixivの方で投稿していたので、間が空きました。




