第二十二話 轟く咆哮
その後、オリエンテーリングで出題される問題は一般座学で習ったようなものばかりで、俺とブルーム、そして実は座学の成績でもトップクラスのレイナの三人で解いて行った。
最初グレンは、「エリシアとブルームは分かるけど、何でレイナ様も分かるんだ!?」と言って叩かれていた。所謂『雉も鳴かずば撃たれまい』だ。
「しっかし、この問題って何だ?」
グレンのぼやきに俺達も同じく頭をひねった。その問題というのが、『共和国議会委員とクローチに共通する事は?』というものだ。
「共和国議会委員とクローチ・・・ねぇ」
「あ、あれじゃない?どっちも茶色い!・・・とか?」
「いや、議会委員は茶色だけではないですよ?」
「言ってみただけだもん!」
グレンとブルーム、レイナはわいわいと話し合っている中、俺とレティシアは二人で深く考えていた。
「レティシアはこの問題、どう考える?」
「おそらく、異世界の勇者様が伝えた〝とんち問題〟というものかと」
俺の質問にレティシアは問題の書かれた金属板を見ながらそう答えた。
「・・・なら、多分だけど分かったかもしれない」
「「「「えっ!?」」」」
俺の呟きにレティシアどころか、やいのやいの言い合っていたレイナ達も反応した。
「え、何々!エリシアは何かわかったの!?」
「お、おそらくですが・・・」
詰め寄ってくるレイナに対して、俺は押され気味にそう答えた。
「じゃあ、じゃあ!答えは何!?」
「私は〝何方も新聞でよく叩かれる〟だと思うのですが」
俺の言葉にレティシアが「あ、そういう事ですか」と得心がいったように呟いた。
「確かに、共和国議会委員の方々は何か小さくても失態を犯してしまうとよく大げさに責め立てられてますね」
「ああ、成る程」
「ふむふむ、納得!」
「え?何々?どういう事?それが何か関係あるのか?」
レティシアの説明にブルームとレイナは理解したらしく頷く中、グレンだけは首を傾げた。
「・・・もうこのバカは放置でいいんじゃない?」
「なっ!?俺はバカじゃねぇ!」
「じゃあ何なのよ」
「猪男だ!」
レイナの辛辣な言葉に対して、胸を張ってどこかズレた返答をするグレン。彼の幼馴染のブルームも、頭を痛そうに抑えていた。
「・・・じゃあ、全部書き終わりましたし戻りましょう」
俺は少し気まずい空気の中、絞り出すかのように何とか、そう言うのだった。
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「・・・また、お前たちの班が一番乗りか」
野営地に戻って解答用紙を見せた俺達に対して、先生は驚いたようにそう言った。
「へへへ、それほどでも無いぜ!」
「・・・何もしてないくせに」
自慢げに鼻の下を擦らながらそう言うグレンに対し、俺の隣にいたレイナがボソリと毒を吐いた。が、幸か不幸か、グレンは全く気がついていないようだった。
「まぁ、今回もお前達は暫く自由にしていていいぞ」
先生にそう言われ、俺達は自分達のやテントに戻ろうとした。その時、
《グオオオオオオオオオオオオンッ!》
大きな獣の雄叫びが聞こえた。
「な、何!?今の!?」
レイナが慌てて周囲も見ながらそう叫び、他のみんなも辺りを注意深く見渡していた。
しかし、俺にはそんな余裕がなかった。なぜなら俺の脳裏に俺の知らない筈の光景が浮かんだのだ。
燃える村、漂う人肉の焼け焦げた匂い、そして・・・。
それを引き起こした巨大な魔狼の影が・・・。




