第十六話 それは天使に聞いてくれ
「いや〜食った食った!」
「美味しかった〜」
俺が肉を焼いていく間も片っ端から食べたグレンとブルームの二人は、お腹をさすりながら呟いた。育ち盛りの男は本当によく食べるものだ。俺も昔はこんぐらい食ってたなぁ・・・。
俺が、シミジミとしていると、
「しっかし贅沢だね、二人共」
「「え?」」
レイナがグレンとブルームの二人に声をかけた。二人はレイナが何を言っているのか分からなかったのか首を傾げていた。
「いや、伯爵家の令嬢であるエリシアが手ずから焼いた肉を、一応公爵家の娘の私を差し置いてたらふく食べたんだもの。これを贅沢と言わずになんて言う?」
「不敬、では無いでしょうか?」
レイナの揶揄う様な言葉に、レティシアが抑揚の無いトーンでそう答えた。
グレンとブルームは動きを止め、恐怖からか身体が震えていた。
レイナも震える二人を見て、慌てて「気にして無い!気にして無いから安心して!」と必死に呼び掛けていた。
「すみません。私も冗談のつもりだったのですが」
「それ、冗談を言う時のトーンじゃ無いから!」
口元を隠してクスクスと小さく笑いながらそう言うレティシアに、レイナはそうツッコミを入れたのだった。
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「・・・さて、他の班の方々も戻って来ましたね」
「確かこの後ちょっとしたオリエンタル?が有るんだっけ?」
「レイナ様、それを言うならオリエンテーリングです。そして、オリエンテーリングは明日です」
「?なら、この後は何があるんだっけ?」
「いえ、午前の続きで、課題の物を採取してくるんですよ」
「なら、私達はこの後は自由時間って事かな?」
「そうなりますね」
俺は、レイナと話しながら森で拾っていた木片を削っていた。
「・・・ところでエリシアは何してるの?」
「いえ、ちょっとしたアクセサリーを作っているんです」
「へぇ、何で?」
「ん〜と、何となくですね」
「なんとなく・・・でそれなんだ」
俺の手元を見たレイナは呆れながらそう言った。
「何処かおかしかったですか?」
「何処がおかしいかと聞かれると、唐草が絡み合い、大きな花が美しく咲かせているのを立体的に彫られている腕輪を〝何となく〟で、作るエリシアがおかしいと思う」
「まさかの私がおかしいですか!?」
レイナの言葉に俺は衝撃を受けて、彫刻刀を落とした状態で固まった。
「もう、エリシアは何でも屋でもやっている方が人の為になる気がする」
「なんでエリシアは貴族に生まれたんだろうねぇ」
「さぁ、私も分かりません」
レイナにそう返しながら内心で(あの天使が「面白そうだから」って理由でやっただけなんじゃ無いかな?)と俺は思うのだった。
その頃の天界……
エクリシオン「ブェックションッ!!・・・・・・誰か私の噂をしているのでしょうか?」
エクリシオンが一人、盛大にクシャミをしていた。




