第十話 野外学習課題の内容
「ところで、先生から渡された課題は何ですか?」
レティシアがふと思い出したようにレイナに尋ねた。レイナは「えっと、確か〜・・・」と、ゴソゴソと紙を取り出した。どうやらメモのようだ。
「ああ、ユムガ草とズヲホア草、モンキーソファだね」
ユムガ草はよもぎ、ズヲホア草はゼンマイに似た植物で、モンキーソファは前世ではサルノコシカケと呼ばれるキノコだ。こちらの世界でも猿に座られるとは、何とも悲しいキノコだ。
「ああ、ユムガ草とズヲホア草は見つけやすいですが、モンキーソファは毒キノコのモンキーチェアに似てますね」
レティシアが口元に人差し指をさしながら呟いた。
「一応、食べられる野生植物図鑑と、野草図鑑は持ってきてます」
「はっ。何処にあるんだよその図鑑とやらはよぉ」
俺の言葉にグレンがまた突っかかって来た。俺が冒険者だと言う証拠を見せたが、それも、〝貴族のお遊び〟と受け取られたようだ。
「ちょっと、グレン君・・・」
「うるせぇ、ブルームは黙っててくれ」
ブルームがまた止めようとしても、グレンはブルームの言葉を突っぱねた。
「ありますよ。ほら」
俺はそう言いながら、『無限収納』から、図鑑を二冊取り出した。
「なっ!?『異空間収納』だと!?」
グレンは驚愕に目を見開きながら、叫んだ。が、それは違う。
「いえ、私のこれは『異空間収納』じゃ無いですよ?」
「なら、まさか『次元倉庫』かよ!?」
「いえ、私のは『無限収納』ですよ」
俺が間違いを正すと、グレンは更に驚愕していた。今度はブルームも一緒だった。
「それで、他の注意書きは?」
「えっと・・・。ああ、昼食は支給された黒パン以外は自分達で確保しないといけないみたいだね」
「そうですか。・・・なら」
驚きで固まったままのグレンとブルームを放ったらかしにして、レティシアはそう言って近くの木に止まっていたオムロ鳥をノールックで影魔法で二匹撃ち落とした。
「これで、少しは食料を確保できましたね」
レティシアはニコニコと、俺に笑いかけてくれたが、取り敢えずは、
「グレンさん、ブルームさん。戻って来てください」
二人の意識をこちらに戻すため、俺は二人に呼びかけながら二人の目の前で手を叩くのだった。