金貸し
「何、このおばあさん……」
小声でウサギのテリーが呟く。
「た~か~ら~、ちかうって、こほっ、かはっ、いってるてひょ~」
何とか言葉を絞り出すも、もはや自分でも自分の言葉が聞き取れない程に疲弊していた。
目の前のウサギに苛立ちを募らせていると、ちょっとここで待ってて下さい、と言い残し、どこかへ向かった。
(分かったのかしら?)
「すいません、あのおばあさんが……」
テリーは、ペンキ職人の親方の所へと向かい、何かを話し込んでいる。
(げっ、ヤバい!)
親方がこちらを見やると、物凄い剣幕で走って来た。
「オイッ、バイト! 遊んでんのか、てめぇ!」
「こ、これはちかうんてす!」
ガゴッ、と顔面に一発食らう。
ガールは、何が起こったのか分からなかった。
(えっ、私、殴られたの……? このご時世、人の顔殴る人、いるの!?)
パワハラやセクハラというのは、平和な世の中だからこそ問題視されるのであり、人がガンガン死ぬこの世界ではそんなことで騒いでも全く相手にされない。
「おめぇはクビだよ、ど畜生め!」
ガールは、しばしその場で呆然とした。
殴られた頬の部分が、じんじんと痛んだ。
雨が降り始めた。
最初はポツポツという雨も、すぐにザアザアと降り出した。
そんな中、ガールは路地裏で体育座りをしていた。
「ひぐっ、ひぐっ……」
悔しくて、涙を抑えきれなかった。
ウサギに冷たくあしらわれ、更には親方にも殴られ、あっという間に無職になった。
自分は何も悪いことはしていないのに、何でこんな目に遭わなければならないのか。
「……」
ひとしきり泣いた後、このままいじけていても仕方ない、と顔を上げる。
(あのウサギ、今度会ったら許さない)
目に溜まった涙を拭う。
熱で相変わらずダルいが、何とかしなければならない。
立ち上がろうとすると、ガールはあるものを目にした。
「っし、こいつを元手にして一発当ててやるぜ」
札束を手にした男が、右側から歩いてくる。
時間を置いてまたすぐ、そんな連中が、同じ方向から歩いて来る。
(何があるのかしら?)
通りに出て、見かけた人らを辿っていくと、一つの建物を発見した。
相変わらず、看板の文字は読めないが、意を決して中へと入る。
室内は、銀行のようにいくつかカウンターを設けた作りとなっていた。
(もしかして……)
札束を握り締めていた人らのセリフから推察するに、ここは金を貸してくれる場所のようだ、とガールは思った。
母親から、絶対にお金だけは借りるな、と言われていたガールだが、今は状況が状況である。
(このまま風邪で死ぬくらいなら……)
ガールは、受付へとそのまま歩いて、目の前の男に言った。
「あの…… お金、借りたいんてすけと」
「分かりました。 上限は1万シルバーまでですが、いくら必要でしょうか?」
(どうしよ…… この世界の通過の単位、全然分かんない…… とりあえず、借りれるだけ借りようかしら)
「しゃあ、一万……」
「分かりました。 利息は1日で50パーセントになりますので。 こちらの書面にサインして下さい。 返金の期日は1週間です」
「分かりました」
数字にめっぽう弱いガールは、今の説明をさっぱり理解出来なかったが、書面にサインすると、一万シルバーを受け取った。




