空中分解
ガールの体は制御が効かない程、空中で激しく回転していた。
さっきの衝撃波で、りゅーすけ君の背に乗っていた3人は吹き飛ばされてしまった。
辺りは暗く、赤いドラゴンが点々と見えるが、それ以外は見えない。
すると、その内の一匹の竜が、こちらに猛然と迫ってくる。
(……敵! いや、救援!?)
ガールは、ヤッシーアイランドから飛び立った6匹の黒い竜の他に、もう1匹、赤い竜がいたことを思い出した。
ガールは、もしかしたらその竜が助けに来てくれたのでは、と手を振った。
「おーいっ」
赤い竜が迫る。
そして、乗り手がこちらを一瞥した。
「……」
「……あ」
その乗り手は、ゼルダであった。
ゼルダは、赤い竜に跨がり、一瞬、こちらに視線を寄越したが、すぐにまた前を向き、ガールとすれ違う形で水蒸気爆発で出来た穴へと向かって行った。
(そんな……)
自分の弟子を殺したと勘違いされていたガールを、ゼルダはガン無視した。
いよいよ万事休すか、そう思われた時、今度は近くから声がした。
「ここよっ!」
「ヨシコ!」
ヨシコがすぐ近くにいる。
そして、暗闇から手が伸びると、ガールの体をキャッチした。
「はあ、良かったわ、死に際にアンタの顔が見れて」
「何言ってるの、ヨシコ。 まだ、私たち死ねないよ!」
本当は、ゼルダに見捨てられた瞬間、ガールは諦めていた。
しかし、ヨシコの声がし、その顔を見た瞬間、また力が沸いてきた。
ガールは魔力を使い、本来ならエネルギーの充電に使うパラソル・ヘッドを手から出現させた。
それをヨシコに手渡す。
「……だ、大丈夫?」
「ヨシコ、早く!」
地面に叩きつけられる前に、ヨシコは杖にそのヘッドを付け、その場で開いた。
パラソルにはソーラー電池が貼り付けられ、太陽光をエネルギーに変換するが、今は夜で、役には立たないとヨシコらは思っていた。
落下速度が瞬く間に緩やかになる。
「……一番役に立ったわね」
「ねぇ、チカさんは?」
「チカなら、サイコキネシスがあるでしょ。 地面に叩きつけられる瞬間、力を使えば平気だと思う。 マァムおばさんも、ギリギリ躱してたの見たわ」
「はぁ~、良かったぁ……」
パラソルでゆっくり地面に降り立つと、急いで城内を目指す。
降り立った場所は偶然にも城の正門の前で、既に扉は焼け落ち、中へと容易に入ることが出来た。
そして、城内にはゼルダが背を向けて立っており、その肩にはウサギのテリー。
傍らには、正門を焼き払ったと思われる赤いドラゴンがいた。
ゼルダは、ガールとヨシコの気配を察知すると、こちらに剣を抜いて向き直った。
「……べんどりぐぜん、じじおをじまずずるばえに、おばえをじまずぜねばなるばい」
「ゼルダお爺ちゃん、それは誤解なの……」
「ええい、だばれっ」
「師匠、本当だ」
その声を聞き、その場にいた全員が振り向いた。
城の入り口からゆっくりと、誰かが歩いてくる。
黒い短髪に、筋肉質でスリムな体型。
顔は若干青白かったが、その顔はみな見覚えがあった。
ガールが思わず叫んだ。
「カボ!」
カボは、この城の庭に埋められていた自分の死体を見つけ、手に入れていた。
本体は相変わらず剣であるが。
「カボよ、どういうごどが、ぜづべいじでぐれ」
ゼルダは潰れたような喉を鳴らして、カボに聞いた。
カボは、事の顛末を洗いざらい説明した。
仲間を巻き込んでテロ行為に走ったこと、ガールは自分らを助けようとしてくれていたこと。
「そーゆーことだからよ。 こいつは関係ねぇんだ」
「……」
「お爺、ちゃん?」
ゼルダは、ふぅ…… と何か寂しげな目で空を見上げ、こう言った。
「……もう、いい。 もうじぎ、おばる」
ゼルダは、正面に向き直ると、瓦礫が崩れ、進めなくなってしまった通路へと歩み寄った。
「でりー」
「分かっています」
テリーは、懐中時計を手にし、時間を巻き戻した。
逆再生の映像の様に、崩れた瓦礫が空いた天井へと立ち上り、塞いでいく。
瓦礫を撤去し終えると、一匹の赤い竜が姿を現した。
「グルアアアアアーーーッ」
天井に穴を開けたのは、落下してきたドラゴンであった。




