風穴
「はあっ!」
マァムは、柄を握り込み、剣をミキサーの様に回転させ、そのまま相手の頭部を殴りつけた。
相手は、ギャッ、と短く悲鳴を上げると、ひしゃげた兜と共に、力なくドラゴンの背から抜け落ちた。
「切れ味が無くなったら、棍棒みたいにして使えばいいじゃない」
しかし、こんな芸当が出来るのはマァムだけであろう。
マァムは、そのままガールたちの前に出ると、叫んだ。
「私が先陣切って道を作るから、ついてきて!」
マァムは、竜の翼をバタつかせて更に高く舞い上がると、一気に敵の中へと滑空。
剣についた血をその場で振り払うと、それを掲げて突進した。
敵の竜がマァムに気付き、迎撃をしかける。
剣と剣がぶつかり、何度か火花を散らすも、中々道は開けない。
(くっそ、数が多すぎる)
気付けば、そこら中に赤いドラゴンが旋回し、隙間が無いほどである。
手こずるマァムを見て、ヨシコが心配そうに声に出す。
「多勢に無勢よ。 あれじゃラチが開かないわ」
するとガールは、出来るか分からないけど…… と意味深な言葉を口にした。
「どうする気よ?」
「……ヨシコ、協力して」
ガールは、目を瞑ると、はあっ、と息を吐いた。
そして、目を見開き、掌からマーライオンの頭部をも模した、ミスト・ヘッドと、更にもう片方の手にトカゲの頭部を模した、バーナー・ヘッドを取り出した。
一度に二つのヘッドを取り出したガールの額からは、尋常でない汗が噴き出す。
「アンタ、無茶しないで!」
「お願いヨシコ、これで、あのドラゴンの周辺に霧を作って」
「……」
ガールの体調が不安だったが、ヨシコは言われた通り、ドラゴンの群れに霧を張った。
まるで早朝の山頂の如く、辺り一帯が白い霧に包まれる。
ヨシコが言った。
「でもこれじゃ、目をつぶって運転してるのと同じよ。 群れを抜けようとスピード出したら、ぶつかっちゃうわ」
「分かってる。 次は、これ」
ヨシコにトカゲの頭を渡す。
ガールは、集中力を全快にして、再度掌を宙に掲げた。
しかし、掌からは何も取り出せず、立ちくらみで意識が遠のきかけた。
態勢を崩す。
「ガール!」
ふらり、と体から力が抜けて、その場からずり落ちる。
その時、ピタリ、とガールの体が静止した。
「えっ……」
「は、早く捕まえるのじゃ……」
チカのサイコキネシスである。
チカはエスパーで、手を使わず、一瞬だけ物体を宙に浮かせる技を持つ。
しかし、対象が体程の重量物では、それは長くは続かない。
「くっ」
ヨシコが手を伸ばすも間に合わず、またすぐに風にあおられ、飛ばされる。
「ぐる~っ!」
もうだめか、みながそう思った時、りゅーすけ君が翼を広げてガールの体をキャッチした。
受け止めた衝撃で、ガールの目が覚める。
手には、最大限の集中と魔力で作り出した剣が握られていた。
風でうまく喋れない中、ガールが吠える。
「ヨシコ、これを熱して……」
「そういうこと…… 恐ろしいわね、アンタ! チカ、アレを受け取って!」
チカのサイコキネシスでガールの手から剣が抜き取られ、そのままヨシコの前へと差し出される。
ヨシコは、バーナーでその剣を熱し、チカに命じた。
「これを、霧の中へ!」
「よく分からんが、了解じゃ!」
「お母さんっ、逃げてっ」
微かな声を聞き、マァムは咄嗟に下方へと身を翻す。
熱された剣が霧の中にまっすぐ飛んでいくと、刹那、大爆発が起きた。
「キャアアアアーーッ」
水蒸気爆発。
衝撃波で、りゅーすけ君の巨体が吹き飛ばされる。
ドラゴンの群れに、ぽっかりと大きな穴が開いていた。




