タナベ
ヨシコらがガールを探すため、エルフのじじいの所に行っていた頃、カボの剣はサーターアンダーキでお留守番を食らっていた。
「やべぇぞりゅーちゃん、俺、このまま忘れ去られちまうんじゃねーか?」
黒竜こと、りゅーすけくんが傍らでグルゥ、と鼻息荒く返事をする。
「つっても、おめぇは後で出番があるわけだし、同じ立場とは言えねー」
グルゥ…… と眉を八の字にしてカボを哀れむりゅーすけくん。
すると、背後から声がした。
「俺サマなら、お前に出番をやれなくもねぇぜ?」
「……え、誰」
そこに立っていたのは、左目に黒の眼帯をかけた男。
「お前、確か、この市場で働いてた……」
「タナベだ。 こう見えて俺も、異邦者であり、冒険者だ」
「冒険者ってか、盗賊か山賊にしかみえねーが」
「るせぇぞ剣の分際で。 俺のが見てくれはマシなんだ、てめぇにとやかく言われたくねぇな」
「んだとてめぇ、喧嘩売ってんのか? アア?」
険悪な空気を察したりゅーすけくんが、二人ともやーめーてー、とオカマ口調で止める。
ちなみに、りゅーすけくんは去勢されている。
「グルー⤴ルー⤵」
「んだよ、りゅーちゃん、きもちわりィな」
今のでやる気を削がれたカボは、タナベに問いただした。
「……んで、タナベだっけか。 お前なら俺に出番のチャンスをくれるって、マジなのか?」
「ああ、初めからそう言ってんだろ」
タナベが語り始めた作戦。
それは、これから王の住まうゴーヤシティに向かい、内部に潜入して情報を得、今後の奇襲作戦を有利に展開進める旨のものであった。
「俺サマは野菜をいつもゴーヤシティまで馬車で届けてんだが、肝心の中に入るには身分証が必要になる。 あいにく、俺はこの国出身じゃねーから中には入れねんだ。 だから、検問にこの馬車ごと引き渡すことになる」
その説明を聞いて、カボは納得した。
「……俺をその野菜の中に紛れ込ませればいいわけか」
「その通り。 剣が紛れ込んでれば、それを取り除く為に剣に触れることになる。 つーことは、あとは分かるな?」
その触れた人間の体を乗っ取ってしまえばいい、そういう算段である。
「お前が失敗してもいいように、俺の片割れもお前に付けるぜ」
タナベは、眼帯の中に手を突っ込み、目玉をえぐり出すと、ポケットから粘土を取り出し、剣の胴に貼り付け、目玉も一緒にくっつけた。
「んだこれ、外せよ、キメェな!」
「第2の視野っつー、俺の魔法だ。 上手く潜入出来れば、この目を通してリアルタイムで中の様子が伺える。 兵隊の数、内部の構造、王の居場所なんかがな」
こうして、早速準備が進められた。
馬車の荷台にに野菜類を乗せ、その中にカボの剣を忍び込ませる。
しばらく街道を進み、ゴーヤシティの検問まで到着すると、難なく中へと潜入することが出来た。




