通信
作戦決行は明日の深夜0時。
それまでに、何とかカボの剣を探し出し、ゼルダを説得しなければならない。
現在時刻は夜中の9時。
タイムリミットまで、あと27時間しかない。
すると、ヨシコが右手を上げた。
「……あの~、それ、無理だと思います
「無理って、それでもやらなきゃ」
マァムが語気を強めて言うも、ヨシコの方にも一理ある。
カボの剣はゴーヤ・シティを目指している。
その理由は、ファストレイクの金貸しを尋ねていたことから、恐らく、自分の死体探しと思われる。
ゴーヤ・シティに運ばれた遺体は、国の検屍官によって間違いなく冒険者のものであることを改められた後、埋葬されることとなるが、この国の中枢であり、ヘンドリクセン王が住まうこの場所の検問は他とは比べものにならない程厳しい。
まず、街は取り囲むように城壁が形成され、そこに入るための検問は一つ。
入るには間違いなくこの街で生まれたという出生証明書が必要となり、なぜこの街にようがあるのか、その確認をする。
カボの剣であれば、他人の体を乗っ取って街の中に入ることは容易かも知れないが、ガールらよそ者はそれが難しい。
仮に、何とか入れたとしても、カボの身柄を押さえ、その後にゼルダを説得しに向かうのは時間的な余裕がない。
それらの理由をペラペラと早口でまくし立てた後、こう付け加えた。
「だから、カボの剣は放っておきましょうよ。 で、こっちにはりゅーすけくんって手札もあるんだし、ゼルダの作戦決行に合わせて別働隊で攻めたらいいんじゃない?」
「ヨシコ、頭いい!」
ガールは全く話についていけてなかったが、とりあえず、そんなことを言った。
「……それに、一度に全員で仕掛けるのは得策じゃないと思う。 何が仕掛けてあるか分からないし、先攻隊、後攻隊に分けた方が良くない?」
言い方は悪いが、仮に爆弾が仕掛けられていたとして、先攻隊を囮にすれば、後から攻める者はそれを免れることが出来る。
「う~ん…… チカさんはどう思います?」
考えが決まらず、マァムがチカに意見を求める。
すると、チカはコーヒーの入ったコップを見つめ、おかしいのぉ、と言ったきり固まった。
「あのぉ…… チカ…… さん?」
「静に。 何か、ある」
皆が、チカの見つめるコップを見た。
「……?」
コップがどうかしたのか、そう思ったガールたちだが、数秒後、コーヒーの表面に波紋が現れた。
誰かが机を揺らした様子はなく、これは…… とチカはタンスをガサゴソやり、裁縫箱からまち針を取り出し、その場にかざした。
一同、その様子を見守っていると、チカが口を開いた。
「……誰かがここに、電波を飛ばしておるな。 少し、待て」
「電波!?」
チカは、まち針でその微弱な電波をキャッチし、用紙に文字を書き始めた。
開始から5分後、その電波の送り先が判明した。
その内容は、まさかのカボからのもので、自身の魔力を電波に変換し、ここに飛ばしていた。
「ゴーヤシティニセンニュウチュウ、シジヲクレ。 カボ」
チカが文面を読み上げると、ガールが叫んだ。
「カボ、凄い!」




