新たな杖
「えっ、もしかして、誰もお金、持ってない?」
ピン、と空気が張り詰める。
それを破ったのは店員だった。
「……ちょっと電話しますね~」
「ま、ま、待って!」
慌ててヨシコが店員の肩を掴む。
マァムも、ここで兵隊に突き出されるのはマズい、と思い、店員が店の裏手に向かうのを引き留める。
(ヤバイ…… 私、前科者みたいなものだし、次捕まったらどうなるか分からない……)
金貸しに身柄を拘束され、奴隷として働いていたガールは、そこから抜け出した。
金貸しと国の兵隊は繋がっている為、見つかれば缶詰工場に逆戻りの可能性が高い。
すると、チカがこれ見よがしにため息をついた。
「まっったく…… 金なら銀行に取りに行けばあるわい。 お主ら、ワシにいくつ貸しを作るつもりじゃ?」
「貸し2、でしたっけ…… すいません、チカさん。 今回はツケってことで……」
「また調子のいいことを言っておるわ。 貸しの次はツケかいな。 どちらにせよ、必ず返してもらうぞ」
「はい! 分かってます」
返事だけはいいな、とチカが銀行へと向かう。
その後、店員に服代を支払うと、店を後にした。
外に出ると、そろそろ夕方だから一旦チカの家に戻ろう、という話になった。
電車を乗り継いで、セカンドヴィレッジに戻ると、チカのアパートに一同は辿り着いた。
階段を上り、〇〇号室のあるフロアに来ると、腕を組んだ痩せた男がそこにいた。
「待っていたぞ、ヨシコ」
「……どしたのよ」
ガールは、ヨシコに小声で確認した。
「あれ、誰?」
「話すと長くなるんだけど…… まあ、今度話すわよ」
「何々、気になるなぁ」
ガールの質問をうやむやにしたまま、その男、アベゾーにヨシコは聞いた。
「私を待ってたって、用件は何?」
「君が手にしていた杖、あれを拝借して改造させてもらった。 中に入れ」
「お主、勝手にワシの家に入ったのか!」
チカの家に置かれていた杖をアベゾーが勝手に持ち出し、それに新たに改造を加えた。
チカがわめくのを無視して、ヨシコとガールを部屋の中へと招き入れる。
乱雑に置かれた機材を跨ぐと、部屋の角に立て掛けてある杖が目についた。
「あれが私の杖?」
「そうだ、名付けて、タクティカル・ワンド。 5つのヘッドを自由に付け替えることが出来、状況に応じて臨機応変に使い分けすることが可能だ」
以下、タクティカルワンドのヘッドの種類である。
その1、バーナーモード。
ドラゴンの頭部を模し、その口の中に細いノズルがついている。
そのノズルには無数の穴が開いており、回転すると霧状の油が放出され、ドラゴンの口を閉じることで火花が出て、高温の炎が射出される仕組みである。
その2、ミストモード。
マーライオンの頭部をしたヘッド。
ミストを放出し、対象の相手を霧で包み込む。
これにより、敵から見つかりにくくなる。
その3、グラビティモード。
クモの頭部をしたヘッドで、蜘蛛の巣で相手の自由を奪うことを意味している。
物質は突き詰めると全て粒子で構成されており、特殊な電磁波でその粒子を回転させ、遠心力で重力を生み出し、敵の動きを封じる。
その4、コンバットモード。
銃の形状をしており、魔力で生み出した弾丸を装填して、敵を制圧する。
その5、パラソルモード。
パラソルの形状で、表面にソーラーパネルが貼り付けてある。
これらを使うのに必要なエネルギーを太陽から得る。
それらの杖と頭を見て、ヨシコが呆れる。
「アンタ…… 天才なのは認めるけど、バカなの? どうやってこんな頭持ち歩くのよ」
「その為のガール君だ。 君にこれらの頭の設計図面を渡す。 それらを理解してもらい、魔力で再現できるようにしてもらう」
「ええっ」
アベゾーが十数枚に上る図面を抱え、そのままガールに押しつけた。




