脱出
(間に合わない!)
ガールは苦し紛れに銃を取り出そうとしたが、それよりも剣の到達スピードの方が早い。
「ざらば! ……あれ!?」
脳天に切っ先が触れた、と思いきや、ゼルダが振り下ろした剣は空振りし、地面に刺さった。
「あふぇ?」
ガールは気が付くと、どこか見覚えのある部屋の中にいた。
一人がけのソファに小さな本棚。
中にはグラビアの雑誌などが並べられており、勤勉な感じでは無い。
辺りを見回すと、女の子が3人おり、老人が一人。
「え、ハーレム?」
しかし、よくよく見ると、その3人はみな顔見知りであった。
「よ、よ、ヨシコっ」
あまりに驚いて、ガタガタっ、と尻餅をつくガール。
「あははっ、何やってんのよ、アンタ」
「て、手、かして…… 腰抜けちゃった……」
ヨシコの手を借りて起きあがると、全ての事情を説明された。
みな、ガールを取り戻すため、このエルフのじじいの所まで会いに来たのだ。
「……みんな、ありがとう。 私、もう少しで殺される所だった」
自分の体を抱きとめるガール。
すると、老人が言った。
「ちょーっと、そろそろ出て行ってもらえんかな」
「はあっ、あんた、少しはガールを休ませてあげて!
……ガールを呼んでくれたことには感謝してるけどさ」
ヨシコはガールを一人がけのソファに座らせ、コンロで勝手に湯を沸かし始めた。
「チカ、マァムおばさんも手伝って。 紅茶を入れたいから」
「あ、茶葉ならここにあるぞ。 あとハチミツが欲しいのぅ」
チカがガサガサと引き出しから茶葉を取り出す。
「おじいちゃん、ちょっとどいて」
マァムもじじいを横に追いやり、ハチミツが無いか探す。
「き、貴様らっ」
その時、小屋を支えていたフックが重みに耐えきれず、外れた。
「キャアアアッ」
みな、突然体が宙に浮いて悲鳴を上げる。
そして、ザバン! と胃酸の中に落とされた。
「だから言わんこっちゃない! 愚か者めが……」
「みんな、ちゃっちゃと退散しましょ!」
ヨシコが浮かべてあったスイマー2号によじ登ろうとすると、エルフのじじいが先にコックピットに到達し、枠を掴んでいた手を足で蹴った。
「痛っ!」
「貴様らはここで溶かされてしまえ! この恩知らずめ」
バタム、と扉を閉める音がする。
「やっば、どうすればいい? 何とか扉をこじ開けられない?」
「武器が無いから…… ダメ、硬くて開かない!」
マァムが扉の隙間に爪をかけ、何とかこじ開けようとするも、ロックがかかっている。
剣があれば、隙間と隙間に刃を差し入れ、てこの原理でこじ開けることも出来たか。
チカが叫ぶ。
「急がんと、ワシら溶かされてしまうぞ」
スイマー2号のスクリューが回転し、進み始めた。
同時に、水が流れ始める。
ガールも水流の音にかき消されないよう、叫んだ。
「魔法で鯨を嘔吐かせるつもりよ! ここから出れるけど…… 海の中に放り出されちゃう!」
「ど、どうするのじゃ!」
みな、パニックになる。
「みんな、私についてきて。 私なら、ここから街のある大陸まで泳げるわ」
「アンタに水泳慣わせといて良かったわ」
「お母さん、まだ安心出来ないわ。 海は薄暗いし、吐き出された時散り散りにならないよう、みんなで手を繋ぎましょう」
チカ、マァム、ヨシコ、ガールの4人は手を繋いだ。
そして、暗黒の海へと吐き出された。




